1 / 1
老人と小僧
しおりを挟む
ビルの立ち並ぶ、その一角にその邸はあった。
そう、邸、…家だ。
高層ビルの立ち並ぶ街ヒュンメルの、しかも最上の地区であるゴールドステージにあって、その一角は異彩を放っていた。
塀に囲まれた敷地には和風の庭園があり、奥には縁側のある昔風の平家が。
その庭のしつらえにしても平家にしても、高級所得者の街であるゴールドステージに酔狂者がよく設えるような、計算し尽くされた静寂に満ちたものではなかった。
四方に家を囲むように広がる庭には、梅の木や桜の木、牡丹やネコヤナギなどの季節の木々が、ただ昔からあるような自然な佇まいでそこここにある。
その中心にある平家の縁側は、長年風雨にさらされたような年月を感じさせる柔らかな色合いを帯び、そこにのんびりと腰かけてお茶をしている好々爺の姿が目にみえるようであった。
豪華ではないが大切に慈しみ整えられている様子が、その持ち主の性分を思わせる。
ひっそりと、ただ懐かしい暖かさを惑わせてその家は存在したのである。
その家の主は、塀の外をゆっくりと一回りし庭を眺めてから中に入るのが日課だった。
塀の前で足を止め、塀からちらと覗く梅の花や桜の枝、チチと鳴く小鳥などをしばし眺めたあと、満足気に微笑む。
しかし、その日その日課は果たされなかった。
いつもどうり塀の前で足を止めれば、木々の間にチラチラと見える青。
「?」
不審に思い、そっと様子を伺うと、ごそごそと身動きする音に混じり時折「っだっ!」などと男の声がする。
泥棒か!
どうする?!……助けが来るのを待つか?
これでも若い頃から鍛えているから、腕には多少自信がある。
身構えながら入ると、そこには半裸の青年が片脚立ちで青いタイツのようなものを着ようと四苦八苦していた。
「…君は誰だね?此処で何をしているんだ?」
気勢を削がれ、ぽかんとした老人の口から出たのは、罵声ではなく間の抜けたような声だった。
珍入者は、半裸のまま目をまん丸にし、八重歯を出してあんぐりと口を開けたまま一瞬固まった。そして、はっ、と我に返り慌てて青いスーツを身に纏いながら
「っだっ!すんません、俺、怪しいもんじゃないっす…って、充分怪しいと思いますけどっ!
ほんと、ちょっと塀の影で着替えさせて貰えたらって…」
などと充分怪しいことを言い、
「すんませんっ!ほんと、すんません!急ぐんで失礼しまっす!後でまた来ますからっっ」
ズボッと頭の部分を被ると素早く飛び上がり、あっという間にビルの谷間に消えていった。
「………」
あれは。もしや
「スーパーヒーローとかいうやつか?」
そう。この街にはヒーローがいる。
金のある所には犯罪が。
そしてそれを取り締まるヒーローが。
古くはヒーローゴールドアッシュ。
彼がたった一人で始めたボランティア活動がいつしかヒーロー活動と呼ばれるようになり、この街に最初のヒーローが誕生した。
それから30年。
今ではヒーローはフリーのボランティアヒーローと、職業として事務所に所属するプロのヒーローとに分かれ、この街の名物となっていた。
ヒーローは自分に合わせて作られたタイツのようなヒーロースーツを身に纏う。
一人一人デザインも効果も違うヒーロースーツは、いわばヒーローの顔。ああ見えて企業の叡智が詰まった特殊素材には防火防弾効果もある。ヒーローの命を守る大切なものなのだ。
老人はぽかんと開いていた口を閉じ、大声で笑い出した。
なんだあれは!
人のうちの庭で着替えだって!?
ヒーローが、半裸でタイツを!
あの驚いた顔ときたら!
全くもう!
ようやく笑いが収まったかと思うと、またあの目をまん丸にした子供のような表情が浮かび、次の笑いに襲われる。
あのカッコウときたら!
片足立ちで、ピョンピョンしていたぞ!
下をむき、クツクツと笑う。
なんと人騒がせで騒がしい男なのだろう!
それにしても。
ヒーローが不法侵入とはなあ!
そう、何もなく門を開けっぱなしにするほど老人は不用心ではない。開けっぱなしにできるのは、外周りに赤外線で高度なセキュリティーを施してあるからだ。
ほら、彼の侵入に気付き、隣の自社ビルからは警備員達がすでに姿を見せている。
「さあて…鍵を忘れたとでもいおうか。」
くつくつと笑みを溢す。
全く困ったヒーローだ。
「…また、寄ると言っていたな。」
せいぜいしかつめらしい顔をして、縁側で待ち構えてやろう。
「…っふっ。」
あの青のタイツ男は、どんな顔をしてやってくるのだろうか。
変わりない穏やかな日常を手にしたと思ったら、悪戯な小僧が飛び込んで来おったわ。
これからは、庭を見るたびに思わず笑ってしまうだろう。
どうしてくれるんだ、ヒーロー。
まずはテレビをつけてヒーローの活躍でも見るとしよう。
老人は、この町で長い間働いて来た。
初めは、夫婦で興した小さな仕立て屋だった。
流行に敏感な妻がデザインし、職人気質の老人が形にする。
2人は数分の一ミリに、針の一目に拘った。
お互いのこだわり故に何度もやり直し、何度も話し合い、一つの作品を作り上げた。
ほんの少しの妥協も許さないその仕事は、初めは採算が取れず食うに困ることさえあった。
しかしその誠実かつ繊細な作品は、正に「身に纏う芸術品」として、真に価値ある物を知る人の目に留まることとなる。
「時間はどれだけかかってもよい、足りなければもっと支払おう。
だから、思う存分腕をふるい、並び立つもののない程の芸術品を仕立てて欲しい」
一着分としては想像もつかぬほどの手付け金と共に贈られたのは、信頼。
夫婦は、存分に腕をふるった。
全ての材料を吟味し、今あるもので満足できない時には、自ら糸を撚り布を織り、染めあげた。
選んだのは燕尾服。
しなやかに身体に添い、着用者の動きによってやわらかな光沢を見せる、薄い素材のブルーブラック。
しかし、そこに全体に目を凝らさねば気づかぬような細やかな刺繍を黒糸で施し厚みを加えた。
細やかなあるかなしかの凹凸。だがそれこそが、そこにかけられた膨大な時間が、途方もない手間が、惜しみなく注がれた技術こそが、生地に荘厳さを与えるのだ。
色とりどりの煌びやかな中にあってこそ、この王者の為のブラックは真価を発揮する。
漆黒のようでありながら、主の動きでちらと覗くブルーブラック。
織りなすコントラストが、他のものの追付いを許さぬ真の美しさを魅せてくれるだろう。
優雅な動きを強調するテールは思い切って長めに。
その分カットをハードにして清廉さを。
ウイングカラーの襟はほんの少し高めに。
スラックスはスタイルを際立たせるハイウエストで、腿はきもちゆったりと。
側章には敢えて光沢を入れ少しの遊び心と華やさの演出を。
こだわり抜いたその衣装は、正に芸術品であった。
皇太子だった青年は、衣装の完成後、時を待たずして即位した。
その芸術品をその身に纏い。
堂々たるその姿は、世界中の人々に感嘆の音を奏でさせた。
その日のうちに、仕立て屋は伝説となった。
こうして老人たちは有名になり、彼らの店には引きも切らず依頼が入ってくるようになった。
それでも夫妻は一切手を抜かず、針の一目に、一ミリの差に拘り仕事をした。
その究極の一着の価値は、求める人の多さとその作品の少なさからどんどん上がり続けた。
彼等のこだわりぬく姿勢により世に出す数は限られたが、彼らの店は「幾ら払ってもいい。何年待っても良い」というファンによって支えられた。
あまりの求める声の多さに、夫妻は最早最初の頃のように一般の手には渡らなくなってしまった自分達の作品とは別に、弟子に縫製などをまかせた一般向けのブランドを作った。
手に入れやすい材料ではあるが、丁寧な縫製とカッティングにはこだわり抜いた。
一般向け、弟子の縫製とはいえ、彼らの店のものはやはり別格だ。
その店の品は、「記念日に」「結婚式に」と、人々の特別な時を彩ることとなったのである。
彼等の店は、ついにその名が特別な意味を持つブランドとなった。
小さな街の仕立て屋は、本人達を他所にどんどん利益を上げ続け、巨大企業に成長した。
それでも夫妻は「ふたりのしごと」をあくまでも誠実に続けた。
二人で話し合い、こだわり抜いて作品を生み出すという「しごと」を。
それは、妻が病にかかるまで続いた。
長年酷使された指は病により僅かに震え、僅かなそれが今まで通りの仕事を許さなくなった。
二人は仕事をやめた。
そのかわり二人は、新しい「ふたりのしごと」を見つけた。
これからの「ふたりのための栖をつくる」というしごとを。
二人は、巨大なビルの谷間に自分達の拘りに満ちた家を作り上げた。
ふたりの栖を守るかのように、周辺を自社ビルがぐるりと囲む。
庭にやわらかな陽射しがあたるよう、ビルの形、方向をあらかじめ計算した。
ビルの窓はふたりの栖の側にはつけていない。プライバシーをしっかりと守れるように。
大切な宝である妻を守るために、セキュリティーにも力を入れた。
