チートな環境適応型スキルを使って魔王国の辺境でスローライフを ~べっぴんな九尾族の嫁さんをもらった俺が人間やなんてバレへん、バレへん~

桜枕

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第31話

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 結果から言うと、顔を変えて人族の国に入国していた俺がおっちゃんに手を振ったことは失敗だった。

「その者を王宮へお連れしろ! 丁重にだ! 間違っても拘束などするな!」

 バルコニーから乗り出す勢いの国王の命令に戸惑いながらも従う騎士たち。

 しかし、ヤンキー勇者だけは食ってかかった。

「こんな無礼な奴を来賓らいひん扱いするのか! 九尾族とダークエルフ族だぞ!」

「きゅ、九尾族だと!? 御仁、しばし待たれよ!」

 狼狽した国王はお付きの者たちを押し退け、バルコニーから姿を消した。

 言われた通りに待っているとドタドタ足音を鳴らしながら息を切らして門の前まで走ってきた。

「お、おぬ……お主に、はな……話が…………ある!」

「落ち着いてください。息を整えてからでいいですから」

 初老の、しかも一国の王様がここまでしているのに無視して立ち去るほど俺のメンタルは強くない。

「お、おい。そいつはオレから魔王の右腕を奪ったんだぞ」

「黙っておれ! 大事になる前に対象せねばならぬ」

 ヤンキー勇者を一括した国王に背中を押されて、門の中へ入っていく。

「さぁ、城内を案内しよう」

「連れも一緒で構いませんか?」

「もちろんである」

 俺が手を上げるとキツネ目の美女とクールビューティー眼鏡属性美少女と犬がやってきた。

「じゃ、この4人でお願いします」

「ま、待てよ!」

 またしてもヤンキー勇者の声に苛立ちを隠そうともせずに前に出た国王。

「こいつら見た目は人間だが、中身は九尾族とダークエルフ族だぞ!?」

「っ!?」

 ヤンキー勇者の野郎、女神様のスキルを発動させやがった。

 驚いた俺と国王の視線がぶつかり合い、緊迫した空気が漂う。

「……ちょうど良い機会だ。ゆっくりと話そうではないか。余はイスダル・グラファイト。この国の王である」

「トーヤです。それ以外のことは内緒で」

 こうして俺は国王に案内され、ヤンキー勇者たちと一緒に応接室へと通された。


◇◆◇◆◇◆


「では、まずは貴殿が魔王の右腕を欲しがる理由から聞かせていただけるだろうか」

 改めて自己紹介を終えた俺たちは8人掛けのソファに腰掛け、話し合いが始まった。
 俺の両サイドにはギンコとクスィーちゃん。そして、クスィーちゃんの膝の上にウルルがいる。

 反対側には国王陛下、ヤンキー勇者、一緒にデスクック討伐に参加したおっちゃんが座っている。おっちゃんの萎縮具合がとんでもなくて可哀想になってきた。

 そして、なぜかあの首輪と手錠をつけられた奴隷少女もヤンキー勇者の後ろに立っている。

「依頼人の素性は明かせません。依頼通りに参上しただけです」

 命令と言うとややこしくなりそうだから濁すことにしたが、よく思い出すと別に命令をされたわけではない。
 これは交換の品だ。

「それを渡してしまって良いのだろうか」

「デスクックやサイクロプス如きだけじゃなくて、魔王軍に攻めて来られたくないなら渡した方が良い、とだけ言っておきましょうか」

「……如き、ときたか」

 だって、魔族のペットやで?
 そのペットの飼い主の方が強いに決まってるやん。

「トーヤ殿には借りがある。魔王の右腕は好きにしてくれ」

「ありがとうございます」

 さて、と国王の眼光が鋭くなる。
 かつて軍神と呼ばれていただけあって、嫌な汗をかきそうになってしまった。

「トーヤ殿とそちらの女性は本当に九尾族なのか?」

 俺は首を振って否定する。
 ギンコは興味なさげに爪をいじっていた。

「俺は魔族ですが、こいつは間違いなく九尾族です」

「魔族がどうして我が国へ? 諜報活動か?」

「いえいえ。前回はただの観光。今回は腕を探していただけです」

 素直に人族だと言えないのが辛い。
 幸いなことにヤンキー勇者は俺に気づいてないし、ギンコたちが俺を疑う気配もない。

 このままちょっと変わった魔族というキャラを演じよう。

「魔族を生かして帰したとなれば勇者の名折れだ。やはりここで討つべきだ」

「今は控えてくれ勇者殿」

 国王の重々しいお願いにヤンキー勇者が浮かせた腰を落とした。

「九尾族がどのような種族なのかご存知であろう? 我ら人族は九尾族に国に入って来て欲しくない。そして、可能であれば貴殿たちが魔王側に着くのも勘弁願いたい」

「俺は魔族なので魔王側ですよ」

「はははっ。それは嘘だ。貴殿からは忠誠心を感じられない。きっと、直々の命令で動いているわけではないのだろう? そうだな……その腕は交渉材料かな」

「さすがは王様。俺の心が読めるとは」

「まさか。当てずっぽうだ」

 この緊迫感に耐えられないのか、クスィーちゃんが隣で小さくえずいていた。

「俺はどちら側にも着くつもりはありません。それに――」

 俺は国王の鋭い目を睨み返した。

「こいつの種族とか、おたくらに何をしたとかは知らんし、俺には関係ない。種族差別するような王様について行く気にはなれんな」

「後悔するぞ」

「それが人生っちゅうもんやろ?」

 国王は鼻で笑うと、おっちゃんの方を見て「言っておくことはないか?」と聞いた。

「あの時はありがとうございました。魔族は悪者ばかりだと思っていました」

「よそはよそ、うちはうちやから。他の魔族のことは知らん」

 続いて国王がヤンキー勇者の方を向く。

「つまり、こいつは魔王にその腕を返すってことだろ! それを見逃すってのか!?」

「魔王城への単騎突入は見事だったが、魔王を仕留められていない以上、報復は間逃れない。トーヤ殿が仲介してくれるなら穏便に済ませられる」

「おい、貴様をオレの部下にしてやる。貴様が魔王に腕を返しに行くタイミングで闇討ちする」

「……アホなんか? そんなことして無傷で帰れると思ってんの?」

「前回は成功した。絶対に今回もできる。こいつがいるからな」

 ヤンキー勇者は後ろに立っている奴隷少女を親指で指差し、得意げに笑った。

「お前が人族の男を転移させた場所で待ってる。絶対に来いよ」

「な!? なんでそれを――っ」

 俺が立ち上がると、ギンコとクスィーちゃんも続き、近くに寄ってきた。

即刻インスタントステータス――ネロ」

黒羊ノワールムートン族ってなんだ!?」

 俺たちの足元に魔方陣が現れる。
 瞬時にヤンキー勇者は鑑定のスキルを発動させたようで、俺のステータス変化を見破られてしまった。

「転移魔法って便利よな」

 俺の魔方陣はネロが作ったものよりも大きくて3人と1匹が乗ってもはみ出ることはない。

「ほな、さいなら」

 魔方陣が光り輝き、俺たちはグラファイト王国の王宮からおいとました。
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