491 / 537
東の国
古龍さんに会いに行こう
ブリードの言葉を陛下に伝えれば、ハイライトの消えていた目に光が戻った。
「そ、それは……また天候が元に戻る希望があるということだろうか?」
「奴に力が戻れば可能だろうよ。だが……奴にその気があればの話だがな」
んん?その気があれば?
つまり、その気が無ければ、元気になっても力を貸してくれないかもってこと?
俺の思ったことが分かったみたいゲイルが口を開いた。
「そりゃそうだな。話を聞いた限り、古き約束を果たしていた古龍をないがしろにし、力の元となる祈りを忘れたあげくに古龍が宿ったご神体を燃やしちまって放置してたんだろう?
いうなれば、契約を一方的に反故にして恩を仇で返したんだもんなあ……。
強要はできないだろうよ」
東国の人の瞳からせっかく戻ったハイライトがみるみる消えていった。
これに関してはフォローのしようもない。
精霊の類は、約束や契約をすごく大事にするって聞いたことがあるしね。
現に祈りだとかいろいろなものを反故にされても、古龍は契約にしたがってきちんと東国を守り続けていたわけだし。
なんだかそう思うとすごく健気。
古龍の側を応援したくなってきた。
非難の意味を込めて「じとー……」と陛下を見ると、さすがに決まりが悪そう。
「……大変申し訳のないことをしてしまった……。まさかそのようなことがあったとは……」
「そもそも、なんでそんな大事なことをきちんと継承してなかったの?
どこの国にも何かしらの伝承はあって、お祭りをしたり、洗礼式をしたり、色々な形で行事として継承してるよ?
王国にだって教会があるし、きちんと祈りは捧げている。
古龍の祠って、東国にとっては王国の教会なんじゃないの?
俺の言葉に陛下は痛みに耐えるような表情になった。
「サフィラス殿の言う通りだ。
だが……継承者が途絶えてしまったのだ」
「んん?途絶えた?」
陛下の何代も前の話。
あるとき、一人の流れ者がこの地に行きついた。
彼は兄弟間の相続争うに敗れ、行き先がないという。
そこで東国の人は彼を受け入れ、落ち着くまで面倒をみてやることにした。
そこで異邦人を世話したのが、いわゆる宮司さん。
何日か家に泊めてやったのだそう。
ところが、彼は自身知らぬうちに感染症を患っていた。
彼は回復したのだが、一切の免疫のない宮司一家はあっという間に重症化し、他界。
同じく東国の人たちも次々と感染し、多くの人が亡くなってしまった。
特に免疫の弱い老人たちの大半がこの時いっぺんに無くなってしまったのだという。
結局その異邦人は居ずらくなってまたどこかに流れていった。
そして、東国からは老人が消えた。
「多くの犠牲が出て、宮司を含め多くの老人が亡くなったことは聞いていたのだが……。
恐らくそこで伝承も途切れてしまったのだろう」
うん。たぶんこんな感じなだったんだろう。
祠は残っていたのだけれど、その祠の意味も、祀り方もなにもかもが曖昧になり、その意義を失う。
祠のことを知っている人も、その祠が何を意味しているのかを忘れ、単なる古い史跡のようなものだと思うようになっていった。
こうして東国の人たちは、古龍の存在を忘れ、祠の存在を忘れてしまったのだ。
なんというか……事故じゃん!全部が全部、不幸な事故じゃん!
その感染症を持ち込んだ人だって、まさか自分が感染してたなんて知らなかったんだし、東国の人が鎖国みたいになっていたせいでほとんどその病に対する免疫を持っていないだなんて知らなかった。
親切で受け入れた東国の人たちだって、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。
宮司さんも、急に一家全滅するだなんて想像もしていなかったんだろう。そりゃあそうだよね。
戦争中でもなんでもなかったんだもん。
平和な日常を過ごしていたんだもん。
伝承が途絶えたのも不幸な事故なら、祠とご神体が無くなってしまったのも火事という不幸な事故。
誰に悪気があったわけでもなく、ただ結果としてご神体な失われ、古龍は力を失った。
そして東国には氷の嵐が吹き荒れ、多くの人が犠牲となった。
なんて言ったらいいのか。
運が悪かったと言ってしまえばそれまでだけど……
「やるせねえなあ……」
キースの言葉が全てを表していた。
ほんと、やるせない。
みいんな同じ気持ちだったと思う。
「でもさ。前を向いて行かなきゃね。
まだ古龍は生きているんでしょ。伝承も復活したことだし。やり直そうよ。
まずは古龍を見つけて、元気にしよう。それで祠を作り直して、また新しいご神体を置こう。
俺たちは生きてるんだから。生きていかなきゃなんだからさ」
「そ、それは……また天候が元に戻る希望があるということだろうか?」
「奴に力が戻れば可能だろうよ。だが……奴にその気があればの話だがな」
んん?その気があれば?
