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竜と王国
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しおりを挟む「おとしゃん、見てー」
案内された部屋に入るなり、マオは窓際まで走って行き街を眺めた。
ソーヤに連れられて私たちが来たのは王宮の一室。
普段ならば他国からの来客があった時などに使われる部屋らしい。
人間の美的感覚は私にはわからないが、リディアやレンリが息を呑みながら部屋中を見回していたので相当すごい部屋のようだ。
「夕食は大広間にご用意させてもらいます。師匠とレンリさんには隣に別室を用意しますね」
元々は私とマオの二人の予定だった。
部屋が手狭になると判断したのか、ソーヤが気を回す。
「おとしゃん、外がすごい明るいよ」
マオが目を輝かせる。
日が暮れ始め、レイテオ山ではすっぽりと闇に包み込まれる頃合いだ。
しかし、確かに街は明るかった。
建物に灯る火が窓から漏れ出ているだけではない。
街中に張り巡らされたランタンが闇を照らしている。
「今日と明日は建国祭ですから。街の外からも人が訪れて、いつもより活気がありますね」
とソーヤが言う。
その言葉にマオは興味を示した。
「お祭りってなに?」
と純粋な瞳で私に尋ねる。
子供の質問には答えてやるのが大人の責務というものだ。
教えてやれば、マオは尊敬の瞳で私を見るかもしれない。
だが……。
「お祭りってなんだ……?」
人間の文化に疎い私にはそれを説明できるだけの知識がなかった。
いや、「祭り」という言葉自体は知っている。
昔旅をした勇者もたまにその言葉を言っていた。
しかし、それが何をするものなのかまでは知らない。
私の横でリディアがため息を吐く。
「まったく、だらしないねアンタは。いいかい、マオ。お祭りっていうのは人間の行事さね。人間は集まって飲んだり食べたり大騒ぎをするんだよ」
とリディアが答える。
「なんで?」
「なんでって……そりゃ、なんでだい?」
エルフのリディアにもわからないことがあるらしい。
マオの追撃に応えかねて、彼女の視線はレンリを頼った。
「神様やご先祖様に感謝をするんです。『今年もこんなに元気に過ごせました』っていう報告と『来年も元気に過ごせますように』ってお祈りするの」
「今回のは建国祭だからな。こんなにいい国を作ってくれた勇者様にみんな感謝するのさ」
レンリとソーヤがマオに説明する。
そうか、そういう意味があるのか。
と納得している場合ではない。
マオの尊敬の眼差しが二人に注がれてしまった。
おのれ、二人とも。
マオのご機嫌をとるとは……。
「もっと近くで見たい!」
目を輝かせたマオがそう言い出すのは誰しもが予想できたことだ。
ソーヤはクスッと笑い
「明日な。ちゃんと街を見る時間も作ってある」
と言ってマオの頭を撫でた。
♢
夕食を済ませた後、私はソーヤの案内でユーマ王子の私室に向かっていた。
「ぜひ話がしたい」という彼の願いに応えたのだ。
わたしの隣にはリディアがいる。
「アンタが王子相手にまともな態度を取れるはずがない」
と失礼なことを言ってついて来たのだ。
マオは部屋で休み、レンリがそれを見てくれている。
正直、心配はある。
マオの側を離れてもいいのか、と。
ソーヤが手配してくれた衛兵が部屋の近くを見回ってくれているし、危険はないようにも思うが、私に反感を持つタクマ王子がいるからな……。
レンリのことはさすがに信頼しているが、もしも襲われたら彼女にどうにかできるのか。
そう思っていたのだが、
「大丈夫です。マオちゃんを守るためにお店から色々と魔法道具を持ち出して来ましたから」
と彼女は張り切っていた。
ナルコスの街で起こった事件を踏まえ、今度は危険な目に合わせないようにと準備をしてきたらしい。
その彼女の張り切り具合と、
「少しなら大丈夫さ」
というリディアの言葉を信じて、私はマオを部屋に残して来たのだった。
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