魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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幼なじみのゲーマー

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「武器屋か……」

小さな店を見てユーサが呟く。
扉の横にあるガラス窓から中が見え、いくつかの剣や槍が飾られているのが見て取れた。

「正確には武器屋兼、防具屋兼、鍛冶屋ってところかな」

リサは不敵に笑い、扉をそっと開いて中に入る。
来客を知らせるためだろう。扉の上部に取り付けられた鈴が小気味よい音を鳴らした。

「ラフクエの一番の魅力ってなんといってもNPCだと思うのよね。会話の受け答えとか、些細なところまで違和感がないの。ユーサもきっと驚くよ」

リサはそう言っていたずらが発覚する前の子供の様に笑った。
構わずユーサは店内を見回す。

なるほど。小さな店だが隅々まで掃除が行き届いていて整理もされている。

一見するとボロボロに見える店内だが机や椅子、棚に飾られた本に至るまで丁寧に使われているのがわかる。

何より飾られた刀剣類や防具の質がいい。

好みの店だ、とユーサは思った。

店の奥の方から足音が聞こえ、やがて一人の男性が顔を出す。
丸縁の眼鏡をかけた大人しそうな男性だ。

小さな店だし、店員はそう多くないだろう。雰囲気からして彼が店長か。

「いらっしゃいませ……おや、あなたはこないだの」

店長は軽く会釈して歓迎の言葉を言い、それからリサを見て笑いかける。プロ意識を感じさせるようなさわやかな営業スマイルだ。

その反応にユーサは少しばかり面食らう。

リサの口ぶりからして彼はNPCなのだろう。ここに案内してきたということは彼女が以前この店に足を運んだということはわかる。

しかし、一度来た客に対して「こないだの」などと発言するNPCを見るのは初めてだった。
今までやってきたゲームではNPCは事前に決められたセリフを言うだけ。何度店に通って常連になろうが決められたセリフを崩すことはなかった。

リサの言う通り、会話に違和感がない。高度なAIか何かが使われているのかもしれないがそれにしたって本物との違いがわからない。

俺がいない約二年の間に技術はここまで進歩したのか。

リサの思惑通りに驚かされたのは少し癪だったが、ユーサは素直に感心した。

「それで、今日はどういったご用件で?」

店長はそう言いつつ、視線はユーサの様子を伺っている。
彼の装備を買いに来た、とだいたいの予想はついているような様子だ。

「私と同じよ。ほら、森でゴブリンに襲われて……持っていた剣が折れてしまったの。私の時みたいに今装備できる武器をいくつか見繕ってくれないかしら」

リサの言葉に店長は「いいですよ」と快諾し、準備するからしばらく待っていてくれと告げて店の奥に引っ込んだ。

「おい、装備を買うつもりなんてないんだが」

店長がいなくなったところを見計らってユーサはリサに耳打ちする。
自分が今いくら持っているのかはインベントリを見ればわかるが、町の物価がわからない。

剣が折れてしまって困っているのは確かだが、むやみにお金を使う気にはならない。

「武器だけでも買いなさいよ。丸腰でしょ?」

「いや、これがある」

訝しげに尋ねるリサにユーサはインベントリから棍棒を取り出して見せる。

ゴブリンから奪った物だ。ゴブリンを倒した後で試してみると棍棒をインベントリにしまうことができた。
ラフクエでは倒したモンスターの武器を自分の物にできるらしい。

「え……ちょっと、もしかしてゴブリンを三体とも倒したの?」

リサが少し驚いた声を上げる。
ユーサがうなずくと、彼女は呆れたように笑った。

「私も挑戦はしたけど、剣が折れた時点で逃走を選択したわ。他のプレイヤーも大抵同じ。何とか倒したプレイヤーがいるっていうのは聞いたことあるけどまさか棍棒を奪ったプレイヤーがいるとは思わなかったわ」

どうやらリサはまだモンスターから武器を奪えることを知らなかったらしい。
半ば無理矢理ゴブリンを倒したユーサの行動に呆れつつ、早速手に入った新情報に感心していた。
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