【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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第四章 ゲイルをください?

嫁とり婿とり大作戦?

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なぜだか大歓迎されながら入ったグランディール家。

「……美術館か?」

思わずつぶやいたが、許してほしい。

彫像などは置かれていない。装飾品が多いわけではないが、とにかく屋敷自体の造りが豪華なのだ。

まずは天井が非常に高い。おかれている家具もはやりの華奢な造りではなく重厚な職人の技の光るもの。磨きこまれた木目が美しい艶を放っている。

豪華なレリーフが刻まれた階段の手すりが、上に続くアーチを優雅に描いている。
濃紺の絨毯が敷かれた階段の続く先、玄関ホールの正面の壁には、代々の当主であろう肖像画がズラリ。その誰もがフィオそっくりの冷たく整った容姿。隣に立つのに金髪翠眼が多いのは……サフィールなんだろうなあ。

広いホールの至る所に置かれた巨大な花瓶には白、水色、を基調とした寒色の花が。ところどころに混じる黄色がアクセントとなっていた。


「存外趣味がいいじゃねえか」

ニヤリとしながらフィオを見ると、恥ずかしそうにそっと耳元でささやかれた。

「花は……実は私とゲイルをイメージしているんです。ブルーと黄色、グリーンを中心に活けるようにと指示しています」

って、それは反則だ!

俺は照れ隠しにフィオの背を押した。

「ほら、お前の部屋に行くぞ!さっさと案内しろ!」
「はい。……ゲイルを私の部屋にお連れできるなんて……とてもうれしいです」

そういうとこだぞ!クッソ!
こいつは無意識に俺を落としに来やがる。

俺たちのやり取りを使用人たちが微笑ましそうに見つめていた。
い、いや、これは……違うからな⁈
って俺は誰に言い訳してるんだか!



連れていかれたフィオの部屋は……驚くほど殺風景だった。
きれいに整えられたベッドは天蓋付きで、濃いブルーの厚手のカーテンがシルバーの組みひもで纏められている。
壁面に置かれた衣装棚はとても大きく、数メートルはあるから特注品なのだろう。
一つ一つの家具が豪華で質の良いものだ。
だが……それだけだ。どこか寒々しい。
そこに住む住人の色を感じないのだ。

ウチに来てこいつが「ここはあたたかい」という理由が分かった気がした。
ここは単に仕事をして寝るだけの空間なのだ。
こいつを安らがせ、包み込む「隠れ家」じゃあない。
巣の整え方をこいつは知らないんだ。

そんな中、異彩を放つ空間が。
窓際に置かれたチェストの上のガラスケースに、雑多なものが納らえている。
露店で買った小さな犬の置物。ガラス製のペーパーウエイト。ボルゾイをモチーフにしたブローチ。
クッキーの入っていた空き缶まである。
どれもとてもチープなものだ。
下町の店で俺が見つけ、面白いとこいつに買ってやったもの。
こんな風にして大切そうに飾るもんじゃない。

丁寧に並べたれた配置。ガラスの下に置かれた小さなクッション。
この一角にだけはフィオの色が感じられた。

「……お前なあ……こんな風に大事にとっておくような……」


ああ。泣きそうだ。

フィオが後ろから俺をそっと腕で囲む。

「……私の宝物なのです。どれもかけがえのないものなのです」
「……また買ってやる」

今度はこの殺風景な部屋に彩を与えるようなものを。まずは大きなクッションを買ってやろう。
美しいソファを座りごこちの良いものにする、大きくて柔らかなクッションを。
それでふたりで寝っ転がろうぜ!

「せっかくこんなデカい屋敷を持ってるんだ。
人が住める空間にしようぜ。
俺がここを俺たちの巣に変えてやるよ。ここを俺のセカンドハウスにする!いいか?」

「はい!いつでも。いつでもいらしてください!」

「んじゃ、まずは魔物兄貴と戦うぞ!
いっとくが「家族第一のサフィール家」って名は伊達じゃねえからな。覚悟しとけ!」



とりあえず、フィオの衣装棚を探す。
ズラリとかけられた衣装は、どれも………

「地味だな……。てか、ほとんど似たようなもんじゃねえか」

濃紺、黒を基調とし、シルバーの房飾りや縁取り、刺繍の入った上着。シンプルなシャツ。黒かグレーの……

「ああ!もう!シンプルもいいが、少しの遊びがあるのがいいんだろうが!」

俺はとりあえず濃紺にシルバーの縁取りの上着、グレーのスラックスを取り出した。
それに、俺の身に着けていたグリーンのクラバットを挿し色として合わせる。

「ほら。着てみろ」
「ふふ。あなたの色だ。これを私に?」
「ああ。俺のものって感じがしていいだろ?」

普段のこいつは飾りのないシンプルな衣服を好む。だが、兄貴に挑むにはそれなりの「敬意」を見せなきゃな。
特に毛虫みてえに避けてるグランディールを連れ込むんだ。やりすぎくらいでちょうどいい。



「……どうですか?」

着慣れない色に少し照れながら俺に問うフィオ。
フィオの怜悧な美貌に明るいグリーンが華やかさを演出していた。

「うん。……まあまあかな?俺はどうだ?」

俺のほうは外したクラバットの代わりにフィオの衣装棚からシルバーのベストを拝借。
クラバットは濃紺。フィオの色だ。

「!!」

返事の代わりにキスしてきやがった!まったくこいつは!
こら!舌を入れてくるんじゃねえ!出かけらんなくなるだろうが!

ビシっと額を指ではじいてやれば、きまり悪そうに口元を抑えて横を向いた。

「……すみません。あなたが私の色を身に着けているのが嬉しくて……」
「続きは帰ってからな?まずは出陣だ!」

ふと思い立ってフィオの宝箱からチープなわんこのブローチを拝借。
ネクタイピン代わりに着けてやった。
上着を着せると、上からぽんぽん、と叩いてやる。

「お守りだ代わりだ」
「ふふ。強そうだ」

つけた場所は心臓の上。これがお前のハートを守ってくれますように。
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