ダンジョンクリエイター~魔王に転生したけど、興味ないので迷宮経営する~

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第1章

番外編 異世界別離のロストマン

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 皆様いつもご愛読ありがとうございます。
 今回番外編となりましたのは、続きを書こうと新しい取り組みをしていたら、全然別物となってしまった為です。
 消すのも、もったいない為、公開しました。

 賛否両論出そうな作品となりましたので、少し読者の皆様のご意見も聞きたいと思います。
 つきましては、最後にアンケートもございますので、宜しければお付き合いお願い致します。
 それでは長くなりましたが、以下より本文となります。お楽しみいただければ幸いです。


────────────────────


 これは、創一の転生した世界とは異なる時を進む別世界。
 いわゆる、平行世界の物語。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『貴方には――』

『――命を賭してでも助けたい人は居ますか?』

 ▼△▼△▼△▼△▼△

 いらっしゃいませ。
 今宵のお客様は貴方で最後。
 さぁ。本日も迷宮をお楽しみ下さい。

 心――――

 ――――逝くまで。











「う……ここは?」

 一人の少年が目を覚ます。
 少年は辺りを見渡す。
 だが、その瞳には何も映らない。

 比喩ではなく、本当に何も映らないのだ。
 前も。後も。左も。右も。上も。下も。

 全ては闇に包まれていた。
 少年は恐怖した。
 それはそうだろう。
 今自分が、天を仰いでいるのか、地に附いているのかすら定かではない。
 落ちているのか。浮いているのか。

 生きているのかさえも。

 虚無と無明の闇に揺蕩たゆたう恐怖。
 そう、恐怖という感覚のみが、ここを訪れる者が感じる唯一確かな感覚のはずであった。




『普通ならば』





「セシル! セシル! 君は無事なのか⁉ 無事でいてくれッ――セシルゥ!」

 そう。

 少年は確かに恐怖していた――
 しかし、それはここを訪れた有象無象の亡者共が示す恐怖。
 それとはあきらかにベクトルが異なっていた。

 この虚無の闇に唯一熱を帯びる少年の声に、焦燥と不安が折り混ざっている。
 それは、自分がこのまま虚無の彼方へと溶け込んで消えていくことへのものではない。
 少年に確固として残っていた熱――

