【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

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第9章 聖女のお披露目

記念にとんでもないものを

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居間に通されると、そこにはすでに絵師がスタンバイしていた。
サフィールのお抱え絵師だ。

知らない絵師なら遠慮なく断ったんだが……これは無理だ。


俺も幼い頃描かれた覚えがあるが、それ以降はなんだかんだと逃げ回っていた。
自分の肖像画を残すなんぞ、こっぱずかしいだろ?

その代わりと言ってはなんだが、画を描く側に興味を持ち、俺も絵筆を握るようになった。
描かれるのを嫌がるくせに、何かと「これはどうだ」「あれはどうだ」と質問するガキの相手を、この人たちは嫌がりもせずにしてくれた。絵筆を貸し与え、キャンバスもいつの間にか用意されていたのだ。
兄貴に言えば用意してくれたんだろうが、その代わり「私たちを描いてくれ、家宝にする」だのこっぱずかしいことを言いそうだし実際にガキの絵でも関係なくホールに飾りそうだったから、俺は絵を描くことを兄貴には内緒にしていたのだ。
その俺の意思を尊重し、さりげなく手助けしてくれていた絵師たちに、俺は今でも感謝している。
ちなみに俺には意外と才能があったようで、気が向いたときに描く俺の絵は、今では驚くほどの高値で取引されている。

そんな爺さんたちにこう言って泣かれてみろ。

「ゲイル様!ようやく念願叶が叶い感無量でございます!」

「私も、まさかこのような日がこようとは……腕を磨いてきた甲斐がございました」

逃げらんねえだろうがよ。
さすが義姉さんとエリアナだ。俺の性格を熟知してやがる。

苦い顔で奴らを見れば、貴族の美しい笑みを返された。

「懐かしいでしょう?」

「そうだな!懐かしくて懐かしくて涙がでそうだぜ」





こうして俺たちは3人並んで椅子に座り、絵師のじいちゃんたちに前後左右から描かれる羽目になった。
軽食が目の前のテーブルに用意されていた。これでも食って大人しくしてろってことか?

「……なあ、酒は?祝い酒くらいあるんだろ?」

「ダメよ。そんなもの用意したら、あんたたち酒盛りはじめちゃうじゃないの!終わってからにしなさい!」

「なあ、ゲイル。この『あんたたち』っての、俺も入ってんのか?」

「当たり前だろ。当然てめえもフィオも入ってるよ」

「前も思ったんだが、お前んとこの距離感、おかしくね?一応高位貴族だよな?」

憮然とした様子のクリスに、フィオがくすくすと笑う。

「サフィールですから。すぐに慣れますよ?みなさんとても素晴らしい方なんです」

お前クリスももう家族枠みてえだからな。悪さすっとケツぶっ叩かれるぞ?ギルド長でもおかまいなしだ。うちの女性陣、最強だからな。覚えとけよ?」

チラリとエリアナに視線をやると、エリアナがにっこりとほほ笑んだ。

「エリアナって、ゲイルのご自慢の妖精だよな?……妖精?ウチギルドのやつらよりよっぽどおっかねえぞ?
衣装を選ぶときも凄かったんだからな」

思い出したのかクリスがブルりと身を震わせる。
いや、そこまでか?何があった?



そこからが地獄だった。
3人の絵師に3方向から3枚同時に描かせておきながら、奴らはそれで満足しなかったのだ。
今度は結婚記念だと、フィオと二人で並んで立たされている。
フィオが俺の腰を抱き、完全に俺が女役だ。

「……これ、なんか違うんじゃねえか?」

不満を漏らす俺に、エリアナがしれっと言った。

「ゲイルが子を産むんでしょ。違わないじゃないの」

「立場は対等なんだぞ」

「え?ゲイルは女性側は男性と対等ではないとでもいうの?私はそんな風にあなたに教えたかしら?」

「いや、そういう意味じゃなくって……」

「ではどういう意味なの?子を産むんだからあなたが妻でしょう?それでいいじゃないの」

「……もうそれでいいです」

お先に放免となったクリスが俺たちを肴に酒を飲みながらゲラゲラ笑っている。
いいよな、お前は。他人事だもんな。

あの仔犬とできちまったら、俺がお前の絵を描いてやるからな。楽しみにしてろ!
そんときはお前に女役させてやっから!




こうして合計4時間かかって6枚の絵の下絵が完成した。
さすが師匠。なかなかの出来栄えだ。
描かれている間はきつかったが、こうしてみるといい記念だ。

「なあ、この3人のやつ、俺とクリスにもくれよ。あと2人のやつは俺とフィオにくれ。こっちには1枚ずつあればいいだろ?」

聞くとエリアナと義姉さんが「ほらみたことか」と言わんばかりの表情で「そのつもりで3枚なのよ」と笑った。


「え?私にも頂けるのですか?」

「は?俺にまで?」

驚くフィオとクリスに当然のようにこう言い返す。

「当たり前でしょ、家族なんだもの。それぞれの家に飾らなきゃ!」


あーあ。
やっぱ女性陣には敵わねえなあ!
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