チートな環境適応型スキルを使って魔王国の辺境でスローライフを ~べっぴんな九尾族の嫁さんをもらった俺が人間やなんてバレへん、バレへん~

桜枕

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第11話

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 ダークエルフにとっての朝食と獣人たちにとっての夕食は全く同じものを食べる。

 前世で流行っていたグラノーラ、オーツミルク、アサイーボウルのようなものは一切食べない。
 がっつり、肉! 野菜! パン! である。

 白虎族や猫又族は労働後だからしっかり食べて明日に備えて寝ればいい。

 では、ダークエルフはどうか。
 彼らにとって深夜こそが昼間であり、もっとも活気付く時間帯だ。
 これから狩りに出かける前の景気付けに腹持ちの良い食事を摂るらしい。

「朝から肉体労働をして、こんな美味い夕飯を食って、ひと狩り行こうぜっ! って殺す気か!?」

「夜、時間を貰えるか? と声をかけてあったではないか」

 モンスターの肉をかじりながら、セフィロさんが何でも無いように言う。

「夕食後に少しお話するだけやと思うやん!」

 こちらが目的地の地図です、とクスィーちゃん。

 見たくないのに視界に入ってしまった。

「風呂上がりにちょっとコンビニまで、みたいなテンションで行ける場所ちゃうで!?」

 セフィロさんとクスィーちゃんは顔を見合わせながら、「こんびに……?」と首を傾げていた。

「そうか。せっかくトーヤ殿が植えてくれた野菜もブラックウルフに食い荒らされてしまうな」

「子供たちも襲われて怪我をしてしまうかもしれません。ですが、強要はできないですもんね」

「君ら、分かってやってるやろ。俺がチョロい男やと思ってるんやろ」

 ふと、お上品にしていたギンコが近寄ってきて、可愛らしく鳴いた。

「トーヤ様、ギンコ様のお言葉ですにゃ」

 通訳係を買って出てくれた猫又族の少女がギンコの気持ちを教えてくれた。

「『あなた、この人たちも困っているのよ。いいじゃない、一緒に行きましょう。あなたのカッコイイ姿を見たいわ。深夜デートもきっと楽しいわよ』との事ですにゃ」

「絶対、嘘やん! さっきの『キュゥ』にそんな長セリフが込められてると思えへんもん。君も、ぐるなん!?」

「最後のは本当ですにゃ」

「最後だけ!? よーやったな! その図太さなら大阪で生きていけるって!」

 でも、ギンコがお出かけしたいなら……。
 確かにここに来てからは洗濯や農作業しかしていないから、ギンコには退屈な思いをさせてしまったかもしれない。

「じゃあ行くか?」

「キュゥ!」

「っし。さっさと終わらせて帰ってこよう。もう眠い」

 朝食を終えたダークエルフ族の皆さんが完全武装で戻って来た。
 やはり得意な武器は弓らしく、剣などの近接戦闘用の武器を持っているヒトはいなかった。

 クスィーちゃんに手伝ってもらい、俺も最低限の防具をつけてもらう。

 歴史の授業で習ったような戦国武将ほどの重装備ではないが、重くて自由には動けない。

 しかも、この巨大な弓をれる気がしなかった。

「素早いブラックウルフは基本的に弓で仕留めることになります。これから田舎暮らしを希望されるなら、技術を身につけておいて損はありませんよ」

「ちょっと試していい?」

 練習場へと移動して、クスィーちゃんのお手本を真似て構えてみる。

 想像以上に両手に力を入れる必要があり、指が千切れそうだった。

 遠方にある的を目掛けて弦を離す――

 が、ひょろひょろの矢はすぐに墜落して、的までの距離を少しも縮めることはできなかった。

「ぶふっ」

 隣で練習していたダークエルフの子供が吹き出す。

「こら、失礼ですよ。いくら子供より下手くそでも笑ってはいけません。初めてなんですから。下手くそでも褒めて伸ばすのが、我が一族の方針でしょう?」

 クスィーちゃん、それは俺がいない所で言ってもらってええかな。
 結構、グサグサ刺さってるから。

 練習してみて分かったことは俺に弓術のセンスがないということだけだった。

「そこまで落ち込む必要はありません。特訓すればいいだけです。上手くれるようになるまで、ここに居ればいいですよ」

「いや、それはさすがに悪いって」

「どうしてですか? 昼は獣人族と労働して、夜は我らと狩りに出かけるなんて、誰よりも働いていると思います」

 その通りかもしれないが、俺は人間だ。
 そして、俺と同じ人間であるヤンキー勇者が魔王を倒しに来る。

 二国間の戦いに巻き込まれたくないし、勇者と同じ人族としてクスィーちゃんたちに嫌われたくもない。

 だからと言って、今の俺がヤンキー勇者の話をしても信じてもらえるとも思えない。

 結局、俺は逃げたいだけ。

 人間の国だろうが、魔王の国だろうが、とにかく静かに暮らしたい。
 それだけが願いだった。

 無言で微笑み返すと、クスィーちゃんは苦しそうに顔を背けた。

「キュゥ?」

「心配すんなや。いざとなったら、ギンコからもらった力を使う」

 ナイトメアホースと呼ばれる魔王国の移動手段である馬に騎乗したダークエルフ族と一緒に集落を出た。

 俺はギンコに乗せてもらい、小隊の真ん中で進軍中だ。

 斥候せっこうによる情報によれば、巣にいるブラックウルフは5匹。

 対してこちらは弓の達人が10人と俺とギンコだ。遠距離攻撃魔法を失った俺は戦力外だから、ダークエルフの皆様に頑張ってもらうしかない。

 頼むで、ギンコ。
 君のレベルは知らんけど、俺にとっては最後の砦なんやから。

 そんな思いを込めながら背中を撫でる。

 俺がどれだけ震え上がっていても、ギンコはいつもの調子で可愛く鳴くだけだった。
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