チートな環境適応型スキルを使って魔王国の辺境でスローライフを ~べっぴんな九尾族の嫁さんをもらった俺が人間やなんてバレへん、バレへん~

桜枕

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第7話

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 絶叫の後、ダークエルフ族の後をついて行きながらステータスオープンしてみた。

――――――――――――――――――――

【名前】トーヤ
【種族】九尾族
【スキル】超適応
【魔法】ドミネーション99ナインティナイン
【武器】なし

――――――――――――――――――――

 これまでに人族→半魔族→九尾族と変化を遂げている俺だ。
 驚きはしない。

 きっと、キツネの魔物と一緒にいる時間が長くなったからだろう。

 置かれた環境に適応するのは構わないが、使える魔法まで変ってしまうのは不便でしかない。今の俺は"ヘルフレイム"を失っている。

 どうやって、戦えばええんや……。

 それに、この尻尾。
 こんなものをぶら下げて人族の国に戻れば、間違いなく化け物認定されて迫害されるに決まっている。

 なんなら討伐対象になるかもしれない。

 でも、悪いことばかりではなかった。

「ハァ……最高の触り心地や」

「あの、自分の尻尾ですよ?」

 ドン引きしたさげすんだような視線を向けるダークエルフ族の少女。
 見た目だけなら今の俺と同じ16、17歳だ。しかも眼鏡属性持ち。
 名前はクスィーというらしい。

 他のダークエルフ族と同じように麦わら帽子を被っている。
 日焼け対策に余念がない。日サロでしか焼かないタイプのエルフと見た。

「クスィーちゃんは知らんと思うけど、性転換した男は必ず自分の胸を揉む。それと一緒や」

「せいてんかん……自分の胸を……揉む……?」

 訳が分からないといった様子で眉間にしわを寄せるクスィーちゃんを気にもせず、3本の尻尾を抱いて、頬ずりして、匂いを嗅ぐ。

「モフモフ最高。一生、九尾族でいい」

「トーヤの言動は意味不明です」

「人生には癒やしが必要なんよ。そして異世界にはモフモフが必要なんよ」

 尻尾を自由自在に動かす感覚にも慣れた。
 こうやって全身を囲ったら、高級な寝袋のようにもなる。

「モフモフの自給自足をしないでください」

 ぴしゃりと言い放つクスィーちゃんはきっとダークエルフ族の中でも委員長気質なのだろう。

 しばらく歩き、平原を越えて神聖っぽい森の中に入ると、いくつかのツリーハウスが見えた。

「トーヤ、これが私たちの住んでいる集落です」

 クスィーちゃんが指さす方を眺める。
 多くのダークエルフ族がいるのかと思ったが、そんなことはなく、獣耳のヒト達がせわしなく走り回っていた。

「ここがクスィーちゃんの家? 他のダークエルフ族の皆さんは?」

「そうですよ。今はまだ陽が高いので寝ています。私もこれからもう一眠りしますので」

 生態が分からん。

「私たちダークエルフ族は闇の住人なので日中は活動しません。今日はブラックウルフを追っていたので起こされただけなのです。では、おやすみなさい」

 さっさと木製の梯子はしごを登り、ツリーハウスの中へと消えて行った。

「トーヤ殿、宴は夜からの予定だ。それまでは自由にしてくれて構わない。話は通しておいたから、何か分からないことは獣人族に聞いてくれ。では、おやすみなさい」

 小集団をまとめていたセフィロさんも、他のダークエルフ族の戦士たちもそれぞれのツリーハウスへ向かい、俺とキツネの魔物は置いてけぼりにされてしまった。

 顔を見合わせ、困ったように微笑む。

 すると、ダークエルフ族がこの場から居なくなったタイミングを見計らったように獣人たちがやってきた。

「九尾族!? 絶滅したのでは!?」

「ブラックウルフを倒されたのですか!?」

 俺の尻尾や、キツネの魔物を見て大はしゃぎの獣人族。
 この集落にいる獣人族は猫耳だったり、犬耳だったり、多種多様だった。

 九尾族って絶滅しちゃったの?
 俺の友達って激レアやったりする?

 あ、今は俺も同族やったわ。

 俺が担いでいるブラックウルフを見て、はしゃぎ回る獣人族からの質問が止まらない。

「片手で持てるんですか!?」

 そう言われると、そうだ。
 俺がモフモフを堪能していた時はダークエルフの男衆が引きずってくれていた。

 大変そうだったから、代わると申し出たのだが、あれは俺に持たせるための演技だったのかもしれない。

 ダークエルフ……実にずる賢い一族だ。

「セフィロ様から仰せつかっております。ダークエルフの皆さまが起きてくるまでは我々がおもてなしをいたします」

 まず案内されたのは、獣人族が生活しているスペースだった。
 ツリーハウスで寝起きしているダークエルフ族とは違って、木造住宅らしい。

 その中の一室に通された。

 長い髭と真っ白な毛並みが特徴的な獣人がうやうやしく一礼する。

「わしらは白虎族で、今はダークエルフ族に仕えています。向こうには猫又族もいます」

「へ~。異種族が共同生活を」

「共同と言いましても生活リズムは異なります。さて、ブラックウルフの牙や毛皮は武器や防具にすることができます。ですが、今回は毛皮が血で汚れているので、そちらは廃棄処分になります」

「そうですか。全部あげるんで、好きにやっちゃってください」

「よろしいのですか!? あなた様の取り分は?」

「一泊させてくれるだけで十分。ほら、夜の魔王国って不気味やん?」

「昼間に活動する我らにとってはそうですが、九尾族はむしろ活気付くのではないのですか?」

 へ~、そうなんや。
 確かにキツネは夜行性の生き物か。

 その辺りの生態は前世でも、異世界でも変わらないらしい。

 家の外に出ると、森の木々からかつてないほどのマイナスイオンを感じた。

 決して小さな集落ではないが、噂話が広まるのは早いようで多くの獣人族が作業を止めて、手を振ってくれた。
 もちろん、俺も手を振り返して応えた。

 そして夜。

「おはようございます、トーヤ」

 昼間に会った時よりも艶々つやつやしているクスィーちゃんが眼鏡をくいっと上げながら笑顔を見せてくれた。

「これからが闇の眷属けんぞくの時間ですよ」

 圧倒的、厨二感がたまらん!!
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