東方の家の造りは開放的で暖かいが、この犯罪の多発するヒュンメルには向かない。
従って、栖をぐるりと取り巻く頭ほどの高さの塀とその上にまで赤外線センサーを付けた。
センサーに少しでも反応があれば、即座に周りの自社ビルから警備員達が集まるようになっている。
妻の故郷である東方。
家はあくまでも開放的に。
本物に拘り、本物の「大工」を東方から雇い、継ぎや仕口、掛けという手法を駆使する事で、プラスティックや鉄などという無粋な素材は入れなかった。
だが縁側の内側、雨戸というには厚みのある木製の扉を四方しっかりと閉じれば、平家は外からは開かぬ強固なシェルターとなりふたりの安眠を守る。
家をぐるりと囲む庭には、季節に咲く木々を植えた。
縁側で、春、夏、秋、冬が楽しめるよう、季節に合わせた一本一本を、何度も何度も額を突き合わせて話し合い、大切に少しづつ選んでいった。
初春には梅が優しくほころび、ピンクのサクラがヒラヒラと庭に踊る。
木蓮が柔らかにふくらみ、新緑と共にハナミズキが薄紅の花弁をひらく。
秋には金木犀がその金色の香りで満たし、紅葉が鮮やかな色をのせる。
冬にはネコヤナギがふくふくと可愛らしい顔を並べ、椿がほとほとと雪に朱と白の印をつける。
縁側で季節の移ろいを眺め、あれやこれやと語り合うのが楽しみだった。
ふたりの子供ともいえるブランドにも、まだまだ顔をだしてやる必要があった。
巨大化して大切な事を忘れぬように、顔を出し、技術を伝え、激励し叱咤してやらねばならなかった。
あくまでも「誠実に、こだわりを持ち、良い仕事を」せねばならぬ。
楽をしない事。流されぬ事。手を抜かぬ事。
それこそが価値となり信用となり、ふたりのブランドを巨大な世界的企業にまで押し上げたのだ。
もはや手に針を持つことはないが、二人は誠実に「ふたりの子供」を見守った。
また「ふたりの栖」を慈しみ、ふたりの栖で過ごす時間を存分に楽しんだ。
そうして、妻は存分に働き、楽しみ、微笑みながら旅立った。
老人は、ひとりになった。
ひとりになった老人は、それまでと同じように「ふたりの子供」を見守り、時に叱咤した。
朝に栖を出て、夕に戻る時にはいつもどおりに庭を眺めた。
季節の移ろい微笑みながらを楽しみ、その儚さを愛しんだ。
幸せであった。
毎日、慈しみ育てたものに囲まれて誠実に。楽しみをあちらこちらに見出し。
確かに幸せである。
はずなのに。
妻のいたときのように、声を出して笑うことはなかった。
浮かべる柔らかなほんのりとした笑みは、胸に小さな暖かな灯を灯しはするが、かつてのように燃えるような光を放ちはしなかった。
あの、妻と大きな口を開けて笑いあった日々は。
互いに譲らず大きな声で語り合った日々は。
花を眺めて、お互いに温もりを分かち合い静けさという音を共有していたあの騒がしくも愛おしい日々は、二度と戻らないのだと。
幸せの中に孤独がしんしんと降り積もっていた。
あのヒーローが現れるまでは。
あれからすぐにかけつけた警備員たちに、「ミスでキーを忘れた」のだと苦しい言い訳をし、なんとか納得させることができたのだが………。
言い訳の最中にも笑いがこみ上げてしまう。
なんと堪えるのに苦心したことか!
あの驚き!
この「わたしたちの庭」に半裸の男が!
タイツを着ようと片足立ちでピョンピョンと!
子供のように目をまん丸にしてたぞ!
驚いたのは、私の方だ!
「怪しいもんじゃない」って、充分すぎるほどに怪しいだろう!
「ちょっと着替え」だと?人のうちの庭で⁈
あのマスク、ズボッと被っていたな。
ズボッと!
なんだそれは!そんな被り方で良いのか?仮にもヒーローだろう!
「はっはっはっはっ」
笑いがとまらない。
「あーっはっはっはっはっ…っ、ふう、っっはっはっはっはっ……っく…くるしいっっ……ふっふっふっ…」
思う存分、久方ぶりの笑いに身を任せる。
ああ、笑いすぎて涙が出てきた。
「ははっはっはっ……ふっ…ふっ………ふっ…………ふぅっ………」
涙が止まらない。
ぽろりと出てきたそれは、何故か次々と湧いてあふれて溢れ。
ふたりの庭にすうっと吸い込まれてゆく。
胸にしんしんと降り積もっていたものも、涙とともに溢れてすうっと消えてゆく。
ああ…。私はまだこんな風に笑えるのか。
なあ、おまえ。
まだ、こんな風に笑えるんだよ。
だから、大丈夫だ。
まだまだ、生きて行ける。
ふたりの子供を
ふたりの栖を
守っていけるよ。
さあ。
あの慌てん坊の侵入者の活躍を見に行こうじゃないか。
テレビを見ながら、チェックしてやらねばな!
なんといっても「後で寄る」そうだから。
あんな薄っぺらなスーツでは、身など護れない。すぐに破れてけがをするだろう。
手当てしてやらねばなるまいさ。
しかし……青いスーツのヒーローというのは、10年も前に見た気がするぞ?
あれはたしか……妻と見たニュースだったか?
銀行強盗を追いながら、派手に転んでいた。
妻は確か「このヒーロー、ドジだけど一生懸命ね。私は好きよ」と笑っていた。
「こんなのでヒーローとしてやっていけるのかしら」と。
愚直なまでにがむしゃらに犯罪者に立ち向かうそのスタイルは、確かに観ている方が心配になるほど捨て身なものだ。
心配する妻の意見ももっともだと思った。
妻よ。あの泥臭いヒーローは、10年後もまだヒーローをしていたぞ!
確か……ブルースター。
ロートルとまで言われるようになったオールドヒーローの中身が、あんな小僧みたいな男だったとは!
ああ、勿論しっかりと叱咤してやるさ。まかせておけ。
いい機会だ。「いい仕事」とは何か、あの坊主にこのわたしが直々に叩き込んでやろう。
わたしの庭に入ったからには、覚悟してもらうぞ。
そういえば丁度美味い和菓子と茶があった。
きっと腹も減らしているだろうから用意しておこう。
そうだなあ、果物でもむいておくか。果物ならいくらあってもいいだろう。
…沢山食いそうだな。林檎と…蜜柑、バナナ…。
さあ。用意ができた。
わしかつめらしい顔をしてあの縁側で待つとするか。
あのドジで……一生懸命な青いヒーローを。
塀の向こうに、ヘンテコな帽子が見える。
見えている。
が、なかなか入って来ようとはしない。
ぴょこり、と飛び出しては引っ込み、引っ込んでは飛び出してくる。
あれは……アイツか?
ああ、全く。
せっかくセキュリティーを切ってやっておいたというのに、いつになったら入ってくるんだ。
仕方のない奴め。
根性を据えてさっさと入ってこんか!
「…ゴホン!」
ほら、私は縁側で待っているぞ。
「…ゴホン、ゴホン!」
ひょこん。
門から小さな頭だけ飛び出してきた。
「あ…あのぅ…すんませええん…、さっきの怪しくないものですう…」
「ブォッフォ!」
「うわっ!!じっじいさん
大丈夫かっ!!?」
笑わせるな小僧!笑いを堪えてむせてしまったではないか!
慌てて入って来て私を抱き抱えて背中を叩き出すヒーロー。
ドンドン背中を叩くな!痛い!
年寄りなんだ、もう少し加減をせんか!
「………っ。だ…大丈夫だ。
…もういい!痛い!やめんかブルースター!コラ!」
「ふぁい!ごめんなさい!」
反射のようにピョコーン!と起立の体制でまっすぐになった。
これは…叱られ慣れているな。困ったもんだ。
「…ゴホン。まあ、ここに座って落ちつきなさい。」
「はい!失礼しまっす!」
元気よく返事をして横に座る小僧。
うむ。いい返事だ。
それに、テレビを見ていた限りでもこの様子を見ても、今日は怪我はしていないようだ。
うむ。うむ。
「えっと、さっきは失礼しました。」
と恥ずかしそうに、だがしっかり私に目を合わせて頭を下げる。
なかなか礼儀正しいじゃないか。うん。
「ほんと、怪しいもんじゃないんです。
俺、ヒーローやってるんですけど、ちょうどここん家のところで事故のレスキューの呼び出しがあって。
急いで着替えなきゃいけなかったんですけど、この近く、公衆トイレないんですよね」
困ったように眉をハの字にしてしょんぼりする。
ん?公衆トイレと言ったか?
「?待ちたまえ。公衆トイレがなんだって?」
「え?着替えなきゃいけないから、公衆トイレ!
ご存じありませんか?ヒーロー活動の時は、ヒーロースーツ着用しなきゃいけないんです。
でないと一般人に間違われるでしょ」
キョトンと当たり前のように言われ、思わずこめかみを抑えた。
「……いや、知っている。そういうことではない」
「ああっ!そういえばよく俺がブルースターだって分かりましたね!じいちゃん凄えっ!」
私の両手を掴みブンブンと上下させる。
「いやいやあのスーツを見れば……じゃなくてだね、キミは何故トイレで着替えているんだと…」
「え?何でって…。
うんと、最初の頃は行きながら自分の車ん中で着替えてたんですよね。車がだダメなときは木の影とか……」
「…は?」
いや、今なんと言った?着替え?
まさか、毎回あんな風に外で着替えていたのか?!
変質者に間違われてもおかしくはないだろう!
