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第三話

今度は追う側

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 早朝空が白み始める頃に目を覚ますと早速出発した。

「えー……、嘘だろ」

 相手をサーチで捉えると昨夜よりも更に進んでいた。どうやら夜の間もある程度動いたらしい。

「これは困ったな」

 まだ移動は開始してないようだが距離が距離だけに簡単には追いつけそうにない。

「うーん……」

「どうしたのよ?」

 考え込んでいるとデルが話しかけてきた。

「昨夜から考えているんだけど結局連中の目的がイマイチ分からなくてさ」

「まだ悩んでんの? どうせ強力な力を手に入れて有頂天になって、それを誇示しようと誰かに見せつけたいとかじゃないの」

「彼は弱そうだったから、それはありそうな話なんだけど」

 あの勇者……卿御洲……、けいにおんにしゅう……。けいお……しゅう? あっ、もしかして、これは『けいおす』って読むのか?

 うーわー……子供に混沌とか混乱て意味の“ケイオス”なんて名前を付けたんだ? どんな感性の親だよ。
 もしかして意味が分かっていないとかだったりして。

 でも、なーんかケイオス君って覇気がないっていうか、やる気が感じられないっていうか。もう少し違うベクトルに興味がありそうなんだよな。

「やはり村に居るべきだったか……」

「それ私と主様で魔物を相手にすることになる」

 前を歩いていたアティウラは真新しいメイド服姿で話しかけてきた。

「それも無理な話だよね」

「今でも勝ち目があるとは思えないけど」

「ふーん、言ってくれるじゃん」

 アティウラの何気ない一言に反応してデルの紋様が赤く浮かび上がる。

「あ、ごめん……」

 直ぐさま謝るが、おそらくアティウラはデルの魔法の力を信じていない。
 彼女にしてみればデルは“普通の紋様族”であり魔法が使えても初歩的なのばかりであまり強くない。そしてセレーネのことは“普通の聖職者”で“神の奇跡”が使えるとは思っていない。

 俺がここで補足しても信じてはくれないだろう。まあどうせ後々分かることだし今は黙っておこう。

「それにしても、うーん……わからん」

 結局ケイオス君の考えがいまいち分からないままだった。

「勇者様、ともかく急ぎましょう」

「そ、そうだね」

「どうやら、こちらのメイドさんにわたくし達の実力をご覧に入れないといけないようですし」

 ずっと涼しそうな顔をしていたセレーネだったがどうやらデル同様カチンときていたらしい。

「アティウラ、もう少し言い方ってのがさ……」

「生来の性分で……」

 そういうアティウラだがさして悪びれるような様子はなかった。
 言葉が短いから表現がストレートすぎるんだよな。
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