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お呼ばれ
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簡単な茶会とはいってもさすが公爵。案内された庭には美しい花が咲き乱れていた。装飾も見るだけで高価なものだとわかるくらいだけれど、それでいて主役の花たちをきちんと引き立てている。
「わあ⋯⋯!すごく綺麗なお花が咲いていますよお姉さま!」
綺麗な花を見てはしゃぐミリアの姿を見ると、それだけでここに来てよかったと思う。私のせいでミリアはつい最近まで塞ぎ込んでしまっていたから、少しでも元気になるといいな。
「二人ともいらっしゃい。今日はゆっくりしていくと良い」
咲き乱れた花の中からひょっこりと顔をだしたフィノ様は、それだけでどこかの絵画のようだ。
相変わらず今日も王子様だなあ⋯⋯。
「フィノ様!お招きいただきありがとうございます」
「ミリアは花が好きなのかい?」
「はい!とっても!見ているだけで心が癒されます」
「それなら、席へ座る前に温室も見てくるといい。すぐにメイドに案内させよう」
「え!⋯⋯いいんですか?」
「もちろん」
うきうきとしたミリアはメイドと共に温室へ向かい、その場には私とフィノ様が取り残される形になった。
いきなり二人きりになってしまったことに正直緊張どころではなかったけれど、私には聞きたいことがあったからこれは好都合だ。
「あの、フィノ様⋯⋯つかぬことをお聞きしますが、ミリアのことをどうお思いになっていますの?」
そう、私が聞きたかったのは彼の気持ちだった。
「どう⋯⋯とは?」
「お恥ずかしい話ですが、今キルシュ家は苦しい状況にたたされています。それは襲撃以前から⋯⋯そんな中でミリアに近づくなど、本来はありえないはず」
「そうだね⋯⋯。利害を考えてしまったら、今キルシュ家と交友を深めるだなんて普通はしないだろう。それでも僕はミリアのことを知りたいと思ったんだ⋯⋯こんな僕にも変わらず接してくれたのは、ミリアだけだったから」
ーーアイスブルーの瞳が私を真っ直ぐに貫いた。
そう話す彼の言葉に偽りはきっとない。優しげな彼の表情は今まで幾度となく見てきたけれど、それでも、こんな愛おしげな彼の表情を見たことはなかった。
(本当にミリアのこと⋯⋯)
よかった。彼がミリアを本当に好いてくれていて。姉バカと思われるかもしれないけれど、ミリアを見初めてくれたのが彼のような人で本当に良かった。
「僕からも一ついいかい?」
「君はアレンのことをどう思っているんだ?」
ふいにフィノ様から投げかけられた疑問に、私は思わず大きな声を出しそうになった。危ない危ない⋯⋯。
「な、なぜそのようなことを?」
「だって彼があそこまで誰かを気にかけているなんて、初めて見たからね」
その言葉に思わず目を見張った。そんなはずはない。と言いたいけれど、ここ最近の彼の様子を見ると少しだけ否定するのが憚られた。それでも変に誤解を与えるわけにはいかないから、否定はするけれど。
「いやいや!そんなことはないです! むしろ彼は私のこと面白いおもちゃくらいにしか思っていません⋯⋯」
「ふっ⋯はははは!君の目には彼はそう見えるんだ?」
フィノ様はひとしきり笑ったあと「そんなことはないと思うんだけどね」と涙を拭った。まさかこんなに笑ってくれるとは。
「つい先日も、彼に怒られてしまいました」
先日の出来事をかいつまんで話す。もちろん押し倒されたことと不死のことは言わなかったけれど。
「アレンは君のことが心配だったんだね」
ーー心配。
それは先日ミリアからも伝えられたことだった。ミリアは家族だから、心配したと言われて素直受け取ることができたけれど。彼の場合はそうはいかなかった。
「本当に⋯⋯そうなのでしょうか⋯⋯?」
「彼もあれでかなり不器用だからね。きっと素直に心配したと言えなかったんじゃないかな。⋯⋯そうだ!キルシュ家でも茶会を開くといい。それでアレンも呼んで仲直りをしよう!」
「それは良い案かもしれませんが⋯⋯アレンに迷惑ではないでしょうか⋯⋯?」
ここ最近彼に頼りっぱなしで、さらに謝罪のために呼びつけるとなるといくら昔からの仲であっても気が重かった。
「むしろ彼は喜びそうだけれどね。彼の性格上本当に嫌だったら来ないと思うよ。招待状だけでも送ってみたらいい」
「た、たしかに⋯⋯」
たしかに彼の性格を考えたら、面倒だと思ったことは関わりすらしないと思う。
(フィノ様の言う通り、招待状を出すだけでも出してみようかな。)
「私のことまで気にかけていただき、本当にありがとうございます」
彼に向かって深々とお辞儀をすると彼は少しだけ慌てたあと、にっこりと微笑んだ。
