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第6章
ファーザーズ・クライ-2
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清々しく美しい一対の瞳。
目を覚ます瞬間の、無防備なアクアの脳を襲った強烈なイメージ。
ニナの瞳だ。
ダメだ。
やっぱりダメ。
秋歩のお腹の子を見捨てるわけには行かない。
エリンが、ニナがきっと許さない……。
だが、凛也とは別れたい。どうしたらいいのだろう。
ベッドから起き上がり、顔を洗った。
て思考がはっきりしてくると、アクアはまず昨夜の記事を削除した。
内容が『人魚姫の奇跡』の趣旨にそぐわないと思ったし、何より気恥ずかしかった。
キッチンへ降りて行く。
日曜日のため、今日はアクアが朝食を作らねばならない。
サンドイッチはどうだろう。アクアは戸棚の食パンを確認する。
枚数が足りないか。
いや、大丈夫。
春菜と優花はいないのだから。
すぐさま義母がキッチンに現れたと思うと、愚痴り始めた。
「やれやれ、凛也は急に仕事なんだって。緊急だからって、朝早く飛び出て行ったよ」
アクアはキョトンとなった。昨夜は別の部屋に寝たせいもあり、凛也が起きて出て行ったのに、全く気づかなかった。
「それも、夜遅くまで掛かるから、夕飯も要らないって」
アクアは少し引っ掛かった。
が、日曜日でも凛也の出勤は珍しくないので、あまり気に留めなかった。
それよりも今日一日をどう使おうか。
凛也と顔を合わせたくないので、もともと無理にでも外出するつもりだった。
そうだ、迅に会えないだろうか。
「おはよう」とメールを打ってみる。
ところが「体調が優れない」と返信があったため、迅を誘うのは諦めた。
ミントにも連絡してみた。
だが、間の悪いことに、午前中は町内のクリーン運動に参加しなくてはならず、午後は桜を連れて演劇を見に行く予定との返信だった。
結局、アクアは自宅で部屋を掃除したり、ネットを見たりと、のんびり過ごした。
凛也が帰ってきたのは、夜十時過ぎだった。
いくらなんでも休日に十時の帰宅など、今までなかったと思う。
ひどく疲れた顔をした凛也は、帰るなり風呂に入ると、すぐに就寝した。
アクアは、やはり隣の部屋で眠る。
結局この日、凛也と言葉を交わしたのは、ほんの二言、三言だけだった。
月曜日の朝食時、凛也との会話は皆無だった。
凛也はひどく落ち込んでいるようにも、疲れているようにも見えた。
さすがにアクアも不安になってきた。
仕事の疲れだけのせいだろうか。
アクアが隣の部屋で寝たのがいけなかったのか。
避けられている雰囲気に勘づいたのか。
アクアは急に凛也を気の毒に思うようになり、冷たくした仕打ちを後悔し始めた。
凛也に何か言葉を掛けてやりたかった。
でも、何を言えばいいのか、何も思いつかなかった。
結局、凛也は幽霊のように静かにキッチンを出ていき、そのままアクアの気づかぬうちに、出勤して行った。
目を覚ます瞬間の、無防備なアクアの脳を襲った強烈なイメージ。
ニナの瞳だ。
ダメだ。
やっぱりダメ。
秋歩のお腹の子を見捨てるわけには行かない。
エリンが、ニナがきっと許さない……。
だが、凛也とは別れたい。どうしたらいいのだろう。
ベッドから起き上がり、顔を洗った。
て思考がはっきりしてくると、アクアはまず昨夜の記事を削除した。
内容が『人魚姫の奇跡』の趣旨にそぐわないと思ったし、何より気恥ずかしかった。
キッチンへ降りて行く。
日曜日のため、今日はアクアが朝食を作らねばならない。
サンドイッチはどうだろう。アクアは戸棚の食パンを確認する。
枚数が足りないか。
いや、大丈夫。
春菜と優花はいないのだから。
すぐさま義母がキッチンに現れたと思うと、愚痴り始めた。
「やれやれ、凛也は急に仕事なんだって。緊急だからって、朝早く飛び出て行ったよ」
アクアはキョトンとなった。昨夜は別の部屋に寝たせいもあり、凛也が起きて出て行ったのに、全く気づかなかった。
「それも、夜遅くまで掛かるから、夕飯も要らないって」
アクアは少し引っ掛かった。
が、日曜日でも凛也の出勤は珍しくないので、あまり気に留めなかった。
それよりも今日一日をどう使おうか。
凛也と顔を合わせたくないので、もともと無理にでも外出するつもりだった。
そうだ、迅に会えないだろうか。
「おはよう」とメールを打ってみる。
ところが「体調が優れない」と返信があったため、迅を誘うのは諦めた。
ミントにも連絡してみた。
だが、間の悪いことに、午前中は町内のクリーン運動に参加しなくてはならず、午後は桜を連れて演劇を見に行く予定との返信だった。
結局、アクアは自宅で部屋を掃除したり、ネットを見たりと、のんびり過ごした。
凛也が帰ってきたのは、夜十時過ぎだった。
いくらなんでも休日に十時の帰宅など、今までなかったと思う。
ひどく疲れた顔をした凛也は、帰るなり風呂に入ると、すぐに就寝した。
アクアは、やはり隣の部屋で眠る。
結局この日、凛也と言葉を交わしたのは、ほんの二言、三言だけだった。
月曜日の朝食時、凛也との会話は皆無だった。
凛也はひどく落ち込んでいるようにも、疲れているようにも見えた。
さすがにアクアも不安になってきた。
仕事の疲れだけのせいだろうか。
アクアが隣の部屋で寝たのがいけなかったのか。
避けられている雰囲気に勘づいたのか。
アクアは急に凛也を気の毒に思うようになり、冷たくした仕打ちを後悔し始めた。
凛也に何か言葉を掛けてやりたかった。
でも、何を言えばいいのか、何も思いつかなかった。
結局、凛也は幽霊のように静かにキッチンを出ていき、そのままアクアの気づかぬうちに、出勤して行った。
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