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第二話
人間との距離
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再度デルと共に外に出て調べてみる。
「南西に3kmくらいの距離に人間がおおよそ500人か……、どうやら位置も人数もあまり変わっていないようだな」
そうか結構歩いたつもりだったけど3kmしか離れていないのか。結構近い気がするが、その間に森やら岩やらあって入り組んでいて真っ直ぐ進めないから遠く感じるのか。
「当たり前だけど諦めてはいないか」
「ちっ……、諦めてさっさと帰れば良いのに」
舌打ちをしながら毒づくデル。
「あ、そういえばさ。最初に遭遇していたときって、狩りでもしていたのか?」
「あれは族長は予知っていうか毎日の占いで、大きな災いがきそうなときはお告げがあるんだって、それで周囲に警戒を増やしたら見つけたってわけよ」
「ああ、なるほどそういうことが出来るのか」
「あ……」
デルは流れで余計なことを言ってしまったという顔をする。
「さてと……、こうしていてもしょうがないし一度偵察に行きたいかな」
「偵察って、元々あんたがいたところじゃない。別にいいけどさ……今すぐに行くの?」
「そうだな、時間は考えた方が良い……だいたい夜明け前がいいかな」
「そんな時間に?」
「難しいか」
「まあ、あんたがMP出してくれれば大丈夫だと思う」
「それなら幾らでも出すけど」
「分かったわよ。でもなんで夜明け前なのよ」
「人間は夜襲が怖いから、薄明るくなってくるときが一番油断するし見張りの連中も眠くなっているし他の兵士もまだ起きない。ちょうどいい時間なんだ」
「ああ、なるほどそれなら分かるわ」
「そういえばスリープみたいな魔法って使える?」
「バカにしてる? そんなの当たり前じゃない」
「そうか。じゃあ偵察ついでに少し人間達をびびらせるとしようか」
「なにをするつもりなの? でもなんだか楽しそうだから、いいわ、やってあげる」
そういってデルは横で例のバランス栄養食を食べ始めた。
「アンタも食べる?」
「そうだな。いただく」
デルは手に持っていたのを半分に割った一つを渡してくれる。
「あむぅ……、昨日も紋様族のみんなはこれを食べてたけど足りてるの?」
「僕以外は足りていると思うよ。紋様族は食にこだわりがほとんどないから」
「ああ、やっぱりそうなんだな。じゃあデルは違うのか」
昨晩デルだけは俺達一緒になって同じものを美味しそうに食べていた。
「見て分からないかな……」
「え? あー……、凄い食いしん坊ってこと? だから一番背が高いとか」
「んなわけあるか! よりにもよって女の子相手になんてこと言うんだ! バカか!!」
紋様が真っ赤に浮かび上がった。どうやら相当怒らせてしまった。
「冗談だって」
「全くもう……僕はハーフなんだよっ、人間とのね」
「え、まじか!?」
「お母さんが人間でお父さんが紋様族なの」
「ああ、なるほど……だからか」
「そういうこと、だから里で最も背が高くて紋様が薄くて食性と食欲が違うんだよ。でもどういうわけかMPは最も低いんだけどね」
改めて彼女を見る。紋様族は一番薄い状態でも顔や腕などに紋様がはっきりと出ているが、デルはぱっと見では分からないほど薄い。
「デルだけ性格や雰囲気も違うのはそういうことか」
「そう、だからおかげでこういうときは気苦労がたえないんだよ。みんな脳天気すぎるんだもの」
「そこは分かる気がする。凄く良い連中だけど、そのせいで外からの悪意には弱そうだもんな」
「そうなんだよ……って、ごめん……、なんかグチっぽいこと言っちゃったよ」
言うだけ言って後悔したみたいだった。
「でもデルがいたから、今回先手を打って荷物とかを焼いたんだろ」
「僕が考えたって分かるんだ。だっていきなり殺し合いなんてしたくないじゃない」
「あれは良い方法だと思う。あれなら兵士達は紋様族に強い恨みは持たないし、上手く時間を使わせれば兵糧不足で撤退は確実だからな」