「ううん、僕で良かったらいつでも話を聞くよ。それに、僕のことはフィノでいい。改めてよろしくね、マリア」
「ええ、よろしく。フィノ」
こうして茶会が始まった
「わあ⋯⋯!すごく綺麗なお花が咲いていますよお姉さま!」
綺麗な花を見てはしゃぐミリアの姿を見ると、それだけでここに来てよかったと思う。私のせいでミリアはつい最近まで塞ぎ込んでしまっていたから、少しでも元気になるといいな。
「二人ともいらっしゃい。今日はゆっくりしていくと良い」
咲き乱れた花の中からひょっこりと顔をだしたフィノ様は、それだけでどこかの絵画のようだ。
相変わらず今日も王子様だなあ⋯⋯。
「フィノ様!お招きいただきありがとうございます」
「ミリアは花が好きなのかい?」
「はい!とっても!見ているだけで心が癒されます」
「それなら、席へ座る前に温室も見てくるといい。すぐにメイドに案内させよう」
「え!⋯⋯いいんですか?」
「もちろん」
うきうきとしたミリアはメイドと共に温室へ向かい、その場には私とフィノ様が取り残される形になった。
いきなり二人きりになってしまったことに正直緊張どころではなかったけれど、私には聞きたいことがあったからこれは好都合だ。
「あの、フィノ様⋯⋯つかぬことをお聞きしますが、ミリアのことをどうお思いになっていますの?」
そう、私が聞きたかったのは彼の気持ちだった。
「どう⋯⋯とは?」
「お恥ずかしい話ですが、今キルシュ家は苦しい状況にたたされています。それは襲撃以前から⋯⋯そんな中でミリアに近づくなど、本来はありえないはず」
「そうだね⋯⋯。利害を考えてしまったら、今キルシュ家と交友を深めるだなんて普通はしないだろう。それでも僕はミリアのことを知りたいと思ったんだ⋯⋯こんな僕にも変わらず接してくれたのは、ミリアだけだったから」
ーーアイスブルーの瞳が私を真っ直ぐに貫いた。
そう話す彼の言葉に偽りはきっとない。優しげな彼の表情は今まで幾度となく見てきたけれど、それでも、こんな愛おしげな彼の表情を見たことはなかった。
(本当にミリアのこと⋯⋯)
よかった。彼がミリアを本当に好いてくれていて。姉バカと思われるかもしれないけれど、ミリアを見初めてくれたのが彼のような人で本当に良かった。
「僕からも一ついいかい?」
「君はアレンのことをどう思っているんだ?」
ふいにフィノ様から投げかけられた疑問に、私は思わず大きな声を出しそうになった。危ない危ない⋯⋯。
「な、なぜそのようなことを?」
「だって彼があそこまで誰かを気にかけているなんて、初めて見たからね」
その言葉に思わず目を見張った。そんなはずはない。と言いたいけれど、ここ最近の彼の様子を見ると少しだけ否定するのが憚られた。それでも変に誤解を与えるわけにはいかないから、否定はするけれど。
「いやいや!そんなことはないです! むしろ彼は私のこと面白いおもちゃくらいにしか思っていません⋯⋯」
「ふっ⋯はははは!君の目には彼はそう見えるんだ?」
フィノ様はひとしきり笑ったあと「そんなことはないと思うんだけどね」と涙を拭った。まさかこんなに笑ってくれるとは。
「つい先日も、彼に怒られてしまいました」
先日の出来事をかいつまんで話す。もちろん押し倒されたことと不死のことは言わなかったけれど。
「アレンは君のことが心配だったんだね」
ーー心配。
それは先日ミリアからも伝えられたことだった。ミリアは家族だから、心配したと言われて素直受け取ることができたけれど。彼の場合はそうはいかなかった。
「本当に⋯⋯そうなのでしょうか⋯⋯?」
「彼もあれでかなり不器用だからね。きっと素直に心配したと言えなかったんじゃないかな。⋯⋯そうだ!キルシュ家でも茶会を開くといい。それでアレンも呼んで仲直りをしよう!」
「それは良い案かもしれませんが⋯⋯アレンに迷惑ではないでしょうか⋯⋯?」
ここ最近彼に頼りっぱなしで、さらに謝罪のために呼びつけるとなるといくら昔からの仲であっても気が重かった。
「むしろ彼は喜びそうだけれどね。彼の性格上本当に嫌だったら来ないと思うよ。招待状だけでも送ってみたらいい」
「た、たしかに⋯⋯」
たしかに彼の性格を考えたら、面倒だと思ったことは関わりすらしないと思う。
(フィノ様の言う通り、招待状を出すだけでも出してみようかな。)
「私のことまで気にかけていただき、本当にありがとうございます」
彼に向かって深々とお辞儀をすると彼は少しだけ慌てたあと、にっこりと微笑んだ。
「ううん、僕で良かったらいつでも話を聞くよ。それに、僕のことはフィノでいい。改めてよろしくね、マリア」
「ええ、よろしく。フィノ」
こうして茶会が始まった
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