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番外編
No.1
しおりを挟む「・・・みーのばか!」
そう言って走り出した空。
待って!
違うよ!
空ちゃん!
お願い!走らないで!
しかしその心の声は空には届かない。
「・・・空!」
はっとそこで目が覚めた。
なんだ・・・夢か。
過去の記憶はなかなか消えないらしい。
あの日の空の悲しそうな顔は今でも鮮明に覚えてる。
額には汗がじわりと滲んでいる。
「・・・美月?」
隣りで寝ていた空が上半身を起こして私を見ている。
「空・・・。」
私が名前を呼ぶと、空は心配そうに手を伸ばし私の頬を撫でた。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・・・・じゃない。」
そう言って空の首に手を回し抱きつく。
「み・・・。」
「ちょっとだけこのままでいて。」
空の温もりを感じて、彼の存在がここにあることを確かめる。
そんな私を空は受け入れてくれて、私をしっかりと抱きしめてくれた。
あの時はひどく後悔した。
空を傷つけたって小さかった私でも解ったから。
「ごめんね。」
あの時、傷つけて。
「何、急に。」
そう言って耳元でくすっと笑う空。
「昔から私、空を傷つけてばかりだったなって思って。」
「そう?気のせいじゃない?」
私の言葉を空は気にしてませんって感じで軽く流す。
空は優しい。
私が彼女に昇格してから特に。
何でも私を優先させようとする。
空の新しいマネージャーも呆れるほどに。
「空はもっと我がままになっていいんだよ。」
そう言って体を離し、空を見詰めた。
そんな私に空は微笑みを返す。
「俺と付き合ってくれてることが十分我がままだよ。」
「そんなこと・・・。」
「ずっと考えてた。美月がもし俺と付き合うんじゃなくて一般人と付き合ったら、きっと今よりも我慢することが少ないんだろうなって。もっと自由に出掛けたり、外で抱きしめあったり出来るんだろうなって。」
「空・・・。」
「でも、それがわかってても俺は美月を手放したくないんだ。これって我がまま以外の何物でもないだろ?」
空はそう言って私の肩にコツっと頭を乗せた。
空がそんな事考えてたなんて・・・
そんな必要ないのに。
だってここにいるのは私が決めた事で、私の意志だもの。
決して空に言われたからでもない。
でも空はきっとこれからもそんな風に考えてしまうんだろうな。
どうしたらその気持ちを軽くしてあげられるだろう・・・
その時、ふいに閃いた。
「ねぇ、空。10年前の言葉を撤回させて。」
「10年前?」
「そう。空に言ったでしょ?最後まで何も1番になれなかったねって。」
そう言うと、空は思い出したのか、
「ああ・・・あの時か。」
そう呟くように言って少し悲しげな表情を見せた。
「でもそれは間違い。だって空は私の一番大事な人で、一番そばにいて欲しい人だもの。あと、一番甘えたい人だし、一番甘えられたい人。それに・・・。」
「美月。」
言葉を綴っていると空がギュッと抱きしめてきた。
私もそんな空の背中に手を回す。
「まだまだいっぱいあるよ。全部言ってたら朝になっちゃうかも。聞きたい?」
笑いながらそう尋ねてみるけど、空からは全く返事がなくて。
「空?」
少し不安になって空の顔を見ようと抱きしめてる空から離れようとした。
けれど、空は離そうとはしなかった。
そして聞こえてきた言葉が、
「ごめん。」
「え?」
急に謝られても困るんだけど。
すると、
「俺、きっと今、顔がスゴイことになってる。だから顔見せたくない。」
「何それ。」
「美月が・・・あまりにも嬉しい事言ってくれるから。だから顔が緩みまくってる。」
「はは、それ見たい。空の緩んだ顔。」
「無理。」
そう言うとさらに抱きしめる強さが増した。
「く、苦しいよ、空。」
「我慢して。」
「そんな無茶な・・・。」
そう言いつつ、私も自然と顔が緩む。
「ねぇ、空。」
「なに?」
抱きしめられたままで話しかけると、空は返事だけはちゃんとしてくる。
「『ごほうび』は何がいい?」
「え?」
その言葉でようやく空が私との間に空間を作ってくれた。
「たくさん1番があるから、いくつでも言って。私に出来る事なら何でもしちゃう。」
「美月・・・。」
空はじっと私を見つめた後、暫く考える仕草をした。
そして、
「いくつもいらない、たった一つでいい。だから無謀なものでもいい?」
「無謀って、それじゃあ私には無理でしょ。」
「ううん。美月にしか出来ない。」
「私だけ?」
「そう。」
空は真剣な眼差しで私を見つめ、そしてゆっくりと口を開いた。
「美月の未来が欲しい。」
一瞬、何を言っているのかわからなくて。
でも彼の眼差しを見つめるうちに一つの答えが浮かび上がってきた。
「それって・・・。」
もしかして・・・・・・プロポーズ?
私の考えを読むかのように空はすっと息を吸うと、
「俺は美月と結婚したい。」
はっきりとそう言った。
私はただ空の気持ちを軽くしてあげたくて。
ちょっとした過去の償いのつもりで。
話をしたつもりが。
・
・
・
プロポーズされた。
あまりにいきなり過ぎて。
頭が真っ白で。
返事をすることさえ忘れていて。
「ダメかな。」
不安そうに顔を歪めて空が訊いてきて、ようやく我に返れた。
慌てて首を振り、
「ダメじゃない!ただいきなりで驚いてたの。」
「じゃあ・・・。」
空の表情がじわりと明るくなってきてるのがわかった。
そんな空に私からキスをプレゼントして、
「その『ごほうび』、ぜひ進呈したいと思います。」
そう言ってにっこりと笑顔も添えた。
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