「苦肉の策だけだったどね。もう少し僕に魔力があれば他の方法も考えられるんだけど」
「そうか? じゃああの方法でいいなら、MPを分けてやるけど」
「ば、ばかっ、冗談。あんなの二度とごめんだわ」
「そうか、悪かったよ」
「え、い、いや……、そのそこまで嫌ってわけじゃないんだけど、あ、あんな方法なんて……は、恥ずかしいじゃないか」
桜色くらいの紋様を浮かべながら目を背けるデル。
「別の方法が見つかるといいんだけどな」
「別の方法が見つかったとしても、キスよりも恥ずかしいことになる気がしてならないんだけど」
「そうかな?」
「魔力を相手に与える方法として体液にMPを乗せて粘膜で吸収させるって理にかなっているもの、だ、だから他の方法ってもうそれ以上のことしか思いつかないじゃない」
「うーん、確かにそう言われるとそうかも。でも、なんかちょっと卑猥だな」
「ば、ばか! 真面目に説明しているのに茶化すなんて最低!」
「すまん、気恥ずかしくなって茶化してしまった」
「ふんっ!」
ぐー……。ぐー……。
二人してお腹が鳴った。
「わ、悪るかったよ。やっぱり半分だけじゃ足りないか。本当に君等はこれだけで足りているのか?」
「足りない人も居ると思うけど、食糧的な事情があるのよ」
「あー……、そういうことか」
この辺りは火山の影響でとても作物を育てるに適した環境とは言えない。
「最近は火山が活発で毒ガスや蒸気が吹き出したり、建物の倒壊もあって怪我人が続出してたから労働力が足りなくなっていたしさ」
「やっぱり大変な環境だな」
「でも、アンタとセレーネさんのおかげで結構マシになると思う」
「そうなるといいな」
「ここまでしてくれたんだもの頑張れるわよ」
「そうか、だとしたらそのためにも戦争にならないようにしないとな」
「あ、うん……出来ればそうなって欲しいけど、でも出来るの?」
「そこはまあ……、頑張ってみるよ」
さてと軍隊の方は動きそうもないし、夜中までどうしているかな。
「そろそろ本気で寒くなってきたし中に戻ろうか」
「そうだね」
「南西に3kmくらいの距離に人間がおおよそ500人か……、どうやら位置も人数もあまり変わっていないようだな」
そうか結構歩いたつもりだったけど3kmしか離れていないのか。結構近い気がするが、その間に森やら岩やらあって入り組んでいて真っ直ぐ進めないから遠く感じるのか。
「当たり前だけど諦めてはいないか」
「ちっ……、諦めてさっさと帰れば良いのに」
舌打ちをしながら毒づくデル。
「あ、そういえばさ。最初に遭遇していたときって、狩りでもしていたのか?」
「あれは族長は予知っていうか毎日の占いで、大きな災いがきそうなときはお告げがあるんだって、それで周囲に警戒を増やしたら見つけたってわけよ」
「ああ、なるほどそういうことが出来るのか」
「あ……」
デルは流れで余計なことを言ってしまったという顔をする。
「さてと……、こうしていてもしょうがないし一度偵察に行きたいかな」
「偵察って、元々あんたがいたところじゃない。別にいいけどさ……今すぐに行くの?」
「そうだな、時間は考えた方が良い……だいたい夜明け前がいいかな」
「そんな時間に?」
「難しいか」
「まあ、あんたがMP出してくれれば大丈夫だと思う」
「それなら幾らでも出すけど」
「分かったわよ。でもなんで夜明け前なのよ」
「人間は夜襲が怖いから、薄明るくなってくるときが一番油断するし見張りの連中も眠くなっているし他の兵士もまだ起きない。ちょうどいい時間なんだ」
「ああ、なるほどそれなら分かるわ」
「そういえばスリープみたいな魔法って使える?」
「バカにしてる? そんなの当たり前じゃない」
「そうか。じゃあ偵察ついでに少し人間達をびびらせるとしようか」
「なにをするつもりなの? でもなんだか楽しそうだから、いいわ、やってあげる」
そういってデルは横で例のバランス栄養食を食べ始めた。
「アンタも食べる?」
「そうだな。いただく」