 ――愛する者への想いと憂慮ゆうりょが、それを失うことへの途方もない恐怖へ転じている。
 少年にとって、それこそが真の恐怖だった。

 黒すら溶けて消えゆく漆黒の闇。
 それをまるで歯牙にもかけず、少年は自らが滅んでいくことよりもさらなる恐怖が存在することを示したのだ。

『面白い――』

 それでこそ、これでこそ、だからこそ、彼は選ばれたのだ。




 今宵の遊戯に。




 火薬に火がついたかの様な、大きな破裂音。
 同時に強烈で、痛烈な光が闇を飲み込む。

「爆発⁉」

 少年は身構える。

 否。

 光の始まりの場所には男が立っていた。

 おどけた姿。
 カラフルな服。
 目元には、涙と怒りを表す化粧を施し。

 しかし。

 口には何よりも印象に残る、三日月の様な笑みを浮かべて。

 先程の光と音は爆発では無い。

 脚光スポットライトが灯る音。
 そう。
 戯曲の始まりを告げるモノ。

【ようこそいらっしゃいました。私、案内人の『ロスト』と申します】

 道化師は、戯ける様に、されど、華麗に礼をした。
 その声は口からでは無く、この場所全体から響き渡る様な声だった。

「案内人……?」

 少年は未だ状況が理解出来ていない様子。

【そう。今宵、迷い込んだ方を導く案内人。ここ、『遊戯の迷宮ロストワールド』の!】

 先程と同様の破裂音が連続し、周囲に拡がる白。
 それまで、暗闇だったと思えない程、辺りは目が眩む程の光に包まれた。

「っ――!? セシル!」

 少年が光に慣れた時、目に飛び込んだのは愛する少女の姿。
 懸命に名前を呼ぶが、彼女には少年の声は届いていない様だ。
 そしてまた、彼女の声も少年には届かない。

 少女は硝子の向こう側に居た。

 少年の周りは真っ白な壁に囲まれている。
 正面には、巨大な額縁で縁取られた様な硝子の壁があった。
 少年と少女は硝子の壁によって別たれたのだ。

【さて、ここには一人の可憐な少女が囚われて居ます。そして、彼女の上には死を与える、死神の鎌――】

 道化師の声に、少年は弾かれる様に少女の上を見る。
 そこには縄が上部に結びつけられた、大きな鉄の塊がぶら下がっていた。

「セシルに! セシルをどうするつもりだ!?」

 少年の声が聞こえないかの様に、道化師は続ける。

【嗚呼。可憐なる少女はこのまま、死神の手によって、命を刈り取られてしまうのか!】

 道化師は大袈裟な程、大きな動作で舞う。

【いいえ! 彼女は囚われの姫! そう! 物語では、必ず囚われの姫を救う騎士が現れるのです!】

 道化師は踊る様に、少年の前に移動した。

「セシルは! 彼女は助けられるのか!?」

【そう! 彼女を救えるのは貴方なのです! さぁ! 小さな騎士よ。どうしますか?】

「早く! セシルを! 彼女を救うにはどうすればいいのか教えろ!」

 少年は、道化師の胸倉を掴み、血走った眼を真っ直ぐと向ける。
 向いた眼は、剥かれた牙で、無機質な男に、殺意を向ける。

【おー、怖い】

 道化師は風船が割れる様な音と煙に包まれた。
 次の瞬間、道化師は少年の背後にいた。

【そう慌てないで下さいよ。先程も申し上げましたが、私は案内人です。あくまで、悪魔で、厭くまで、飽く迄、案内をするまででございます】

 道化師は、怒気ほとばしる少年とは対照的に、飄々とした態度を崩さない。

【それでは、案内人として、責務を果たさせて頂きます】

 道化師がパチンッと指を鳴らすと、少年の右に縄が現れた。
 見るとその縄は少女の居る硝子の右。
 真上に伸びた先にある滑車を経由して、額縁の右上部に小さく空いた穴に吸い込まれている。

 また、道化師が指を鳴らす音が響く。
 少年の左の地面には、丁度縄を繋げる程の金属輪が白い床を繫ぎ止めるように現れた。

 縄と金属輪、二つを結ぶ距離は直線距離で10mという所だ。

【さて、小さな騎士よ。今現れた物は、さながら釈迦の蜘蛛の糸。正解出来れば、貴方も、彼女も助かる事が出来る――】

 道化師は、大きく腕を広げ、左右に現れた物を指差す。

【さぁ――小さな騎士よ。どうしますか?】

「やるに決まってるだろう! 彼女は――セシルは僕が救う!」

『面白い――』

【畏まりました! それでは騎士よ! ルールをご案内しましょう!】

 道化師が愉快そうに笑みを浮かべながら、そう言った。
 その瞬間、縄がある右側から金属輪のある左側まで炎の道が作られた。

 更に道化師は続ける。

【ここに姿を見せた、縄と金属輪。こちらを正しく使用することが出来れば、先程も申し上げた通り、お二人共助かる事が出来ます。しかし――】

 道化師は口を三日月に歪め、嗤う。

【誤れば、二人共死神に手を引かれ、遊戯の迷宮から、死という出口を通り、出て行かれることとなりましょうーー】

 少年は一瞬強張った顔を見せ、唾を飲み込んだ。
 その頬を炎の熱により出来たものとは異なる
、冷えた汗が伝う。

【しかし、ここで貴方が彼女を諦めれば、貴方の命⚫︎⚫︎は助けましょう】

 少年がそんな事が出来ない事を知りながら、道化師は言う。

「バカを言うな! 僕は彼女を救う!」

 少年は迷わずそう怒鳴る。
 そして少し考え、道化師に問う。

「それでルールは終わりなのか?」

【はい。シンプルなルールでしょう? 一つヒントを差し上げますと、私の言動に答えがありますよ】

 道化師は、唇に指先を当てて二マリと笑った。

 少年は改めて考える様に顎に手を当てている。
 そして顔を上げた。

「一つ聞いてもいいか?」

【はい。答えられる範囲であればお答え致しますよ?】

「この縄と金属輪を調べても良いのか?」

【えぇ、構いません。但し、気をつけてくださいね。それらは、この遊戯に於いて重要なものです。誤ればそこで、ゲームオーバーとなるかもしれませんから……】

 そんな事を言われれば、下手に触る事など出来なくなる。
 少年は、まず縄に近付くが、手を触れずにじっくりと観察する。

 (縄はセシルのいる所に繋がっている様に見える。位置的にも、鉄の塊に結び付けられているんじゃないだろうか……触ると危険な可能性がある……)

 少年は炎の道を熱波を避けて、迂回する。
 左の地面から生えた金属輪を同じ様に、じっくりと観察する。

 (こっちは何だ? 単純に地面に埋まってる様に見える――ん? 金属輪の周りの地面に……これは?)