つまり、その気が無ければ、元気になっても力を貸してくれないかもってこと?
俺の思ったことが分かったみたいゲイルが口を開いた。
「そりゃそうだな。話を聞いた限り、古き約束を果たしていた古龍をないがしろにし、力の元となる祈りを忘れたあげくに古龍が宿ったご神体を燃やしちまって放置してたんだろう?
いうなれば、契約を一方的に反故にして恩を仇で返したんだもんなあ……。
強要はできないだろうよ」
東国の人の瞳からせっかく戻ったハイライトがみるみる消えていった。
これに関してはフォローのしようもない。
精霊の類は、約束や契約をすごく大事にするって聞いたことがあるしね。
現に祈りだとかいろいろなものを反故にされても、古龍は契約にしたがってきちんと東国を守り続けていたわけだし。
なんだかそう思うとすごく健気。
古龍の側を応援したくなってきた。
非難の意味を込めて「じとー……」と陛下を見ると、さすがに決まりが悪そう。
「……大変申し訳のないことをしてしまった……。まさかそのようなことがあったとは……」
「そもそも、なんでそんな大事なことをきちんと継承してなかったの?
どこの国にも何かしらの伝承はあって、お祭りをしたり、洗礼式をしたり、色々な形で行事として継承してるよ?
王国にだって教会があるし、きちんと祈りは捧げている。
古龍の祠って、東国にとっては王国の教会なんじゃないの?
俺の言葉に陛下は痛みに耐えるような表情になった。
「サフィラス殿の言う通りだ。
だが……継承者が途絶えてしまったのだ」
「んん?途絶えた?」
陛下の何代も前の話。
あるとき、一人の流れ者がこの地に行きついた。
彼は兄弟間の相続争うに敗れ、行き先がないという。
そこで東国の人は彼を受け入れ、落ち着くまで面倒をみてやることにした。
そこで異邦人を世話したのが、いわゆる宮司さん。
何日か家に泊めてやったのだそう。
ところが、彼は自身知らぬうちに感染症を患っていた。
彼は回復したのだが、一切の免疫のない宮司一家はあっという間に重症化し、他界。
同じく東国の人たちも次々と感染し、多くの人が亡くなってしまった。
特に免疫の弱い老人たちの大半がこの時いっぺんに無くなってしまったのだという。
結局その異邦人は居ずらくなってまたどこかに流れていった。
そして、東国からは老人が消えた。
「多くの犠牲が出て、宮司を含め多くの老人が亡くなったことは聞いていたのだが……。
恐らくそこで伝承も途切れてしまったのだろう」
うん。たぶんこんな感じなだったんだろう。
祠は残っていたのだけれど、その祠の意味も、祀り方もなにもかもが曖昧になり、その意義を失う。
祠のことを知っている人も、その祠が何を意味しているのかを忘れ、単なる古い史跡のようなものだと思うようになっていった。
こうして東国の人たちは、古龍の存在を忘れ、祠の存在を忘れてしまったのだ。
なんというか……事故じゃん!全部が全部、不幸な事故じゃん!
その感染症を持ち込んだ人だって、まさか自分が感染してたなんて知らなかったんだし、東国の人が鎖国みたいになっていたせいでほとんどその病に対する免疫を持っていないだなんて知らなかった。
親切で受け入れた東国の人たちだって、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。
宮司さんも、急に一家全滅するだなんて想像もしていなかったんだろう。そりゃあそうだよね。
戦争中でもなんでもなかったんだもん。
平和な日常を過ごしていたんだもん。
伝承が途絶えたのも不幸な事故なら、祠とご神体が無くなってしまったのも火事という不幸な事故。
誰に悪気があったわけでもなく、ただ結果としてご神体な失われ、古龍は力を失った。
そして東国には氷の嵐が吹き荒れ、多くの人が犠牲となった。
なんて言ったらいいのか。
運が悪かったと言ってしまえばそれまでだけど……
「やるせねえなあ……」
キースの言葉が全てを表していた。
ほんと、やるせない。
みいんな同じ気持ちだったと思う。
「でもさ。前を向いて行かなきゃね。
まだ古龍は生きているんでしょ。伝承も復活したことだし。やり直そうよ。
まずは古龍を見つけて、元気にしよう。それで祠を作り直して、また新しいご神体を置こう。
俺たちは生きてるんだから。生きていかなきゃなんだからさ」
あなたにおすすめの小説
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
双子の姉に聴覚を奪われました。
浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』
双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。
さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。
三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。