デルは手に持っていたのを半分に割った一つを渡してくれる。
「あむぅ……、昨日も紋様族のみんなはこれを食べてたけど足りてるの?」
「僕以外は足りていると思うよ。紋様族は食にこだわりがほとんどないから」
「ああ、やっぱりそうなんだな。じゃあデルは違うのか」
昨晩デルだけは俺達一緒になって同じものを美味しそうに食べていた。
「見て分からないかな……」
「え? あー……、凄い食いしん坊ってこと? だから一番背が高いとか」
「んなわけあるか! よりにもよって女の子相手になんてこと言うんだ! バカか!!」
紋様が真っ赤に浮かび上がった。どうやら相当怒らせてしまった。
「冗談だって」
「全くもう……僕はハーフなんだよっ、人間とのね」
「え、まじか!?」
「お母さんが人間でお父さんが紋様族なの」
「ああ、なるほど……だからか」
「そういうこと、だから里で最も背が高くて紋様が薄くて食性と食欲が違うんだよ。でもどういうわけかMPは最も低いんだけどね」
改めて彼女を見る。紋様族は一番薄い状態でも顔や腕などに紋様がはっきりと出ているが、デルはぱっと見では分からないほど薄い。
「デルだけ性格や雰囲気も違うのはそういうことか」
「そう、だからおかげでこういうときは気苦労がたえないんだよ。みんな脳天気すぎるんだもの」
「そこは分かる気がする。凄く良い連中だけど、そのせいで外からの悪意には弱そうだもんな」
「そうなんだよ……って、ごめん……、なんかグチっぽいこと言っちゃったよ」
言うだけ言って後悔したみたいだった。
「でもデルがいたから、今回先手を打って荷物とかを焼いたんだろ」
「僕が考えたって分かるんだ。だっていきなり殺し合いなんてしたくないじゃない」
「あれは良い方法だと思う。あれなら兵士達は紋様族に強い恨みは持たないし、上手く時間を使わせれば兵糧不足で撤退は確実だからな」
「苦肉の策だけだったどね。もう少し僕に魔力があれば他の方法も考えられるんだけど」
「そうか? じゃああの方法でいいなら、MPを分けてやるけど」
「ば、ばかっ、冗談。あんなの二度とごめんだわ」
「そうか、悪かったよ」
「え、い、いや……、そのそこまで嫌ってわけじゃないんだけど、あ、あんな方法なんて……は、恥ずかしいじゃないか」
桜色くらいの紋様を浮かべながら目を背けるデル。
「別の方法が見つかるといいんだけどな」
「別の方法が見つかったとしても、キスよりも恥ずかしいことになる気がしてならないんだけど」
「そうかな?」
「魔力を相手に与える方法として体液にMPを乗せて粘膜で吸収させるって理にかなっているもの、だ、だから他の方法ってもうそれ以上のことしか思いつかないじゃない」
「うーん、確かにそう言われるとそうかも。でも、なんかちょっと卑猥だな」
「ば、ばか! 真面目に説明しているのに茶化すなんて最低!」
「すまん、気恥ずかしくなって茶化してしまった」
「ふんっ!」
ぐー……。ぐー……。
二人してお腹が鳴った。
「わ、悪るかったよ。やっぱり半分だけじゃ足りないか。本当に君等はこれだけで足りているのか?」
「足りない人も居ると思うけど、食糧的な事情があるのよ」
「あー……、そういうことか」
この辺りは火山の影響でとても作物を育てるに適した環境とは言えない。
「最近は火山が活発で毒ガスや蒸気が吹き出したり、建物の倒壊もあって怪我人が続出してたから労働力が足りなくなっていたしさ」
「やっぱり大変な環境だな」
「でも、アンタとセレーネさんのおかげで結構マシになると思う」
「そうなるといいな」
「ここまでしてくれたんだもの頑張れるわよ」
「そうか、だとしたらそのためにも戦争にならないようにしないとな」
「あ、うん……出来ればそうなって欲しいけど、でも出来るの?」
「そこはまあ……、頑張ってみるよ」
さてと軍隊の方は動きそうもないし、夜中までどうしているかな。
「そろそろ本気で寒くなってきたし中に戻ろうか」
「そうだね」
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