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初サイドクエスト
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馬車はロトの町から隣町に向かう道中で見つかった。
途中で何体かのモンスターに襲われたが、なんということはない。ロトの町周辺のモンスターはレベルが低く、始めたばかりのプレイヤーでも安心してレベル上げができるようになっているからだ。
しかし、馬車を見つけても喜ぶことはできなかった。
「壊されている……」
順調とはいえない。道端に放置された馬車は横転し、馬も御者の姿もなかった。
車輪が外れ、載せていたであろう荷物もなくなっていた。
「盗賊に盗まれたってことか」
モンスターに襲われたなら荷物は残っているはず。御者の命が無事かはわからないが、姿がなく、馬も荷物もなければそうとしか考えられない。
シャインはロトの町の酒場で聞いた話を思い出した。サイドクエストを受ける前、ふらりと立ち寄った酒場で、店主と客が話しているのを聞いたのだ。
それによれば「最近盗賊による被害が増えている。町の衛兵が懸賞金をかけ、情報を求めているらしい」という話だった。
「まさか町で聞いた噂がこんな風に役立つなんてね」
ゲームとして出来過ぎている。だが、シャインにとっては嬉しい偶然だ。
馬車の近くには何人かの足跡があった。その足跡を追っていくと洞窟があり、シャインはそこが盗賊たちのアジトだと突き止めた。
シャインのゲーム歴はそこそこ長い。基本的にプレイするのはファンタジー色の強いRPGで、戦闘の経験もそこそこある。
しかし、だからこそ迂闊に洞窟に飛び込むような真似はしなかった。
中に何人の盗賊がいるのかもわからず、レベルがどのくらいなのかもわからない。
無理に忍び込んで危険を伴うよりもすでに得ている情報を有効活用すべきだ。
シャインはそう考え、一度ロトの町に戻った。
衛兵NPCを見つけて事情を話し、突き止めた盗賊のアジトの場所を教えた。
思惑通り、衛兵からは情報に関する報酬のお金がもらえた。さらに、盗賊を討伐するために町から衛兵の部隊が出ることになった。
シャインはその後をついていき、衛兵が洞窟内を制圧するのを待った。
掴まっただけで殺されていなかった行商人を助け出し、彼から印刷に使う魔法道具を受け取ってようやくレストのところに戻ってきたのである。
「正直、すごい時間を使いました。洞窟とこの町を往復する手間もあったけど、衛兵たちが討伐に出る準備にもそれなりの時間がかかっている。苦労して手に入れた魔法道具なんです。それで、ようやくクエストが終わると思ったんですが……」
シャインが視線を動かす。
机の上に置かれた活版印刷機のような機械が話に出て来た魔法道具なのだろう。
その机を挟むように立っていたレストがシャインの話の続きを引き継ぐ。
「残念ながら、この魔法道具は壊れています。恐らく、盗賊たちが運んでいる間に壊れたんでしょう。申し訳ありませんが、これでは報酬をお支払いすることは……」
レストは本当に申し訳なさそうに言う。シャインは今度は声を荒げることなく、ただ肩を落として見せた。
「つまり、クエストはまだ終わっていなかったってことか」
ユーサが呟く。
シャインが静かにうなずいた。
彼は苦労が水の泡になったと思って思わず声を荒げてしまったんだろう。
少し冷静になれば報酬を手にする機会がまだ失われたわけではないとすぐに気付いた。
それでも、まだ先の長そうなお使いクエストに少しうんざりしている様子ではあった。
「ねぇ、シャインさん。そのクエスト、まだ続ける気なら私たちも同行しちゃだめかな?」
そう提案したのはリサだった。
「え?」
シャインが聞き返す。
「実は私たちもそのクエスト受けに来たんです。でも、報酬の魔法が欲しいわけではなくて印刷の魔法道具が手に入ったら少しだけ使わせてほしいだけなんです」
シャインの様子を見て「押せばいける」と思ったのか、リサはぐいっと詰め寄って行く。