 金属輪の周りの床は、他と違い、小さな筋が付いている。
 まるで、ここだけ動くかの様に。

 (もしかして……この金属輪の周りは動くのか?)

 少年は、少し考えた。
 この金属輪は少女のいる所に直接繋がっている様には見えない。
 ならば、縄に比べると直接的な危険はない様に見える。

 おそるおそる金属輪を下に押してみる。
 動かない。
 次に、金属輪を引っ張ってみる。
 全力で引っ張っても金属輪の周りの床に変化はない。

 (重い! ただ、押した時に比べて、上には動く気配がある…….単純に引く力が足りないだけ――)

 少年はハッとして、縄を見る。

 縄が仮に少女の上にある鉄に繋がっていたとして、重さは相当だろう。
 ただ、ゲームというのであれば、縄を少年が掴んで支えられない様な構造にはしていない筈だと考える。

 (それなら……あの縄をこの金属輪に結び付けて、僕の力も加えれば――動くんじゃないか? そうしたら、何かスイッチが入って、彼女が助かる……そういうことか?)

 少年は、今揃えられる情報で、他に可能性がないか考える。
 しかし、他に有力なものは思い浮かばない。

 (あの道化師は、言動にヒントがあると言った。縄と金属輪を使う。そして、その間には炎で作られた道――つまりは、僕が炎に焼かれながらも縄を手離さずに、彼女を救う為……この金属輪に縄を結べって事だろ)

 少年は意を決した様に、縄を掴む。

【おや。答えは見つけられましたか?】

 道化師は、待ち飽きた様に欠伸をしながら少年に告げる。

「あぁ。お前の悪趣味に付き合うのは癪だけど、僕は彼女を救ってやる!」

 道化師は、またニヤリと笑い、大きく口を裂いて叫ぶ。

【さぁ! 騎士よ。貴方の愛が本物ならば、彼女を救ってみせよ!】

 少年はそれを合図に縄を掴む手に力を入れた。
 その瞬間、縄が重い物を下げたかの様に重くなる。
 少年の体は重みにガクンと揺れるが、精一杯の力で堪える。

 そして少年は、体勢を整え――
 第一歩を踏み出した。

 ジュウウウという、音と共に革靴の焼ける匂いが立ち込める。

「ああああああああ!」

 少年が、身を焼かれる熱さから叫ぶ。
 しかし、縄を持つ力は緩まない。それどころか、より一層力を込めて、縄を掴む。

 (あぁ、セシル。そんなに泣かないでおくれ。僕なら大丈夫だよ。君の為なら、こんな熱さなんて平気さ)

 少女の泣き顔に笑顔で応える少年。
 少女は泣きながらかぶりを振って、硝子を叩く。
 少女が何かを叫んでいる様だが、やはり声は聞こえない。

 少年は、前を向き直す。
 靴や皮膚、髪が焼け、焦げた匂いがする。
 それでも少年は歩むのをやめない。

 一歩、また一歩と。
 金属輪へと近づいていく。

 ◆◇◆◇◆◇

 そして……辿り着いた。
 彼女を救う、その天使の輪へと。

 少年は少女を見る。
 尚も涙を流し、硝子を力一杯叩いている。
 その手はいつの間にか血が流れ、硝子には少女の手の大きさの、赤い手形が付いている。

 (ダメだよ、セシル。君の手はとても綺麗なのに、傷がついてしまう。ここを出たらきちんと手当をしないとね)

 少年は気づいていない、明らかに自らの方が重度の火傷を負っている事に。
 少年は、もはや火傷の痛みなど感じていない。
 それほどに彼女への愛が――
 狂おしいほどに愛が強かったのだ。

 少年は、朦朧とする意識の中、金属輪に縄を結びつける。
 その手は縄の重さで擦り切れ、血が流れている。

 金属輪は縄の重さだけでは動かない。
 少年は最後の力を込め、縄を引く。
 ズズッという音を立て、金属輪の周りの床が上に動き始めた。
 いける――少年はそう確信して、力を込める。

