不死の悪役令嬢は妹と幸せになる為ならなんでもします

赤木

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心配

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 あれから数日が経ったけれど、アレンからはなんの音沙汰もなかった。私は私で犯人探しに奔走していたから、自分から彼とコンタクトをとろうとはしなかった。

というよりも何かしていないと、あの日のことを思い出してしまってダメだった。

⋯⋯あれはなんだったのだろう。そう考え始めると頭の中がぐるぐるぐるぐる止まらなくなって、最終的に頭の中が沸騰してしまいそうになるのだ。

でもたぶん、彼はきっと私に忠告したかったのだ。

それはただ犯人探しの足手まといになるからなのか、それとも別の感情が孕んでいるのか。

別の感情が孕んでいるとしたらそれは⋯⋯。そこまで考えて私はいつも思考を放棄していた。別の感情なんてあってたまるか。彼が私に対してそんな感情を孕むだなんて、私には到底考えることはできない。

 そして執務机で私は今日も突っ伏しながら、執務に向かっている。家関係の事務だけでも私の頭はパンクしそうなのに、襲撃事件のことも追うとなると私にはもう何から手をつけたらいいかわからなくなっていた。しかもそこについ先日のアレンの件も占拠し始めるものだから、ペンを投げ出して寝てしまいたくもなる。

「⋯⋯お姉さま?」

書類の山から必要な書類を引っ張り出していると、扉からミリアが顔を覗かせていた。ミリアは机のそばまで寄ると「お時間よろしいですか?」と私をうかがった。

ミリアの表情は深刻そうで、今にも泣き出してしまいそうだ。一体なんの話だろうか。私は持っていたペンを置いて彼女が話し出すのを待った。

「私⋯⋯もうお姉さまに犯人探しをしてほしくありません」

ミリアはグッと堪えるかのように眉を寄せたあと、そう切り出した。

「⋯⋯え?」

犯人を見つけることは今最も重要なことのはず。
それにまたキルシュ家が襲われることもあるかもしれない。前回の襲撃では私が襲われたからいいものの、もしもミリアが襲われていたらどうなっていただろうか。

ーーそこまで考えて私は心底ゾッとした。

「ミリア、犯人は必ず捕まえなくてはいけないの。次は誰が襲われるかもわからないのよ? もしミリアが襲われてしまったら私⋯⋯」

「それでもっ! それでも⋯⋯!心配する者がいることも考えてくださいませ!」

ミリアの言葉を聞いてはっとした。
“心配”だなんて、そんなこと考えたこともなかった。
ミリアだけを守ることができればそれでいいと、本当に私はそう考えていたのだ。

「アレン様との婚約だって! 本当はしたくないのでしょう?」  

そう訴えると、ミリアは堰をきったかのように涙をこぼし始めた。涙がぽたぽたと床に落ちるけれど、ミリアはそれを拭うこともせずに私を見つめていた。

アレン。

アレンももしかしたら、私のことを心配してくれていたのだろうか。

私の都合の良い考えかもしれない。それでも、その可能性があることを私は”嬉しい”とさえ思ってしまうのだ。

「アレンとのことは⋯⋯私の同意の元よ。彼だから結婚しても良いと思えたの」

私はミリアを安心させる言葉をどうにか絞り出した。ミリアはそれでも不安げに私を見ていたけれど、微笑んで頭を撫でてやると少しだけ表情が和らいだ、気がした。

彼がどう考えているかなんてわからないけれど、私の気持ちは彼に傾いてしまっている。確実に。

ーー彼との婚約のこと、本当は嬉しいのかもしれない。

なんて涙を流すミリアの前ではもう言えるはずがなかった。
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