「そしたら、なんか、着替えてるとことかネットにあがっちゃってたみたいで。
いやあ、物好きもいるもんっすね!わざわざ男の着替えなんか撮って笑いもんにしなくてもねえ!」
頭の後ろに手をやり、てへ、と笑うブルースター。
あれから調べてみたが、これでも彼は30歳を超えていた。
だがやはりどう見てもまだ小僧に見える。こうして見せた無邪気な笑顔も、とても30歳を超えているとは思えない。
「…いや…キミそれは…」
この街にはゲイも多い。特に彼のようにこの街では珍しいブルネットの髪はそういった界隈では人気なのだそうだ。
何故知っているかって?
うちのスタッフにも彼のようなブルネットがいるのだ。
おかしな輩に目を付けられ付け回されているとかで、力になってなったことがある。
小僧にそういった注意を促すべきだろうか?
いや、この子供のように無邪気な笑顔を見た後では「それはきっと笑い物などはなくて別な…」などとはとても言えない。
対局とはいえ、犯罪者に一番近いところで生きているというのに、なぜ彼はこんなにもまっすぐに清廉でいられるのだろう。
老婆心ながら、こう思ってしまった。
彼にはこのままで居て貰いたい、と。
私の複雑な胸の内など全く気付かず、彼は熱弁を振るう。
「んで、上司がですね。『お前は絶対外で着替えるな。どこか誰もいない室内で着替えてから外に出るように』って。
うちの嫁にもすんごい怒られて」
何故か一瞬その表情に寂しげな陰がよぎった気がしたが、それはすぐに消えた。
「でも、室内っつったって、なあ!
正体隠してんのに『すんませーん出動なんで着替えさせて下さい』ってその辺のビルや人ん家に入る訳にはいかないでしょ?
だから、公衆トイレ!
昔のヒーローが出てくる映画で、電話ボックスで変身してでてくるやつ、知ってます?
あれ見てピーンと閃いたんです!
俺、この街詳しいんですよ!だからどこの公衆トイレが現場に一番近いか直ぐにわかるの!」
エヘン!と胸を張るヒーロー。
褒めて褒めてといわんばかりだ。
なんだこの生き物は!
オールドヒーローだというのに何故か未だ幼子のようではないか!
なんというか…上司の苦労が大変忍ばれる。
奥様の苦労も大変忍ばれる。
きっと彼女たちがこのヒーローの心をずっと守ってきたのに違いない。
今度はゆっくりと噛んで含むように言ってきかせた。
「…君は確かフリーではなくヒーロー事務所の所属だっただろう?ワゴンはないのか?
いくらなんでもトイレで着替えというのは……お勧めできないな」
すると困ったように眉を下げ、アハハと笑う。
「まあ、うちの会社、そんなにおっきくねえからしょうがねえよな!
みんな精一杯やってくれてるんだもん」
…わかっていた。この流れから、わかっていたが…!!
が!!!
ヒーローの着替えの場所もないなんてどうなんだ?!フリーと大して変わらないではないか!
しかも、この小僧が、だぞ?
危険だろう!主に違う意味で!
今はなんでもすぐにネットで拡散されてしまう時代なのだぞ?
おかしな輩に目を付けられたらどうする?
こんな爺でもわかるようなことが何故わからんのだ!
その辺で着替えてしまう小僧も小僧だが、そもそもの原因は所属事務所の体制が整っていないからではないか!
ヒーローをなんだと思っているんだ!
…まあ、しかし、その一生懸命さと共に彼のドジの多さは有名なようだ。
弱小事務所がブルーヒーローというヒーローを擁する、これがギリギリのところなのかもしれない。
彼のいうように、その企業規模を考えれば、精一杯なのだろう。
彼が大切に思われているのは間違いない。事務所のサイトに載っていたブルーヒーローの紹介ページは、自社ヒーローに対する愛が溢れている。
スポンサーを選ばなければもっと稼げるのだろうが…先程調べてみたところ、少しでも裏のありそうな所は全て断っているようだ。その点も充分評価に値する。
「…あのう…続けていいすか?」
「…ああ、すまない。つい…ね。」
侵入者に対してしかつめらしい顔をしているはずが、のっけから笑いを堪える羽目になった。
その後も次々に繰り出される驚きに、もはや私のしかめつらなど意味をなさない。
そう、私は無意識のうちに、小僧の頭をまるで小さな子供にでもするように撫でてしまっていたのだ。
不遇な境遇にありながらも、元気に前向きな彼の健気さに、はからずも母性本能ならぬ爺本能を刺激されてしまった。
これで、彼は誰よりもヒーローたる魂を持っている。
どうやら、叱られ慣れても、撫ぜられ慣れてもいるようだが。
彼は頭を撫ぜるわたしに頓着せず続けた。
「そんで、ちょうどこの辺りだけ、ビルばっかりで公衆トイレがなくて。しょうがないから、ちょっと庭の塀の陰を貸してもらおうって」
さすがにここは、恥ずかしそうに言うと
「ほんと、すんませんでした!」
再度しっかりと90度の正しい御辞儀。
…のあと、目だけをあげて上目遣いでニカっと笑った!
これは……まさに悪戯っ子のアレだな!
うむ!あざとい!
これなら誰でもほだされ許してしまうだろう。
現に少し話をしただけのこの私ですら「何とかしてやらねば」と思ってしまう。
私と妻にはブランドとこの庭意外に子供といえるものはない。
もし私に息子がいたら、こんな気持ちになっていたのではないだろうか。
全く仕方ない小僧だ。
「…うむ。わかった。
今日の活躍に免じて謝罪を受け入れよう。
よくやったな、ブルーヒーロー!」
私の言葉に彼はぱあっと表情を明るくさせた。
「見てくれたんですか?」
「ああ。見ていた。君があのトラックを持ち上げたところなどは、凄かった。
君のおかげて下敷きになっていた車の親子も無事だったのだ。
あのままにしていたら車体が持たず何れ圧死していただろう」
嬉しそうに顔を輝かせているが、小僧よ、まだ続きがあるぞ!
「だがな!後がいかん!後が!
そうっと下さんか、そうっと!
いくら運転手がいないとはいえ、慌ててジャッキから手を放すな!
急に手を放すから道路が陥没してしまったんだ!
修繕費がいくら掛かると思う?それに修繕の間、沢山の人に不便をかけるんだぞ!」
「…ジョーにも言われた…」
ションボリと肩を落とすヒーローに、何だか可哀想なことを言ってしまったような気になり慌てて
「いや、確かに、親子が心配で慌てていたのはわかる。
たがな。君はひとりじゃあない、周りには救急隊も、仲間のヒーローもいるのだ。
少しは頼ることも覚えなさい」
「…はい。
…なんか、じいちゃん、うちのジョーみてえだな」
しょんぼりしてしまった彼がようやく照れくさそうな笑みを見せてくれた。
わたしもそれに安心し、ニッコリと笑う。
(ところでさっきから度々登場するジョーとは誰なんだい?君の上司かね?
いい上司に恵まれているようじゃないか。大事にするのだぞ?)
「さあて。時間はあるか?ヒーロー。
腹が減っているだろう、良ければこの年寄りと茶でも飲んでいかんかね?」
とたん彼がぱあっと顔を輝かせ「やったあ!空いてます空いてます!」と言って勢いよく立ち上がったくせに、慌てて「でも、ご迷惑じゃあありませんか?」と妙な遠慮をみせたものだから。
「庭でわたしに半裸踊りを見せておきながら今更!」
と遠慮なく笑う。大声で笑う。
小僧は嬉しそうに「そりゃそうだ!おじゃましまあっす!」と上がりこんできた。
これが、オールドヒーローと私の正式な出会いである。
「さあ、これを持っていってくれ」と果物をこんもりと入れた盆を渡す。
私も茶と和菓子を乗せた盆を持ち、縁側にふたり腰を下ろした。
今は桜が満開なのだ。
ここはとっておき貸切の特等席だ。
「どうぞ」
桜の形を模した練り切りを出してやると
「うわあ!練り切りだ!懐かしいなあ!凄え!街ん中でビルに囲まれてんのに練り切り食いながら花見!凄え!」
と大喜びしたあと、ぽつんと
「あいつに見せてやりたかったなあ…」
と呟いた。
「また奥さんも連れてくるといい。歓迎するよ」
といえば、あの寂しげななんとも言えない笑みを見せ
「あそこにいっちまったから」
と空を指差した。
…ああ…。君も大切な宝を失ったのか。
そうか。
だから君は、闇雲に命を救おうと壊すことに躊躇いを見せず、自分の命にも頓着しなくなったのか。
「…そうか…。そこでわたしの妻にも会っているかもしれないね」
お互いに、理解を見出す。
片割れを失ったもの同士。半身を失ったもの同士。
私も君も、泣くに泣けなかった。
その場所を失ってしまったからだ。
不思議と、穏やかな、まるで旧知の仲のようなここちよさ。
「…ここね、時々外から花を見せてもらってたんです。
最初に見つけたのは、あいつ。
俺の会社に弁当届けながらこの庭を見かけたみたいで。『凄いのよ!桜、満開だったのよ!』っておおはしゃぎしてたなあ。
見に来てみたら、塀から色々な懐かしい木や花が顔を出してくれてて。
桜や桃の花や、ネコヤナギも!全部が東方には日常で、でヒュンメルでは見かけたことがない木ばかりで!」
懐かしい思い出を大切そうに、愛おしむように口にした。
「…季節ごとにゆっくり塀の周りを散歩しながら『梅だ!懐かしいなあ。梅酒、お義母さんの美味かったなあ』とか『梅干し、甘いのと酸っぱいの、どっちがいいか』だとかくだらないことを話して」
ああ、思い出したよ。
時々、塀をゆっくりと一周してゆく仲の良さそうな2人がいた。
2つの頭がゆらゆらと、時々こつんとくっついたり離れたり。
仲の良さそうな頭を、内側から微笑ましく妻と眺めたものだ。
あれは君たちだったのか。
いつからか、姿を見せなくなったが…そうだったのか。
「あいつが逝ってから……俺、ここに近づけなかった。1人で来たことはなかったんです。
ここは……………『ふたりで歩くところ』だったから」
ああ、その気持ちは分かる。
そう、痛いほどに。
私ほど理解している者はいないだろうほどに。
「…でも、この近くで出動要請を受けた時……なんでかなあ、すぐにここが頭に浮かんで。
急がなきゃ、って夢中で。気づいたらここで着替えてた……」
「ははは!あれは酷かった!
