チートな環境適応型スキルを使って魔王国の辺境でスローライフを ~べっぴんな九尾族の嫁さんをもらった俺が人間やなんてバレへん、バレへん~

桜枕

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第22話

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 メインストリートから左の路地に入って後悔した。

 薄暗いなんてものではない。
 真昼間なのに、陰鬱とした空気が漂っていて足がすくみそうになる。

「進みますの?」

「あ、当たり前や。俺は受付のお姉さんを信じるで」

「……はぁ。あまり女性を簡単に信じるのは感心しませんよ」

「ホンマにマズイ時はギンコが止めてくれるやろ?」

 無言で目を細めて笑う姿は奥ゆかしいの域を超えている。

 意を決して路地に入り、傾いた看板のかかった扉をノックする。
 内側からの反応はすぐにあった。

 店の中には床、壁一面に武器や防具が無造作に置かれ、足の踏み場もない状態だった。

 しかも、タバコ臭い。
 部屋中を満たす紫煙しえんに目からは涙が、鼻からは鼻水が止まらない。

「なんだ?」

 声はすれども姿は見えず、そんなあなたは屁のような。
 なんちゃって。

「なんだ?」

 声のする下に目を向ければ、髭もじゃの小さいおっさんが俺を見上げていた。

「……作って欲しいもんがあって来ました」

「なんだ?」

 今にも吐きそうな雰囲気のギンコを外に出して、話を続ける。

「これを使ってリングを2つ作って欲しいんです」

「こいつはブラックウルフの骨か」

 取り出したのはギンコと初めて会った時に一緒に倒したブラックウルフの太い足の骨。

「あと、これの加工もお願いします」

「ブラックウルフの牙か。しかも別個体。こっちの方がデカかったはずだ」

 本職の方は見ただけでそんなことまで分かるのか。

「金はあるんだろうな」

「これだけでええかな?」

 金貨の価値も相場も知らないから、とりあえず片手で掴める分を出した。

「ぶっ!? おまっ!? 正気か!?」

「ん? 足りません?」

「バカ言っちゃいけねぇ! こんな大金! おめぇ、何者だ?」

「バカって言われたらキレるただの関西人や。せめて、アホにしてくれや」

 珍妙なものを見るような、怯えを含んでいたドワーフの目に輝きが宿る。

「こんな大金を出されちゃ、適当な仕事はできねぇ」

 太い葉巻を机に押し付けて火を消したドワーフのおっさんは、まだ俺がいるというのに仕事モードに入ってしまった。

「じゃ、また取りにきまーす」

 絶対に聞こえてないけど、明日の朝に訪問すればいいだろうと決めつけて店を出た。

「大丈夫か?」

「あんな臭い部屋で生きていけるなんて。下等生物の生態は理解できませんわ」

 第一印象が最悪だったからか、帰り道のギンコはずっと怒っていた。

「飯、食うか。どうせ今日は泊まりや。適当に町をぶらぶらしようや」

「ラブラブ!?」

 頭の中がお花畑になったようなハイテンションのギンコが腕に絡みつく。

「確かギルドの隣に飯屋があったはず」

 ギルドに隣接する店に入った俺たちはそれぞれが食べたいものを注文した。

「そういえば、二人での食事は初めてやな」

「そうですね。出会ってから今まで色々とありすぎて」

「俺もあのキツネが二足歩行になって言葉を話すようになるとは思ってなかったわ」

「妾が一番驚いたんですよ。まさか封印が解かれるなんて……」

 今、何か聞こえてはいけない単語が聞こえたような。

 ギンコも無意識だったのか。気づいていないようだから、あえて触れないでおいた。

 しばらくして運ばれてきた料理を一口食べたギンコは眉間にしわを寄せて、フォークを置いた。

「人族では猫又族に敵わないみたいやね」

「そうか? 美味いけど」

「旦那様はお優しいから」

 丁寧に口まで拭いてしまったギンコは、背筋を伸ばして食事を続ける俺を見つめているだけだ。

「食べてええの?」

「どうぞ」

 結局、二人前の料理を平らげた。

 確かにダークエルフ族の集落で食べた料理には及ばないがそれは舌が肥えたからだ。決してこの店の料理が不味いわけではない。

「ご馳走様でした」

 お会計ついでに金貨の価値を学ばせてもらって、目玉が飛び出るかと思った。

 あのドワーフには大盤振る舞いしすぎた。
 完成品の出来がイマイチなら文句を言ってやる。

「この後はどうしますの?」

 食後、適当な宿を探しつつ、街を散策していた俺たちは一周回ってギルドの前に戻ってきていた。

「一泊してドワーフの店に行って帰る」

「つ、つまり……初夜ってことで、よろしい、ですか?」

 消え入るような声。
 顔を真っ赤に染めて、服を握りしめるギンコの姿にはキュンとした。

 いいの?
 俺の初体験がキツネ娘でいいの!?

 だいぶ年上やけどいいの!?

「……お、おぅ」

 情けなくも、顔を背けて答えるのが精一杯だった。

「じゃあ、奮発して静かな宿を――」

「緊急事態!! 魔王国からデスクック3体が街に向かってくるぞ!」

 甘い空気を一変させたのは、ギルドに駆け込んだ冒険者からの報告だった。

「なんや、緊急事態って」

「妾たちには関係ありません。早く、ねやに向かいましょ」

 俺にぴったりと寄り添うギンコの肩を抱こうとした時だ。

「あんたを探してたんだ! デスクックを討伐したんだろ!? 手を肩してくれ!!」

「昼間の兄ちゃんか! これなら3体相手でも可能性があるぞ」

「何者だ? あんな軽装で」

「激レアアイテムのデスクックの鶏冠とさかまで持ち込んだ無名の冒険者だよ」

鶏冠とさかぁ!? 化け物かよ」

 面倒事を避けるためにわざわざ嘘をついたのに、面倒事に巻き込まれてしまった。

 厳つい男たちに連行される俺の服をつまんだギンコが頬を膨らませながら無言でついてくる。

 すまん、ギンコ。
 俺らに初夜はまだ早すぎたみたいや。
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