もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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新生活スタート!

俺びっくり!たいへんたいへん!

とりあえず、ルー君のことは様子見で、おやすみなさいした俺とゲイル。


翌日…

「ひゃあああああ!うそでしょおおおお!!」

俺の大声で清々しい朝はスタートしたのだった。

「サフィ?!どうした?!」
 
慌てて飛び起きたゲイルに、俺は布団をめくって中を見せた。
お布団に潜り込んでいたのは…小型犬くらいにおっきくなったルー君!!
見た目、すっかり狼っぽくなってる!!
俺の猫ちゃん、どこー!
1日でこんなにまで変わるとは!フェンリルってすごい!

「はあ?!マジか!……マジかああああ………。これ、猶予ねえやつだわ」

がっくりと項垂れるゲイル。
ふうーっ、と嘆息し、頭に手をやると前髪をくしゃくしゃっと掻き混ぜる。

俺も、ううむ、と腕を組んで考え込む。
確かにこれはもう隠しておくのは難しそう。
ゲイルも、ううむ、と考え込む。

「多分これが元々の大きさなんじゃないか?魔力が足りず維持できなかっただけだろう。この調子でサフィの魔力食ってたら、数日のうちにもっとデカくなるぞ?」
「ひょええええ!」

「しょうがねえ。今から王宮に行ってくるわ」

急にバリと起き上がり、あわただしく着替えだすゲイル。

「…ぼくもいっしょにいくほうがいい?」

こてん、と首を傾げ提案したが、ふは、と笑って却下されてしまった。

「いや、まずは俺が先に話を通してくる。サフィとルーが行くのは、それからだな。
とりあえず、サフィはちとここで待っててくれるか?
ルーも部屋から出すなよ?」



俺の頭をぽんぽん、として。

「まず、公爵に説明してここに連れて来るから。それまでに着替えておいてくれ」
「りょーかい!」

ルー君の首を指でこちょこちょ。

「ルーもいい子にしてろよ?でないとサフィと一緒にいられなくなるからな?分かったか?」

おっきくなったルー君はフサフサになった尻尾をふりふりしながら、うんうん、と頷き

「わかったあ!ルー、いい子にしてるー」

と言った。知能も一気に成長してる!!

「ひゃあ!ルーくん、かしこい!すごい!てんさい!」
「……俺はもう何があっても驚かねえぞ。うん。もう驚かねえからな!
てか、ルー、やっぱ猫のふりしてやがったな!にゃーにゃー言わず普通に話せるんじゃねえか!」
「サフィ、ねこが好き。ぼく、ねこ!」
「ルーくんっ!きをつかわせてごめんねえええ!ぼく、ルーくんがねこじゃなくてもルーくんがすきっ!」
「……ごめんね。うそついた。ぼく、フェンリル。にゃーにゃーいわない」
「やっぱりなああああ!!確定じゃねえか!」

ごめん。ゲイル。
ルー君は俺に気を遣っただけなの。
悪いのは俺。

「フェンリルでもルーくんかわいいよ。よきよき」

「しかし、やっぱフェンリルだったか。見た目ももう明らかに…だもんなあ…」

ゲイルは頭を抱えてブツブツいっていたが、ふるりと頭を振ると「よっし!いくか!」と気合を入れて部屋から出て行った。






ゲイルを待つ間、俺はルー君に色々聞いてみることにした。

「ねえ、るーくん。ぼくのいってることとか、わかるの?」
「わかるよー」
「るーくん、まいご?かぞくは?」
「あのねえ。すだち、って言ってた。ぼく、しめいがあるんだって。においをたどっていきなさい、って言われたの。それでにおい探してたんだけど、なかなかみつからなくって。どんどんお腹へっちゃったんだあ。それで力がでなくなって…。そしたら、好きなにおいがあったの。だから、がんばって人間のまえにでたんだよ。サフィのにおい。あの人間にもついてたの」
「エリアスか!ぼくのおじさまなんだよ。ちがつながってるの。フェンリルのかごがあるかけい、なんだよ」
「だからかあ。あの人もいいにおい。いちばんは、サフィ。ゲイルが次にいいにおい」
「ねえ、すだちってことは、もうルーくんはおうちにかえらなくていいんだよね?」
「うん。サフィといるのが、ぼくのしめい。いっしょにいる!」
「やったあ!えへへへー!じゃあ、ぼくのおとうとになって、いっしょにいようね!ゲイルがおとうさまだよ!」
「ゲイルおとーさま!ぼく、おとーと!」

俺はもうルー君を返さなくていいって分かって、すっごく安心した。
ルー君のおっきくなった身体にもふっと顔を埋め、ぐりぐり。
ルー君が

「くすぐったいよおおお!」

と身体をくねくねしながら、きゃっきゃと笑う。

「えへへー!もふもふこうげきー!」

逃がさないようにもっとぎゅうっと抱きしめて、お腹に顔をうめ、むふー!むふー!と息を吐く。

「ひゃあああ!!やめてええええ!!」




「………何やってんだお前ら」

呆れたような声に顔をあげると、部屋の入口にゲイルがいた。
開き直ったようで、すっかり落ち着きを取り戻している。
良かったあ!

「こおら、サフィ!着替えておけって言っただろ?お行儀が悪いぞ!
ティガー、頼む」
「はい。さあ、サフィラス様、お着替えしましょうね」

ルー君(中)を見ても顔色ひとつかえず、眉をくいっと上げただけで通常仕様のティガー。
やっぱりティガーはすごい!