あの後、久しぶりに大笑いさせてもらったよ!あの時の君はおかしかったなあ!
ほんとうに、あんなに笑ったのは久しぶりだ。
……ほんとうに久しぶりなんだ」
お互いに目を見交わし、ふふふ、と笑んだ。
言葉にはできないものが伝わる。
「そんで今、中から、じいちゃんとまんじゅう食いながら桜を眺めてる。
……なんか、不思議だなあ……はは……っ…はっ……不思議……だ……っ……」
笑いながら、大きな眼からポトポト、ぼたぼたぼたと水滴を落とす。
私も目から出る水を流れるに任せた。
「…あれからこんな風に話しながら桜を眺めることなんてなかったなあ…。
まさか侵入者と花見をすることになるとは想像もしていなかったよ」
「はは……。俺もです」
二人でぼたぼた水を流し、時折、チーン!と鼻をかみながら果物を食べ、まんじゅうを食べた。
黙って皮を向いてやった蜜柑を差し出すと、彼はそれを半分に割り、私に返してきた。
そう。
私はこうして片割れと分け合ってきた。おそらくは、君も。
だろう?
当たり前の日常だ。
しかしそのなんと愛おしく、かけがえのない日々だったことか。
もはや渡す先のない私がむいた蜜柑。
白いところを丁寧にとるのが私流なんだ。
それを彼が受け取り、黙って半分返す。
ああ!
……ああ!
分け合う人がいたということは、こんなにも幸せなことだったのだ。
静かに切なく暖かな時を過ごす。
「…この家と庭はな、妻とふたりでじっくりと選んで楽しんで作った、私たちふたりの子供なんだ。
ここで妻と庭を眺め、毎日話をしたり喧嘩をしたりしていた、ふたりの庭だった。
君たちにとってもそうであったと聞き、とても嬉しいよ。ヒーロー。
どうやらわたしたちには何かしらの縁があるようだ。
私は君を以前から知っていたんだよ。妻と君を見たことがあるんだ。
ここが、ふたりの庭じゃなくひとりの庭になって久しい。
…………誰かが顔を出してくれたら、また、ふたりの庭になるんだがね?」
彼を見ると、わかっていないようで不思議そうな顔をしている。
困った小僧だな。私に言わせる気か?
仕方なく彼にも分かりやすいように説明してやる。
「ヒーロー。これからは着替えはここでしなさい。
悪い事は言わない。
公衆トイレも、もちろん車の中も、木の影も、やめるんだ。
実はうちの塀には赤外線のセキュリティーがあってね、それにかかるとすぐにこの周りのビルから警備員が飛んでくる。
あの後もすぐに警備がやって来て大変だったんだぞ?
ほら、これを持って行きなさい。キーだ。
これを身につけていれば、セキュリティーにかからず入ることができる。
好きに使うといい」
彼の目が大きく見開かれた。
何か言いたそうに、でも言葉にはならず口をあけたり閉じたりしている。
「この庭は、私たち夫婦の子供のようなものだ。
そしてこの庭を愛してくれて、飛び込んできた君は、いわばこの庭の子供、わたしには孫のようなものだ。
君にこの庭をわけてやろう。
ふたりの庭だ、ふたりにするにはちょうどひとり足りなかった。
ブルーヒーロー。傷だらけのヒーロー。
どうだい?受け取ってくれるかい?
もちろんうちにもフリーパスだ。好きに上がりたまえ。
なあに、ときどきこの年寄の、この爺さんの話し相手になってくれればいい。
私には話し相手と孫のような小僧ができ、かわりに君は着替える場所と、この庭と、ヒュンメルでの爺さんを得るわけだ。
君の出身は東方だろう?近くに頼るものが居るのも悪くないのではないか?
さあ、黙って頷け。悪い取引じゃあないだろう?」
黙って聴いていた彼の眼がみるみる潤み、嬉しそうにアーチを描いた。
かと思うとガバリと私に抱きつき、涙声で言った。
「…おれ、…っおれっ、孤児院育ちだから父ちゃんも爺ちゃんもいねーんだ…っ初めて爺ちゃん出来た…っ。
…おれ…っ、泣けなかったのにっ………あれからずっと泣けなかったのに……っっ
ここに来たら、なんでだか泣けたんだ………っ。爺ちゃんといたら、初めて泣けたんだ……。
…なんでかなあ」
そうか。そうか。
君もこの街でひとりぼっちだったのだな。
「………私も泣けなかったぞ?それに……笑えなかったんだ。
ヒーロー、君が来たら泣けたし笑えたのだ」
そっとその思いのほか小さな頭を撫で、遠い彼女に想いを馳せる。
「……きっと、私たちの片割れが空で出会ったんだ。
うちのは、なかなかにお節介だからな。寂しがり屋の私をひとりにしてしまってどうしようかと、君の奥さんと相談でもしたのだろう。
『ふたりの庭でふたりを出会わせちゃいましょう!』とでも思ったんだろう。
それで君をよこしたって訳だ」
「そっかあ。…だから、ここが浮かんだんだな」
子供のようにてらいのない声音で小僧が言った。
「…………なあ、坊主。
そろそろ、離してもらっていいかい?
私は年寄りなんだ。そうぎゅうぎゅう締め付けるな!力の加減を覚えてくれ!」
「っだっ!」
彼は真っ赤になって慌てて離れた。
そして、照れ臭そうに
「…じいちゃん…」
と小さな声で呟き、キュ、もう一度と軽くハグをして嬉しそうに笑った。
口元には八重歯をのぞかせて。鼻の頭を赤くして。
その姿はとてもヒーローとは思えない。
図体ばかり大きな、わたしと同じく片翼失って途方に暮れていたこどもだ。
ようやく、少しだけ羽を休める場所をみつけたと肩の力を抜き、安心した顔を見せるこどもだ。
不思議だな。正式に出会ったのは今日はじめてなのに。
塀越しに私たちは君を知っていたよ。
おかえり、ヒーロー。
愛しい悪戯坊主。
私は立ち上がると庭に降り、桜の大きなひと枝を切ってやった。
「さあ。帰りに忘れずに持って帰って、奥さんに見せてやるといい。
写真くらいはあるのだろう?」
これは壊すんじゃないぞ、と片目を瞑ると
「ちゃあんと見せてやりますって。…ありがと!あいつも喜ぶっ!」
と目をしばたかせた。
その目にまたしても浮かぶものは、武士の情けだ、見なかったことにしてやろう。
こうして、私は孫を、ヒーローは羽を休める場所と祖父を得た。
ふたりの庭には、ときどきヤンチャな小僧が飛び込んでくる。
嵐のように去ることもあれば、ヤキトリだのミソシルだのを作ってわたしの口に押し込んでいくこともある。
彼が黙って縁側に座っているときは、何も言わずにわたしも並んで庭を眺める。
すると、ポツポツと話だし、水滴を1粒2粒救えなかった命に捧げ、また力強く飛び出していく。
ブルーヒーローには新しいスポンサーがついたらしい。
まずは彼にワゴン車が送られた。
「やったあ!これでどこでも着替えできる!」と大喜びした小僧が、「新しくついたスポンサーが車くれた!」と報告に来てくれた。
うむ。良かったな。これで安心だ。
あまり甘やかすのもよくない。まずはワゴン、といったところだろう。
色は彼のイメージカラーであるブルーにした。
なかなかいいセンスだったろう?