その様子を見ながらユーサはなぜリサがこのクエストを受けに来たのか、ようやく納得した。
途中で何体かのモンスターに襲われたが、なんということはない。ロトの町周辺のモンスターはレベルが低く、始めたばかりのプレイヤーでも安心してレベル上げができるようになっているからだ。
しかし、馬車を見つけても喜ぶことはできなかった。
「壊されている……」
順調とはいえない。道端に放置された馬車は横転し、馬も御者の姿もなかった。
車輪が外れ、載せていたであろう荷物もなくなっていた。
「盗賊に盗まれたってことか」
モンスターに襲われたなら荷物は残っているはず。御者の命が無事かはわからないが、姿がなく、馬も荷物もなければそうとしか考えられない。
シャインはロトの町の酒場で聞いた話を思い出した。サイドクエストを受ける前、ふらりと立ち寄った酒場で、店主と客が話しているのを聞いたのだ。
それによれば「最近盗賊による被害が増えている。町の衛兵が懸賞金をかけ、情報を求めているらしい」という話だった。
「まさか町で聞いた噂がこんな風に役立つなんてね」
ゲームとして出来過ぎている。だが、シャインにとっては嬉しい偶然だ。
馬車の近くには何人かの足跡があった。その足跡を追っていくと洞窟があり、シャインはそこが盗賊たちのアジトだと突き止めた。
シャインのゲーム歴はそこそこ長い。基本的にプレイするのはファンタジー色の強いRPGで、戦闘の経験もそこそこある。
しかし、だからこそ迂闊に洞窟に飛び込むような真似はしなかった。
中に何人の盗賊がいるのかもわからず、レベルがどのくらいなのかもわからない。
無理に忍び込んで危険を伴うよりもすでに得ている情報を有効活用すべきだ。
シャインはそう考え、一度ロトの町に戻った。
衛兵NPCを見つけて事情を話し、突き止めた盗賊のアジトの場所を教えた。
思惑通り、衛兵からは情報に関する報酬のお金がもらえた。さらに、盗賊を討伐するために町から衛兵の部隊が出ることになった。
シャインはその後をついていき、衛兵が洞窟内を制圧するのを待った。
掴まっただけで殺されていなかった行商人を助け出し、彼から印刷に使う魔法道具を受け取ってようやくレストのところに戻ってきたのである。
「正直、すごい時間を使いました。洞窟とこの町を往復する手間もあったけど、衛兵たちが討伐に出る準備にもそれなりの時間がかかっている。苦労して手に入れた魔法道具なんです。それで、ようやくクエストが終わると思ったんですが……」
シャインが視線を動かす。
机の上に置かれた活版印刷機のような機械が話に出て来た魔法道具なのだろう。
その机を挟むように立っていたレストがシャインの話の続きを引き継ぐ。
「残念ながら、この魔法道具は壊れています。恐らく、盗賊たちが運んでいる間に壊れたんでしょう。申し訳ありませんが、これでは報酬をお支払いすることは……」
レストは本当に申し訳なさそうに言う。シャインは今度は声を荒げることなく、ただ肩を落として見せた。
「つまり、クエストはまだ終わっていなかったってことか」
ユーサが呟く。
シャインが静かにうなずいた。
彼は苦労が水の泡になったと思って思わず声を荒げてしまったんだろう。
少し冷静になれば報酬を手にする機会がまだ失われたわけではないとすぐに気付いた。
それでも、まだ先の長そうなお使いクエストに少しうんざりしている様子ではあった。
「ねぇ、シャインさん。そのクエスト、まだ続ける気なら私たちも同行しちゃだめかな?」
そう提案したのはリサだった。
「え?」
シャインが聞き返す。
「実は私たちもそのクエスト受けに来たんです。でも、報酬の魔法が欲しいわけではなくて印刷の魔法道具が手に入ったら少しだけ使わせてほしいだけなんです」
シャインの様子を見て「押せばいける」と思ったのか、リサはぐいっと詰め寄って行く。
その様子を見ながらユーサはなぜリサがこのクエストを受けに来たのか、ようやく納得した。
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