「うぐ――あああああああああああ!!」

 少年が吼えながら力を込めた。
 床は抜けた。

 カチッ

 何かスイッチが入る様なそんな音が聞こえた。
 少年は慌てて、少女を見る。
 大きな音を立て、少女は――












 潰れた。
 鉄の塊の下敷きとなった。

「はぇ?」

 少年は何が起きたか分からなかった。
 愛しい少女を救った筈であった。
 この困難を超えた時、少女のいつもの笑顔が見れると思っていた。

 少年は、割れる様な声で慟哭した。
 そして血の涙を流しながら、炎に包まれた。

 ◇◆◇◆◇ 少女side ◆◇◆◇◆

「ハロルド! ハロルド! やめてハロルド!」

 少女は目の前で、縄を引き、炎の道を歩く少年に伝わる様に声をあげる。
 そう、自分を殺そうとしている少年に向けて。

 ――少女が目を覚ました時、上には不安定に揺れる鉄の塊があった。
 目の前には硝子の壁。
 その先に、愛しい筈の少年と不気味な雰囲気を持つ道化師がいた。

 道化師が指を鳴らした瞬間、硝子の向こう。
 少女から見て、左には縄が、右には金属輪が現れた。

 縄は、硝子の壁、上部に繋がれていた。
 金属輪は解らない。

【囚われの姫よ】

 突然声が響いた。
 少年の声ではない。
 彼はこんなに不気味な声はしていない。
 それに、少年は今、縄と金属輪を行ったり来たりして難しい顔をしている。

「どなたです!? 私とハロルドに何をするんですか!?」

【どうも、私は迷宮案内人のロストと申します。簡潔に申しますと、貴方はこれから彼に殺されてしまいますよ】

 少女は唖然とした。
  この声の主は何を言っているのか。
  私と彼は愛し合っている。
  救おうとすれど、殺そうとするなんて有り得ない。

 少女はそう考えた。
 しかし、考えを見透かす様に……
 嘲笑う様に声の主は続ける。

【貴女の上に鉄の塊がありますね? そちらは、あの金属輪により支えられております。あの金属輪が地面を離れた時、支えを失ったそれは、貴女を押し潰すでしょう】

 少女は上を見る。
 これが? 落ちてくる?

【これから少年は貴女を殺す為に、金属輪を外すでしょう。さぁ――頑張って彼を説得してみてください】

 その言葉に少女は少年を見る。
 少年は、縄を持ち、炎の道を鬼の様な形相で歩き始めた。

 ふと、少年が少女の方を向いて、目があった。

「ハロルド! ハロルド! やめてハロルド! そんな事をしたら、私は死んでしまう! 助けてハロルドォ!」

 いやいやとかぶりを振りながら、泣き叫ぶ少女。
 そんな少女を見て少年は――

 笑った。
 微笑んでいる顔が少女には、自分の命を刈り取る為に嗤っている様に見えた。

「ヒッ! やめてやめてやめてやめてやめてやめてハロルドォォォォ!」

 少女は必死に硝子を叩く。
 泣き叫びながら、叩く。
 いつしか血が滲み、声は枯れてきている。
 それでも彼女は必死で、半ば狂乱して叫ぶ。

 そして少年は、金属輪にたどり着く。
 最後に少年は少女を虚ろな目で一瞥し、力一杯縄を引いた――


 △▼△▼△▼△▼△▼

 暗闇。

 カッという音を立て、光が一筋現れた。
 道化師だけが闇に浮かぶ。

【嗚呼、何という事でしょうか。少年の願いは届かず、少女の叫びは届かなかった】

 道化師は大袈裟に涙を拭う動きをする。

【私はきちんと告げたのに――『貴方も彼女も助かる』――と】

 道化師は泣く演技を続けながら綴ける。

【炎の道を歩いて、自らの命が助かるはずも無いのに。その事に気づいていれば、縄を何もせずに放す事が正解だと気づけたでしょうに……】

 道化師は、泣く演技を止め、口許に特徴的な三日月を浮かべた。

【さて、皆様。今宵の迷宮は如何でしたでしょうか? 楽しんで頂けたのであれば幸いです。それではまた会える事を願っております】

 道化師は闇に融ける様に消えていった。

────────────────────

 いかがでしたでしょうか。
 三人称もミステリー風なものも初挑戦な為、見苦しいところはご勘弁を。

 それでは本題ですが、ダンクリについて。

 1.今まで通り、コメディタッチが良い
 2.今回の様な雰囲気が良い
 3.作品を分けて、どちらもやってほしい

 感想欄に感想も添えて記載頂けると泣いて喜びます。
 感想つけたくねぇよ! って方は、著者近況に番号だけでも問題ありません。
 よろしければ、ご協力おねがいいたします。

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