私は新規事業にも参入した。
今は街のあちこちに、簡易シャワーブースを設置しているところだ。
出社前にランニングするのが流行っているというし、シャワーを浴びて着替えそのまま出社できるというのは需要があるだろう。
一応、出動後のヒーローがどこでもいつでも汗を流すことができるよう、各ブースは完全に独立させ安全性とプライバシーには充分に配慮した。
完成次第、新しいスポンサーから彼ににフリーパスが送られるだろう。
毎日の仕事にも張り合いができた。
いま私は久しぶりに針を手にしている。
うちの孫に着せるとっておきを作ってやらないとな。
ああ、忙しい。
手のかかる孫が、オールドヒーローではなく「ザ・ヒーロー」、彼こそがヒーローだと呼ばれるようになるまであと少し。
彼の言っていたジョーがまさかの女性だったと知らされ、ジョーとの結婚式で滝のような涙を流すまであと数年。
大きな街の一角。じいじと孫の騒がしくも愛おしい日々の話。
そう、邸、…家だ。
高層ビルの立ち並ぶ街ヒュンメルの、しかも最上の地区であるゴールドステージにあって、その一角は異彩を放っていた。
塀に囲まれた敷地には和風の庭園があり、奥には縁側のある昔風の平家が。
その庭のしつらえにしても平家にしても、高級所得者の街であるゴールドステージに酔狂者がよく設えるような、計算し尽くされた静寂に満ちたものではなかった。
四方に家を囲むように広がる庭には、梅の木や桜の木、牡丹やネコヤナギなどの季節の木々が、ただ昔からあるような自然な佇まいでそこここにある。
その中心にある平家の縁側は、長年風雨にさらされたような年月を感じさせる柔らかな色合いを帯び、そこにのんびりと腰かけてお茶をしている好々爺の姿が目にみえるようであった。
豪華ではないが大切に慈しみ整えられている様子が、その持ち主の性分を思わせる。
ひっそりと、ただ懐かしい暖かさを惑わせてその家は存在したのである。
その家の主は、塀の外をゆっくりと一回りし庭を眺めてから中に入るのが日課だった。
塀の前で足を止め、塀からちらと覗く梅の花や桜の枝、チチと鳴く小鳥などをしばし眺めたあと、満足気に微笑む。
しかし、その日その日課は果たされなかった。
いつもどうり塀の前で足を止めれば、木々の間にチラチラと見える青。
「?」
不審に思い、そっと様子を伺うと、ごそごそと身動きする音に混じり時折「っだっ!」などと男の声がする。
泥棒か!
どうする?!……助けが来るのを待つか?
これでも若い頃から鍛えているから、腕には多少自信がある。
身構えながら入ると、そこには半裸の青年が片脚立ちで青いタイツのようなものを着ようと四苦八苦していた。
「…君は誰だね?此処で何をしているんだ?」
気勢を削がれ、ぽかんとした老人の口から出たのは、罵声ではなく間の抜けたような声だった。
珍入者は、半裸のまま目をまん丸にし、八重歯を出してあんぐりと口を開けたまま一瞬固まった。そして、はっ、と我に返り慌てて青いスーツを身に纏いながら
「っだっ!すんません、俺、怪しいもんじゃないっす…って、充分怪しいと思いますけどっ!
ほんと、ちょっと塀の影で着替えさせて貰えたらって…」
などと充分怪しいことを言い、
「すんませんっ!ほんと、すんません!急ぐんで失礼しまっす!後でまた来ますからっっ」
ズボッと頭の部分を被ると素早く飛び上がり、あっという間にビルの谷間に消えていった。
「………」
あれは。もしや
「スーパーヒーローとかいうやつか?」
そう。この街にはヒーローがいる。
金のある所には犯罪が。
そしてそれを取り締まるヒーローが。
古くはヒーローゴールドアッシュ。
彼がたった一人で始めたボランティア活動がいつしかヒーロー活動と呼ばれるようになり、この街に最初のヒーローが誕生した。
それから30年。
今ではヒーローはフリーのボランティアヒーローと、職業として事務所に所属するプロのヒーローとに分かれ、この街の名物となっていた。
ヒーローは自分に合わせて作られたタイツのようなヒーロースーツを身に纏う。
一人一人デザインも効果も違うヒーロースーツは、いわばヒーローの顔。ああ見えて企業の叡智が詰まった特殊素材には防火防弾効果もある。ヒーローの命を守る大切なものなのだ。
老人はぽかんと開いていた口を閉じ、大声で笑い出した。
なんだあれは!
人のうちの庭で着替えだって!?
ヒーローが、半裸でタイツを!
あの驚いた顔ときたら!
全くもう!
ようやく笑いが収まったかと思うと、またあの目をまん丸にした子供のような表情が浮かび、次の笑いに襲われる。
あのカッコウときたら!
片足立ちで、ピョンピョンしていたぞ!
下をむき、クツクツと笑う。
なんと人騒がせで騒がしい男なのだろう!
それにしても。
ヒーローが不法侵入とはなあ!
そう、何もなく門を開けっぱなしにするほど老人は不用心ではない。開けっぱなしにできるのは、外周りに赤外線で高度なセキュリティーを施してあるからだ。
ほら、彼の侵入に気付き、隣の自社ビルからは警備員達がすでに姿を見せている。
「さあて…鍵を忘れたとでもいおうか。」
くつくつと笑みを溢す。
全く困ったヒーローだ。
「…また、寄ると言っていたな。」
せいぜいしかつめらしい顔をして、縁側で待ち構えてやろう。
「…っふっ。」
あの青のタイツ男は、どんな顔をしてやってくるのだろうか。
変わりない穏やかな日常を手にしたと思ったら、悪戯な小僧が飛び込んで来おったわ。
これからは、庭を見るたびに思わず笑ってしまうだろう。
どうしてくれるんだ、ヒーロー。
まずはテレビをつけてヒーローの活躍でも見るとしよう。
老人は、この町で長い間働いて来た。
初めは、夫婦で興した小さな仕立て屋だった。
流行に敏感な妻がデザインし、職人気質の老人が形にする。
2人は数分の一ミリに、針の一目に拘った。
お互いのこだわり故に何度もやり直し、何度も話し合い、一つの作品を作り上げた。
ほんの少しの妥協も許さないその仕事は、初めは採算が取れず食うに困ることさえあった。
しかしその誠実かつ繊細な作品は、正に「身に纏う芸術品」として、真に価値ある物を知る人の目に留まることとなる。
「時間はどれだけかかってもよい、足りなければもっと支払おう。
だから、思う存分腕をふるい、並び立つもののない程の芸術品を仕立てて欲しい」
一着分としては想像もつかぬほどの手付け金と共に贈られたのは、信頼。
夫婦は、存分に腕をふるった。
全ての材料を吟味し、今あるもので満足できない時には、自ら糸を撚り布を織り、染めあげた。
選んだのは燕尾服。
しなやかに身体に添い、着用者の動きによってやわらかな光沢を見せる、薄い素材のブルーブラック。
しかし、そこに全体に目を凝らさねば気づかぬような細やかな刺繍を黒糸で施し厚みを加えた。
細やかなあるかなしかの凹凸。だがそれこそが、そこにかけられた膨大な時間が、途方もない手間が、惜しみなく注がれた技術こそが、生地に荘厳さを与えるのだ。
色とりどりの煌びやかな中にあってこそ、この王者の為のブラックは真価を発揮する。
漆黒のようでありながら、主の動きでちらと覗くブルーブラック。
織りなすコントラストが、他のものの追付いを許さぬ真の美しさを魅せてくれるだろう。
優雅な動きを強調するテールは思い切って長めに。
その分カットをハードにして清廉さを。
ウイングカラーの襟はほんの少し高めに。
スラックスはスタイルを際立たせるハイウエストで、腿はきもちゆったりと。
側章には敢えて光沢を入れ少しの遊び心と華やさの演出を。
こだわり抜いたその衣装は、正に芸術品であった。
皇太子だった青年は、衣装の完成後、時を待たずして即位した。
その芸術品をその身に纏い。
堂々たるその姿は、世界中の人々に感嘆の音を奏でさせた。
その日のうちに、仕立て屋は伝説となった。
こうして老人たちは有名になり、彼らの店には引きも切らず依頼が入ってくるようになった。
それでも夫妻は一切手を抜かず、針の一目に、一ミリの差に拘り仕事をした。
その究極の一着の価値は、求める人の多さとその作品の少なさからどんどん上がり続けた。
彼等のこだわりぬく姿勢により世に出す数は限られたが、彼らの店は「幾ら払ってもいい。何年待っても良い」というファンによって支えられた。
あまりの求める声の多さに、夫妻は最早最初の頃のように一般の手には渡らなくなってしまった自分達の作品とは別に、弟子に縫製などをまかせた一般向けのブランドを作った。
手に入れやすい材料ではあるが、丁寧な縫製とカッティングにはこだわり抜いた。
一般向け、弟子の縫製とはいえ、彼らの店のものはやはり別格だ。
その店の品は、「記念日に」「結婚式に」と、人々の特別な時を彩ることとなったのである。
彼等の店は、ついにその名が特別な意味を持つブランドとなった。
小さな街の仕立て屋は、本人達を他所にどんどん利益を上げ続け、巨大企業に成長した。
それでも夫妻は「ふたりのしごと」をあくまでも誠実に続けた。
二人で話し合い、こだわり抜いて作品を生み出すという「しごと」を。
それは、妻が病にかかるまで続いた。
長年酷使された指は病により僅かに震え、僅かなそれが今まで通りの仕事を許さなくなった。
二人は仕事をやめた。
そのかわり二人は、新しい「ふたりのしごと」を見つけた。
これからの「ふたりのための栖をつくる」というしごとを。
二人は、巨大なビルの谷間に自分達の拘りに満ちた家を作り上げた。
ふたりの栖を守るかのように、周辺を自社ビルがぐるりと囲む。
庭にやわらかな陽射しがあたるよう、ビルの形、方向をあらかじめ計算した。
ビルの窓はふたりの栖の側にはつけていない。プライバシーをしっかりと守れるように。