一方、ゲイルと一緒に来ていた公爵は…かちこーん、と固まっていた。
この人って、あんまりに驚くと固まるんだよね。

俺はちょっとイタズラ心が出て、

「ルーくん、こうしゃくだよ。もっかいじこしょうかいして?」

とルー君に頼んだ。

「はーい!こうしゃく、きのうなでなでありがとー。ぼく、サフィのおとーとになったよ。よろしくー。ぼく、じつはフェンリル。ねこのふりしてごめんねえ?」

公爵が、かちこーん、から、がちこーん、になった。
つんつん。つんつん。
おーい、公爵。大丈夫か?息してるうう?
つんつん。つんつくつん。

あーあ。またこれですか。
俺は以前に押したスイッチを押すことにした。
ゲイルゲイル、と抱っこして貰い、公爵の鼻をぽちっとな!

「さいきどうすいっち、おん!」


公爵は、ハッと息を吸い、動き出した。

「……フェ…フェン…リル⁈……は、話が……で、きる…のか………?」

まだまだ動きが怪しい。

「うん。ぼくお話しできるよー!」

ルー君がハーイ、と手を挙げる。

「かわいいのに、かしこい。ルーくん、てんさい。さいこうのおとうと!」

俺はもんのすんごいドヤアをかました。だって、こんな弟がいる子、いる?
可愛いうえに天才のうえに聖獣!
えっへん!
おっほん!
ルー君を指さしてドヤドヤしていたら、

「サフィはもうすっかり慣れたなあ。相変わらず凄い適応力だ」

ゲイルが何故か突然俺を褒めた。
なんかしらんが、そうでしょうそうでしょう!
俺、適応力には自信があるんだ!存分に褒めるがよい!

「念のため言うが褒めてねーぞ?」
「なんで?ゲイルはぼくをほめるべきでしょお!ぼく、よいこ!」
「はいはい。確かにサフィはいい子だし、大好きだぞー」
「もっとこころをこめて!」
「大好きだぞ。俺の可愛い息子くん」

抱っこですりすり。
これこれー!これが無いと朝が始まらない!
あ、そいえば、おはよーのチューをしてない!

「ゲイル。おはよー!」

チュ!

「あ、ああ。おはよう、サフィ!」

チュウを忘れているゲイルに俺は「ここ、ここ」とほっぺを差し出し、無事にチュウをゲットした。
んふー。ゲイル、だいすきー!
するとゲイルの足元に、とことことこっ、とルー君が。


「ゲイルおとーさま。ぼくもほめてー」
「ん?おとーさま?まあ、サフィの弟だからな。
ん。大好きだぞ、ルー。サフィを頼むな」
「まかせてー!」


俺たちがわちゃわちゃしている間に、公爵はなんとか落ち着いたようだ。
こほん、と咳をひとつすると、固まってなんていませんよ、って感じでスンとした表情で話し出した。

「その、ルー君は本当のフェンリルと言う事でよいのだろうか?
フェンリルといえば、神の使いとされる聖獣なのだが、なぜここにいるのだろう?
昨日会ったときより成長しているようだが、一体どのようなわけなのだ?」

うわ!怒涛のように話し出しましたよおおおお!
まだ正常じゃなかった公爵をゲイルが宥める。

「まあ、落ち着けよ。フィオ。
家の家系がフェンリルの加護もちってもは知ってるよな?
実際、過去に先祖がフェンリルを助けたってのは、本当のことらしい。その縁で、ルーもここに来たんだろう。
フェンリルってのは、魔力を食うんだ。魔力が足りずに弱って本体を維持できなくなってたのが、サフィから貰って力を取り戻したんだろう。これがこいつの元来の大きさだ。
まだ子供だから、もっとでかくなると思うぞ」

フィオ!公爵のこと、フィオって言った!
元々はこうだったのかな。
俺がちょっと公爵と近づいたら、なんかゲイルのあの他人行儀がなくなってきた。ゲイルと公爵、「サフィを守ろう同盟」みたくなってる。
まさか一緒にあのマリーの「サフィを守り隊」の隊員になってたりなんかしないよね?
やめてね。あれはちょっとばかし方向性間違ってるからね!

「こうしゃくとげいるは、まもりたいしないで!」
「は?何のことだ?」
「恐らくマリーが組織したサフィラスの護衛隊の事ではないか?」
「ああ、あれか」

ゲイルが遠い目になった。

「俺はサフィのお父様だからな。入らねえぞ。安心しろ。
あいつら、すっごく頼りになる奴らなんだぞ?…元来は優秀な奴ら…だったんだぞ?
ちょっとサフィが可愛すぎてああなっちまったが…。まあ、役目はしっかりと果たすさ!」

優秀なやつら、って過去形になってんじゃん!
うん。ゲイルは入ってなかった。良かった。

「こうしゃくは?」
「…………」
「こうしゃくは?」
「……当主として全てを把握する必要がある」
「……入ったの?」
「…………全てを把握する必要があるのだ」

目をそらす公爵。こいつ…入りおった!
「1にサフィ様!2にサフィ様!…」してんのかな…。
んんんんん…。
想像してしまった俺は、キュっと口をつぐんだ。
俺は気付いてませんよー気にしませんよー。
ゲイルが入ってなかっただけでよしとしよう。うむ。



「で、何の話だっけ?」

首をかしげるゲイル。

「……フェンリルについてだな」

そうそう!話の腰をおってごめええん!
あ!そいえば!

「ゲイルゲイル。ルーくんにきいた。るーくん、すだちした。『しめいがあるからにおいたどっていけ』っていわれたんだって。そのしめい、ぼくんとこ。ここにくるためにすだったの、ルーくん」



俺の言葉にゲイルと公爵は

「は?」

と言って、今度こそ完全に無になった。
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