妖精猫は竜の背中で爪を研ぐ

六山葵

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竜と王国

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トーマ王が私を王国に呼んだのは建国祭を見せるためらしい。

「ソーヤからイグ殿が勇者様と共に魔王を倒したと聞きまして。それならば勇者様が作ったこの国の今の様子を見ていただこうかと」

そんなトーマ王の言葉にいち早く反応したのはリディアだった。

「それなら、私が呼ばれていないのはおかしいね」

トーマ王にそんな嫌味を言う。
途端に彼は少し慌てて、

「リディア様やドワーフのエルケン様は所在がはっきりとしていないので……まさか一緒に来られるとは思っていませんでした」

と取り繕った。

「ふん、赤ん坊の時おしめを変えてやった恩を忘れたのかと思ったが、そういえば誰にも住むところを伝えていなかった。それなら仕方ないね」

どうやらトーマ王とリディアは知らぬ中ではないらしい。
彼女は私と違い、度々王国に足を運んでいるらしいので繋がりが途絶えていないのだろう。

リディアはからかっただけのようだったが、トーマ王は本気で胸を撫で下ろしたようだった。

「ただし」

とリディアが付け加える。

トーマ王の隣に立っていソーマ王子の後ろでソーヤが方をビクッと震わせる。

「お前は別だよソーヤ。お前なら私が森にいたことも気付いていたはずだ。何故会いに来なかったんだ」

どうやらリディアは彼とも知り合いのようだ。
ソーヤの怯え切った様子を見ると強い主従の関係にも似た何かがあるようだが……。

「こいつは数少ない弟子のうちの一人さね。魔法の才能を見込んで色々教えてやったというのに、まさかこんな不義理な子になっちまうとはね……」

リディアが大袈裟に言う。

なんと、リディアに弟子がいたとは……。
これで彼女が急についてきた理由がわかった。

私に魔法を教えているのがソーヤだと知り、様子を見にきたのだろう。

「あれー、おかしいな……師匠がいたなんて気付かなかったや」

ソーヤが言い訳をする。
私でも嘘だとわかるほどの大根芝居だ。

「それが本当ならたるんでるってことで、また修行をつけてやろうかね」

リディアの言葉にソーヤはあっさりと負けを認めた。

「申し訳ありませんでした。いるのはわかっていましたが、会ったら色々言われるだろうし小言が嫌なので避けてました」

彼はそう言って地面に頭を伏せる。
わかる。わかるぞソーヤ。

このエルフ婆の小言の辛さはよくわかる。

たったそれだけのやり取りでソーヤがリディアに大分しごかれていたのがわかる。

「最初からそう言いな、このバカが」

普通なら「小言」の時点でさらに説教が待っていそうだが、リディアはそう言ったきりソーヤを叱ることはなかった。

どうやら言い訳や嘘といった不義理な部分を正したいだけだったらしい。

リディアの説教が終わるとソーヤはこっそりと私に近づき、

「師匠が来るなら事前に教えてくださいよ」

と耳打ちした。

関係を知らなかったとはいえ本当に申し訳なく思ったので、

「スマン」

と返す。

「おとしゃん、お腹減った」

その場の絶妙な空気を変えてくれたのはマオだった。

そう言って私の足にしがみつく。

長時間の長話は子供には退屈だろうし、日も大分傾きかけている。

確かにいつもなら夕食の準備を始める時間だった。

私がトーマ王の方に視線を向けると、彼は察してくれたのか

「では皆さんを王宮に」

と言ってくれた。

ドラゴンの姿のままでは不便なので人間の姿に変身し、それからソーヤに案内されて王宮に入る。

「イグさん。後でソーマ王子が挨拶をしたいと……。それから、念の為気をつけておいてください」

彼がタクマ王子を横目に見ながらそう言う。

私は人間同士の厄介な争いごとに巻き込まれそうだと思いながら、

「わかった」

と返事をするのだった。
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