大切な宝である妻を守るために、セキュリティーにも力を入れた。
東方の家の造りは開放的で暖かいが、この犯罪の多発するヒュンメルには向かない。
従って、栖をぐるりと取り巻く頭ほどの高さの塀とその上にまで赤外線センサーを付けた。
センサーに少しでも反応があれば、即座に周りの自社ビルから警備員達が集まるようになっている。
妻の故郷である東方。
家はあくまでも開放的に。
本物に拘り、本物の「大工」を東方から雇い、継ぎや仕口、掛けという手法を駆使する事で、プラスティックや鉄などという無粋な素材は入れなかった。
だが縁側の内側、雨戸というには厚みのある木製の扉を四方しっかりと閉じれば、平家は外からは開かぬ強固なシェルターとなりふたりの安眠を守る。
家をぐるりと囲む庭には、季節に咲く木々を植えた。
縁側で、春、夏、秋、冬が楽しめるよう、季節に合わせた一本一本を、何度も何度も額を突き合わせて話し合い、大切に少しづつ選んでいった。
初春には梅が優しくほころび、ピンクのサクラがヒラヒラと庭に踊る。
木蓮が柔らかにふくらみ、新緑と共にハナミズキが薄紅の花弁をひらく。
秋には金木犀がその金色の香りで満たし、紅葉が鮮やかな色をのせる。
冬にはネコヤナギがふくふくと可愛らしい顔を並べ、椿がほとほとと雪に朱と白の印をつける。
縁側で季節の移ろいを眺め、あれやこれやと語り合うのが楽しみだった。
ふたりの子供ともいえるブランドにも、まだまだ顔をだしてやる必要があった。
巨大化して大切な事を忘れぬように、顔を出し、技術を伝え、激励し叱咤してやらねばならなかった。
あくまでも「誠実に、こだわりを持ち、良い仕事を」せねばならぬ。
楽をしない事。流されぬ事。手を抜かぬ事。
それこそが価値となり信用となり、ふたりのブランドを巨大な世界的企業にまで押し上げたのだ。
もはや手に針を持つことはないが、二人は誠実に「ふたりの子供」を見守った。
また「ふたりの栖」を慈しみ、ふたりの栖で過ごす時間を存分に楽しんだ。
そうして、妻は存分に働き、楽しみ、微笑みながら旅立った。
老人は、ひとりになった。
ひとりになった老人は、それまでと同じように「ふたりの子供」を見守り、時に叱咤した。
朝に栖を出て、夕に戻る時にはいつもどおりに庭を眺めた。
季節の移ろい微笑みながらを楽しみ、その儚さを愛しんだ。
幸せであった。
毎日、慈しみ育てたものに囲まれて誠実に。楽しみをあちらこちらに見出し。
確かに幸せである。
はずなのに。
妻のいたときのように、声を出して笑うことはなかった。
浮かべる柔らかなほんのりとした笑みは、胸に小さな暖かな灯を灯しはするが、かつてのように燃えるような光を放ちはしなかった。
あの、妻と大きな口を開けて笑いあった日々は。
互いに譲らず大きな声で語り合った日々は。
花を眺めて、お互いに温もりを分かち合い静けさという音を共有していたあの騒がしくも愛おしい日々は、二度と戻らないのだと。
幸せの中に孤独がしんしんと降り積もっていた。
あのヒーローが現れるまでは。
あれからすぐにかけつけた警備員たちに、「ミスでキーを忘れた」のだと苦しい言い訳をし、なんとか納得させることができたのだが………。
言い訳の最中にも笑いがこみ上げてしまう。
なんと堪えるのに苦心したことか!
あの驚き!
この「わたしたちの庭」に半裸の男が!
タイツを着ようと片足立ちでピョンピョンと!
子供のように目をまん丸にしてたぞ!
驚いたのは、私の方だ!
「怪しいもんじゃない」って、充分すぎるほどに怪しいだろう!
「ちょっと着替え」だと?人のうちの庭で⁈
あのマスク、ズボッと被っていたな。
ズボッと!
なんだそれは!そんな被り方で良いのか?仮にもヒーローだろう!
「はっはっはっはっ」
笑いがとまらない。
「あーっはっはっはっはっ…っ、ふう、っっはっはっはっはっ……っく…くるしいっっ……ふっふっふっ…」
思う存分、久方ぶりの笑いに身を任せる。
ああ、笑いすぎて涙が出てきた。
「ははっはっはっ……ふっ…ふっ………ふっ…………ふぅっ………」
涙が止まらない。
ぽろりと出てきたそれは、何故か次々と湧いてあふれて溢れ。
ふたりの庭にすうっと吸い込まれてゆく。
胸にしんしんと降り積もっていたものも、涙とともに溢れてすうっと消えてゆく。
ああ…。私はまだこんな風に笑えるのか。
なあ、おまえ。
まだ、こんな風に笑えるんだよ。
だから、大丈夫だ。
まだまだ、生きて行ける。
ふたりの子供を
ふたりの栖を
守っていけるよ。
さあ。
あの慌てん坊の侵入者の活躍を見に行こうじゃないか。
テレビを見ながら、チェックしてやらねばな!
なんといっても「後で寄る」そうだから。
あんな薄っぺらなスーツでは、身など護れない。すぐに破れてけがをするだろう。
手当てしてやらねばなるまいさ。
しかし……青いスーツのヒーローというのは、10年も前に見た気がするぞ?
あれはたしか……妻と見たニュースだったか?
銀行強盗を追いながら、派手に転んでいた。
妻は確か「このヒーロー、ドジだけど一生懸命ね。私は好きよ」と笑っていた。
「こんなのでヒーローとしてやっていけるのかしら」と。
愚直なまでにがむしゃらに犯罪者に立ち向かうそのスタイルは、確かに観ている方が心配になるほど捨て身なものだ。
心配する妻の意見ももっともだと思った。
妻よ。あの泥臭いヒーローは、10年後もまだヒーローをしていたぞ!
確か……ブルースター。
ロートルとまで言われるようになったオールドヒーローの中身が、あんな小僧みたいな男だったとは!
ああ、勿論しっかりと叱咤してやるさ。まかせておけ。
いい機会だ。「いい仕事」とは何か、あの坊主にこのわたしが直々に叩き込んでやろう。
わたしの庭に入ったからには、覚悟してもらうぞ。
そういえば丁度美味い和菓子と茶があった。
きっと腹も減らしているだろうから用意しておこう。
そうだなあ、果物でもむいておくか。果物ならいくらあってもいいだろう。
…沢山食いそうだな。林檎と…蜜柑、バナナ…。
さあ。用意ができた。
わしかつめらしい顔をしてあの縁側で待つとするか。
あのドジで……一生懸命な青いヒーローを。
塀の向こうに、ヘンテコな帽子が見える。
見えている。
が、なかなか入って来ようとはしない。
ぴょこり、と飛び出しては引っ込み、引っ込んでは飛び出してくる。
あれは……アイツか?
ああ、全く。
せっかくセキュリティーを切ってやっておいたというのに、いつになったら入ってくるんだ。
仕方のない奴め。
根性を据えてさっさと入ってこんか!
「…ゴホン!」
ほら、私は縁側で待っているぞ。
「…ゴホン、ゴホン!」
ひょこん。
門から小さな頭だけ飛び出してきた。
「あ…あのぅ…すんませええん…、さっきの怪しくないものですう…」
「ブォッフォ!」
「うわっ!!じっじいさん
大丈夫かっ!!?」
笑わせるな小僧!笑いを堪えてむせてしまったではないか!
慌てて入って来て私を抱き抱えて背中を叩き出すヒーロー。
ドンドン背中を叩くな!痛い!
年寄りなんだ、もう少し加減をせんか!
「………っ。だ…大丈夫だ。
…もういい!痛い!やめんかブルースター!コラ!」
「ふぁい!ごめんなさい!」
反射のようにピョコーン!と起立の体制でまっすぐになった。
これは…叱られ慣れているな。困ったもんだ。
「…ゴホン。まあ、ここに座って落ちつきなさい。」
「はい!失礼しまっす!」
元気よく返事をして横に座る小僧。
うむ。いい返事だ。
それに、テレビを見ていた限りでもこの様子を見ても、今日は怪我はしていないようだ。
うむ。うむ。
「えっと、さっきは失礼しました。」
と恥ずかしそうに、だがしっかり私に目を合わせて頭を下げる。
なかなか礼儀正しいじゃないか。うん。
「ほんと、怪しいもんじゃないんです。
俺、ヒーローやってるんですけど、ちょうどここん家のところで事故のレスキューの呼び出しがあって。
急いで着替えなきゃいけなかったんですけど、この近く、公衆トイレないんですよね」
困ったように眉をハの字にしてしょんぼりする。
ん?公衆トイレと言ったか?
「?待ちたまえ。公衆トイレがなんだって?」
「え?着替えなきゃいけないから、公衆トイレ!
ご存じありませんか?ヒーロー活動の時は、ヒーロースーツ着用しなきゃいけないんです。
でないと一般人に間違われるでしょ」
キョトンと当たり前のように言われ、思わずこめかみを抑えた。
「……いや、知っている。そういうことではない」
「ああっ!そういえばよく俺がブルースターだって分かりましたね!じいちゃん凄えっ!」
私の両手を掴みブンブンと上下させる。
「いやいやあのスーツを見れば……じゃなくてだね、キミは何故トイレで着替えているんだと…」
「え?何でって…。
うんと、最初の頃は行きながら自分の車ん中で着替えてたんですよね。車がだダメなときは木の影とか……」
「…は?」
いや、今なんと言った?着替え?
まさか、毎回あんな風に外で着替えていたのか?!
変質者に間違われてもおかしくはないだろう!
「そしたら、なんか、着替えてるとことかネットにあがっちゃってたみたいで。
いやあ、物好きもいるもんっすね!わざわざ男の着替えなんか撮って笑いもんにしなくてもねえ!」
頭の後ろに手をやり、てへ、と笑うブルースター。
あれから調べてみたが、これでも彼は30歳を超えていた。
だがやはりどう見てもまだ小僧に見える。こうして見せた無邪気な笑顔も、とても30歳を超えているとは思えない。
「…いや…キミそれは…」
この街にはゲイも多い。特に彼のようにこの街では珍しいブルネットの髪はそういった界隈では人気なのだそうだ。
何故知っているかって?
