21 / 21
エピローグ
しおりを挟む
【大陸一の賢者】は地下秘密基地の生活雑貨を地上に運び出しながら、落下した天空城の欠片の一つに視線をやった。
正確には欠片と、その周囲にできたクレーター。地下秘密基地は【地の勇者】ドリスの全身全霊の強化が込められているので、仮に直撃しても少し揺れる程度で済んだだろうが、食器棚が倒れていたら大事だ。
宇宙空間から隕石を操縦し、実質的な止めを刺した人工生命の末裔は、ドリスより一足先に戻ってくると、挨拶だけしてそのまま帰っていった。「ようやく創造の恩が返せた」とはドリスに言うべきこととも思ったが、彼女への挨拶は空中で済ませてきたらしい。
世代を重ね、流暢に語り、魔法も操るようになった人工生命に、賢者はドリスには伝えることもなく没にした、一つの魔術を教えた。流星魔術【流星乗り】。宇宙空間で捕まえた隕石を自ら操作する、人間には実現不可能な魔法だ。ローンチリング状に創造したゴーレム式レールガンによるマスドライバーで宇宙に飛ばされた人工生命は、強化された重力で正確に誘導され、目標を見事に的中した。
開ききっている瞼を、意識して瞬かせる。
「良かった」
実の所、単に「風の四天王を殺す」というだけであれば、賢者と会った初日のドリスでも、簡単にできることだった。
分厚い石の壁で城ごと六方を囲って、そのまま内部を石で埋め尽くせば圧殺できる。意思の中にいる、というのは少し違う気もするが。
何週間もかけて地属性魔法の応用を模索する必要も、ましてや、その全てを結集して最終決戦を行う必要も、全くなかった。
圧倒的な力があれば、属性相性や小細工なんて意味をなさない。そして、ドリスには当たり前のように、その力がある。
「最高に馬鹿みたいなジョークだった」
くだらない縛りをつけて、馬鹿みたいな手段で、それでも、当たり前に、殺す。
それくらい、ほんの些細なこととして、片手間みたいに死なせたい。
尊厳死を迎えられなかった人がいる。
尊厳死は無理でも、怨恨殺人ならまだ救いがあった。
怨恨殺人が無理なら、快楽殺人であってもまだマシだった。
取るに足らないものとして、魔族は人を殺す。
取るに足らないものとして殺されるより、もっと酷い死に方が、馬鹿げたジョークとして殺されることだろう。
四天王相手にそれができる人間だと、ドリスと初めて会った日の賢者は見出した。
「やっと終わった……やっと、進める」
ばたばたと、回転翼が立てる音が近づいてくる。
ゆっくり降下してくるツチノコプターに手を振りながら、賢者は今後の、ドリスと別れてからの予定を練り始めた。
正確には欠片と、その周囲にできたクレーター。地下秘密基地は【地の勇者】ドリスの全身全霊の強化が込められているので、仮に直撃しても少し揺れる程度で済んだだろうが、食器棚が倒れていたら大事だ。
宇宙空間から隕石を操縦し、実質的な止めを刺した人工生命の末裔は、ドリスより一足先に戻ってくると、挨拶だけしてそのまま帰っていった。「ようやく創造の恩が返せた」とはドリスに言うべきこととも思ったが、彼女への挨拶は空中で済ませてきたらしい。
世代を重ね、流暢に語り、魔法も操るようになった人工生命に、賢者はドリスには伝えることもなく没にした、一つの魔術を教えた。流星魔術【流星乗り】。宇宙空間で捕まえた隕石を自ら操作する、人間には実現不可能な魔法だ。ローンチリング状に創造したゴーレム式レールガンによるマスドライバーで宇宙に飛ばされた人工生命は、強化された重力で正確に誘導され、目標を見事に的中した。
開ききっている瞼を、意識して瞬かせる。
「良かった」
実の所、単に「風の四天王を殺す」というだけであれば、賢者と会った初日のドリスでも、簡単にできることだった。
分厚い石の壁で城ごと六方を囲って、そのまま内部を石で埋め尽くせば圧殺できる。意思の中にいる、というのは少し違う気もするが。
何週間もかけて地属性魔法の応用を模索する必要も、ましてや、その全てを結集して最終決戦を行う必要も、全くなかった。
圧倒的な力があれば、属性相性や小細工なんて意味をなさない。そして、ドリスには当たり前のように、その力がある。
「最高に馬鹿みたいなジョークだった」
くだらない縛りをつけて、馬鹿みたいな手段で、それでも、当たり前に、殺す。
それくらい、ほんの些細なこととして、片手間みたいに死なせたい。
尊厳死を迎えられなかった人がいる。
尊厳死は無理でも、怨恨殺人ならまだ救いがあった。
怨恨殺人が無理なら、快楽殺人であってもまだマシだった。
取るに足らないものとして、魔族は人を殺す。
取るに足らないものとして殺されるより、もっと酷い死に方が、馬鹿げたジョークとして殺されることだろう。
四天王相手にそれができる人間だと、ドリスと初めて会った日の賢者は見出した。
「やっと終わった……やっと、進める」
ばたばたと、回転翼が立てる音が近づいてくる。
ゆっくり降下してくるツチノコプターに手を振りながら、賢者は今後の、ドリスと別れてからの予定を練り始めた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
おもしろい!
お気に入りに登録しました~