うちのスタッフにも彼のようなブルネットがいるのだ。
おかしな輩に目を付けられ付け回されているとかで、力になってなったことがある。
小僧にそういった注意を促すべきだろうか?
いや、この子供のように無邪気な笑顔を見た後では「それはきっと笑い物などはなくて別な…」などとはとても言えない。
対局とはいえ、犯罪者に一番近いところで生きているというのに、なぜ彼はこんなにもまっすぐに清廉でいられるのだろう。
老婆心ながら、こう思ってしまった。
彼にはこのままで居て貰いたい、と。
私の複雑な胸の内など全く気付かず、彼は熱弁を振るう。
「んで、上司がですね。『お前は絶対外で着替えるな。どこか誰もいない室内で着替えてから外に出るように』って。
うちの嫁にもすんごい怒られて」
何故か一瞬その表情に寂しげな陰がよぎった気がしたが、それはすぐに消えた。
「でも、室内っつったって、なあ!
正体隠してんのに『すんませーん出動なんで着替えさせて下さい』ってその辺のビルや人ん家に入る訳にはいかないでしょ?
だから、公衆トイレ!
昔のヒーローが出てくる映画で、電話ボックスで変身してでてくるやつ、知ってます?
あれ見てピーンと閃いたんです!
俺、この街詳しいんですよ!だからどこの公衆トイレが現場に一番近いか直ぐにわかるの!」
エヘン!と胸を張るヒーロー。
褒めて褒めてといわんばかりだ。
なんだこの生き物は!
オールドヒーローだというのに何故か未だ幼子のようではないか!
なんというか…上司の苦労が大変忍ばれる。
奥様の苦労も大変忍ばれる。
きっと彼女たちがこのヒーローの心をずっと守ってきたのに違いない。
今度はゆっくりと噛んで含むように言ってきかせた。
「…君は確かフリーではなくヒーロー事務所の所属だっただろう?ワゴンはないのか?
いくらなんでもトイレで着替えというのは……お勧めできないな」
すると困ったように眉を下げ、アハハと笑う。
「まあ、うちの会社、そんなにおっきくねえからしょうがねえよな!
みんな精一杯やってくれてるんだもん」
…わかっていた。この流れから、わかっていたが…!!
が!!!
ヒーローの着替えの場所もないなんてどうなんだ?!フリーと大して変わらないではないか!
しかも、この小僧が、だぞ?
危険だろう!主に違う意味で!
今はなんでもすぐにネットで拡散されてしまう時代なのだぞ?
おかしな輩に目を付けられたらどうする?
こんな爺でもわかるようなことが何故わからんのだ!
その辺で着替えてしまう小僧も小僧だが、そもそもの原因は所属事務所の体制が整っていないからではないか!
ヒーローをなんだと思っているんだ!
…まあ、しかし、その一生懸命さと共に彼のドジの多さは有名なようだ。
弱小事務所がブルーヒーローというヒーローを擁する、これがギリギリのところなのかもしれない。
彼のいうように、その企業規模を考えれば、精一杯なのだろう。
彼が大切に思われているのは間違いない。事務所のサイトに載っていたブルーヒーローの紹介ページは、自社ヒーローに対する愛が溢れている。
スポンサーを選ばなければもっと稼げるのだろうが…先程調べてみたところ、少しでも裏のありそうな所は全て断っているようだ。その点も充分評価に値する。
「…あのう…続けていいすか?」
「…ああ、すまない。つい…ね。」
侵入者に対してしかつめらしい顔をしているはずが、のっけから笑いを堪える羽目になった。
その後も次々に繰り出される驚きに、もはや私のしかめつらなど意味をなさない。
そう、私は無意識のうちに、小僧の頭をまるで小さな子供にでもするように撫でてしまっていたのだ。
不遇な境遇にありながらも、元気に前向きな彼の健気さに、はからずも母性本能ならぬ爺本能を刺激されてしまった。
これで、彼は誰よりもヒーローたる魂を持っている。
どうやら、叱られ慣れても、撫ぜられ慣れてもいるようだが。
彼は頭を撫ぜるわたしに頓着せず続けた。
「そんで、ちょうどこの辺りだけ、ビルばっかりで公衆トイレがなくて。しょうがないから、ちょっと庭の塀の陰を貸してもらおうって」
さすがにここは、恥ずかしそうに言うと
「ほんと、すんませんでした!」
再度しっかりと90度の正しい御辞儀。
…のあと、目だけをあげて上目遣いでニカっと笑った!
これは……まさに悪戯っ子のアレだな!
うむ!あざとい!
これなら誰でもほだされ許してしまうだろう。
現に少し話をしただけのこの私ですら「何とかしてやらねば」と思ってしまう。
私と妻にはブランドとこの庭意外に子供といえるものはない。
もし私に息子がいたら、こんな気持ちになっていたのではないだろうか。
全く仕方ない小僧だ。
「…うむ。わかった。
今日の活躍に免じて謝罪を受け入れよう。
よくやったな、ブルーヒーロー!」
私の言葉に彼はぱあっと表情を明るくさせた。
「見てくれたんですか?」
「ああ。見ていた。君があのトラックを持ち上げたところなどは、凄かった。
君のおかげて下敷きになっていた車の親子も無事だったのだ。
あのままにしていたら車体が持たず何れ圧死していただろう」
嬉しそうに顔を輝かせているが、小僧よ、まだ続きがあるぞ!
「だがな!後がいかん!後が!
そうっと下さんか、そうっと!
いくら運転手がいないとはいえ、慌ててジャッキから手を放すな!
急に手を放すから道路が陥没してしまったんだ!
修繕費がいくら掛かると思う?それに修繕の間、沢山の人に不便をかけるんだぞ!」
「…ジョーにも言われた…」
ションボリと肩を落とすヒーローに、何だか可哀想なことを言ってしまったような気になり慌てて
「いや、確かに、親子が心配で慌てていたのはわかる。
たがな。君はひとりじゃあない、周りには救急隊も、仲間のヒーローもいるのだ。
少しは頼ることも覚えなさい」
「…はい。
…なんか、じいちゃん、うちのジョーみてえだな」
しょんぼりしてしまった彼がようやく照れくさそうな笑みを見せてくれた。
わたしもそれに安心し、ニッコリと笑う。
(ところでさっきから度々登場するジョーとは誰なんだい?君の上司かね?
いい上司に恵まれているようじゃないか。大事にするのだぞ?)
「さあて。時間はあるか?ヒーロー。
腹が減っているだろう、良ければこの年寄りと茶でも飲んでいかんかね?」
とたん彼がぱあっと顔を輝かせ「やったあ!空いてます空いてます!」と言って勢いよく立ち上がったくせに、慌てて「でも、ご迷惑じゃあありませんか?」と妙な遠慮をみせたものだから。
「庭でわたしに半裸踊りを見せておきながら今更!」
と遠慮なく笑う。大声で笑う。
小僧は嬉しそうに「そりゃそうだ!おじゃましまあっす!」と上がりこんできた。
これが、オールドヒーローと私の正式な出会いである。
「さあ、これを持っていってくれ」と果物をこんもりと入れた盆を渡す。
私も茶と和菓子を乗せた盆を持ち、縁側にふたり腰を下ろした。
今は桜が満開なのだ。
ここはとっておき貸切の特等席だ。
「どうぞ」
桜の形を模した練り切りを出してやると
「うわあ!練り切りだ!懐かしいなあ!凄え!街ん中でビルに囲まれてんのに練り切り食いながら花見!凄え!」
と大喜びしたあと、ぽつんと
「あいつに見せてやりたかったなあ…」
と呟いた。
「また奥さんも連れてくるといい。歓迎するよ」
といえば、あの寂しげななんとも言えない笑みを見せ
「あそこにいっちまったから」
と空を指差した。
…ああ…。君も大切な宝を失ったのか。
そうか。
だから君は、闇雲に命を救おうと壊すことに躊躇いを見せず、自分の命にも頓着しなくなったのか。
「…そうか…。そこでわたしの妻にも会っているかもしれないね」
お互いに、理解を見出す。
片割れを失ったもの同士。半身を失ったもの同士。
私も君も、泣くに泣けなかった。
その場所を失ってしまったからだ。
不思議と、穏やかな、まるで旧知の仲のようなここちよさ。
「…ここね、時々外から花を見せてもらってたんです。
最初に見つけたのは、あいつ。
俺の会社に弁当届けながらこの庭を見かけたみたいで。『凄いのよ!桜、満開だったのよ!』っておおはしゃぎしてたなあ。
見に来てみたら、塀から色々な懐かしい木や花が顔を出してくれてて。
桜や桃の花や、ネコヤナギも!全部が東方には日常で、でヒュンメルでは見かけたことがない木ばかりで!」
懐かしい思い出を大切そうに、愛おしむように口にした。
「…季節ごとにゆっくり塀の周りを散歩しながら『梅だ!懐かしいなあ。梅酒、お義母さんの美味かったなあ』とか『梅干し、甘いのと酸っぱいの、どっちがいいか』だとかくだらないことを話して」
ああ、思い出したよ。
時々、塀をゆっくりと一周してゆく仲の良さそうな2人がいた。
2つの頭がゆらゆらと、時々こつんとくっついたり離れたり。
仲の良さそうな頭を、内側から微笑ましく妻と眺めたものだ。
あれは君たちだったのか。
いつからか、姿を見せなくなったが…そうだったのか。
「あいつが逝ってから……俺、ここに近づけなかった。1人で来たことはなかったんです。
ここは……………『ふたりで歩くところ』だったから」
ああ、その気持ちは分かる。
そう、痛いほどに。
私ほど理解している者はいないだろうほどに。
「…でも、この近くで出動要請を受けた時……なんでかなあ、すぐにここが頭に浮かんで。
急がなきゃ、って夢中で。気づいたらここで着替えてた……」
「ははは!あれは酷かった!
あの後、久しぶりに大笑いさせてもらったよ!あの時の君はおかしかったなあ!
ほんとうに、あんなに笑ったのは久しぶりだ。
……ほんとうに久しぶりなんだ」
お互いに目を見交わし、ふふふ、と笑んだ。
言葉にはできないものが伝わる。
「そんで今、中から、じいちゃんとまんじゅう食いながら桜を眺めてる。
……なんか、不思議だなあ……はは……っ…はっ……不思議……だ……っ……」
笑いながら、大きな眼からポトポト、ぼたぼたぼたと水滴を落とす。
私も目から出る水を流れるに任せた。
「…あれからこんな風に話しながら桜を眺めることなんてなかったなあ…。
まさか侵入者と花見をすることになるとは想像もしていなかったよ」
「はは……。俺もです」
二人でぼたぼた水を流し、時折、チーン!と鼻をかみながら果物を食べ、まんじゅうを食べた。
黙って皮を向いてやった蜜柑を差し出すと、彼はそれを半分に割り、私に返してきた。
そう。
私はこうして片割れと分け合ってきた。おそらくは、君も。
だろう?
当たり前の日常だ。
しかしそのなんと愛おしく、かけがえのない日々だったことか。
もはや渡す先のない私がむいた蜜柑。
白いところを丁寧にとるのが私流なんだ。
それを彼が受け取り、黙って半分返す。
ああ!
……ああ!
分け合う人がいたということは、こんなにも幸せなことだったのだ。
静かに切なく暖かな時を過ごす。
「…この家と庭はな、妻とふたりでじっくりと選んで楽しんで作った、私たちふたりの子供なんだ。
ここで妻と庭を眺め、毎日話をしたり喧嘩をしたりしていた、ふたりの庭だった。
君たちにとってもそうであったと聞き、とても嬉しいよ。ヒーロー。
どうやらわたしたちには何かしらの縁があるようだ。
私は君を以前から知っていたんだよ。妻と君を見たことがあるんだ。
ここが、ふたりの庭じゃなくひとりの庭になって久しい。
…………誰かが顔を出してくれたら、また、ふたりの庭になるんだがね?」
彼を見ると、わかっていないようで不思議そうな顔をしている。
困った小僧だな。私に言わせる気か?
仕方なく彼にも分かりやすいように説明してやる。
「ヒーロー。これからは着替えはここでしなさい。
悪い事は言わない。
公衆トイレも、もちろん車の中も、木の影も、やめるんだ。
実はうちの塀には赤外線のセキュリティーがあってね、それにかかるとすぐにこの周りのビルから警備員が飛んでくる。
あの後もすぐに警備がやって来て大変だったんだぞ?
ほら、これを持って行きなさい。キーだ。
これを身につけていれば、セキュリティーにかからず入ることができる。
好きに使うといい」
彼の目が大きく見開かれた。
何か言いたそうに、でも言葉にはならず口をあけたり閉じたりしている。
「この庭は、私たち夫婦の子供のようなものだ。
そしてこの庭を愛してくれて、飛び込んできた君は、いわばこの庭の子供、わたしには孫のようなものだ。
君にこの庭をわけてやろう。
ふたりの庭だ、ふたりにするにはちょうどひとり足りなかった。
ブルーヒーロー。傷だらけのヒーロー。
どうだい?受け取ってくれるかい?
もちろんうちにもフリーパスだ。好きに上がりたまえ。
なあに、ときどきこの年寄の、この爺さんの話し相手になってくれればいい。
私には話し相手と孫のような小僧ができ、かわりに君は着替える場所と、この庭と、ヒュンメルでの爺さんを得るわけだ。
君の出身は東方だろう?近くに頼るものが居るのも悪くないのではないか?
さあ、黙って頷け。悪い取引じゃあないだろう?」
黙って聴いていた彼の眼がみるみる潤み、嬉しそうにアーチを描いた。
かと思うとガバリと私に抱きつき、涙声で言った。
「…おれ、…っおれっ、孤児院育ちだから父ちゃんも爺ちゃんもいねーんだ…っ初めて爺ちゃん出来た…っ。
…おれ…っ、泣けなかったのにっ………あれからずっと泣けなかったのに……っっ
ここに来たら、なんでだか泣けたんだ………っ。爺ちゃんといたら、初めて泣けたんだ……。
…なんでかなあ」
そうか。そうか。
君もこの街でひとりぼっちだったのだな。
「………私も泣けなかったぞ?それに……笑えなかったんだ。
ヒーロー、君が来たら泣けたし笑えたのだ」
そっとその思いのほか小さな頭を撫で、遠い彼女に想いを馳せる。
「……きっと、私たちの片割れが空で出会ったんだ。
うちのは、なかなかにお節介だからな。寂しがり屋の私をひとりにしてしまってどうしようかと、君の奥さんと相談でもしたのだろう。
『ふたりの庭でふたりを出会わせちゃいましょう!』とでも思ったんだろう。
それで君をよこしたって訳だ」
「そっかあ。…だから、ここが浮かんだんだな」
子供のようにてらいのない声音で小僧が言った。
「…………なあ、坊主。
そろそろ、離してもらっていいかい?
私は年寄りなんだ。そうぎゅうぎゅう締め付けるな!力の加減を覚えてくれ!」
「っだっ!」
彼は真っ赤になって慌てて離れた。
そして、照れ臭そうに
「…じいちゃん…」
と小さな声で呟き、キュ、もう一度と軽くハグをして嬉しそうに笑った。
口元には八重歯をのぞかせて。鼻の頭を赤くして。
その姿はとてもヒーローとは思えない。
図体ばかり大きな、わたしと同じく片翼失って途方に暮れていたこどもだ。
ようやく、少しだけ羽を休める場所をみつけたと肩の力を抜き、安心した顔を見せるこどもだ。
不思議だな。正式に出会ったのは今日はじめてなのに。
塀越しに私たちは君を知っていたよ。
おかえり、ヒーロー。
愛しい悪戯坊主。
私は立ち上がると庭に降り、桜の大きなひと枝を切ってやった。
「さあ。帰りに忘れずに持って帰って、奥さんに見せてやるといい。
写真くらいはあるのだろう?」
これは壊すんじゃないぞ、と片目を瞑ると
「ちゃあんと見せてやりますって。…ありがと!あいつも喜ぶっ!」
と目をしばたかせた。
その目にまたしても浮かぶものは、武士の情けだ、見なかったことにしてやろう。
こうして、私は孫を、ヒーローは羽を休める場所と祖父を得た。
ふたりの庭には、ときどきヤンチャな小僧が飛び込んでくる。
嵐のように去ることもあれば、ヤキトリだのミソシルだのを作ってわたしの口に押し込んでいくこともある。
彼が黙って縁側に座っているときは、何も言わずにわたしも並んで庭を眺める。
すると、ポツポツと話だし、水滴を1粒2粒救えなかった命に捧げ、また力強く飛び出していく。
ブルーヒーローには新しいスポンサーがついたらしい。
まずは彼にワゴン車が送られた。
「やったあ!これでどこでも着替えできる!」と大喜びした小僧が、「新しくついたスポンサーが車くれた!」と報告に来てくれた。
うむ。良かったな。これで安心だ。
あまり甘やかすのもよくない。まずはワゴン、といったところだろう。
色は彼のイメージカラーであるブルーにした。
なかなかいいセンスだったろう?
私は新規事業にも参入した。
今は街のあちこちに、簡易シャワーブースを設置しているところだ。
出社前にランニングするのが流行っているというし、シャワーを浴びて着替えそのまま出社できるというのは需要があるだろう。
一応、出動後のヒーローがどこでもいつでも汗を流すことができるよう、各ブースは完全に独立させ安全性とプライバシーには充分に配慮した。
完成次第、新しいスポンサーから彼ににフリーパスが送られるだろう。
毎日の仕事にも張り合いができた。
いま私は久しぶりに針を手にしている。
うちの孫に着せるとっておきを作ってやらないとな。
ああ、忙しい。
手のかかる孫が、オールドヒーローではなく「ザ・ヒーロー」、彼こそがヒーローだと呼ばれるようになるまであと少し。
彼の言っていたジョーがまさかの女性だったと知らされ、ジョーとの結婚式で滝のような涙を流すまであと数年。
大きな街の一角。じいじと孫の騒がしくも愛おしい日々の話。
216
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はあ、笑えて、泣けて、よかったねぇ(´;ω;`)警備に捕まらなくてよかった笑
木々やお花の描写がとても美しくて、笑い合う二人の笑顔まで目に浮かぶようでした。
読者も一緒に癒されます♡
優しい素敵なお話を読ませていただき、ありがとうございました😊💗
ふわあ!月齢先生っ!ありがとうございます〰♡
なんて詩的な嬉しいお言葉っ😭
こちらこそ、ご拝読頂いた上コメントまで!ありがとうございます♡🙏✨