抱き締めても良いですか?

樹々

文字の大きさ
上 下
35 / 152
抱き締めても良いですか?

13.もりもり食べてもらいましょう

しおりを挟む

 二度目のヒートを迎えた。予定より数日早い。体が焼けるように熱かった。
 真澄の部屋から病院に着くまでの間、抑制剤を飲んでいたのに震えが止まらなくて。ベッドに寝かされても、苦しくて仕方が無かった。
 Ωの女性医師が、もう少し強い抑制剤を投与してくれた。そうすると少し落ち着いた。こもる熱は相変わらずだけれど、意識が朦朧とすることはなくなった。

*真澄と繋がりたい……抱かれたい……!

「うっせーな……誰の声だよ……」
 収まっていた波が再び来る。前をしごいてやりながら、後ろも弄ってやる。こんな姿、有紀には見せられない。無心に熱を発散させていく。
 何度目の波をやり過ごしただろう。スマホのアラームを頼りに抑制剤を飲む。これを飲むと数時間だけ落ち着くことができる。その間に体を綺麗にしたり、軽く食べたりしている。
 番を持たない世のΩ達は皆、こんな生活を送っているのだろうか。
 番が居ればこんな生活から解放されるのか。
「ぅっ……」
 そろそろ抑制剤が効いてくる頃だ。ぐちゃぐちゃになっているベッドのシーツを換えたい。簡単に換えられるように四隅を結ぶだけで良いようになっている。
 すうっと息が楽になるのを感じた。体の熱が少し引いていく。数時間だけの自由時間の内に片付けてしまおう。
 シーツを換え、簡単に体も洗った。どうせ服を着ることはできないので、そのままベッドに戻る。何か口に入れておきたいと、ドアの下にある小窓を見つめた。差し入れられたお盆の上にはサンドイッチと水が置かれている。
 フラフラと取りに行く。Ωの看護師とはいえ、この姿は見られたくはない。サンドイッチと水を手に取ると急いで口に入れた。
 歯を磨きたいが、口の中が敏感になっている。水で濯ぐだけで我慢した。換えたシーツを小窓の側に置いた俺は、お盆の上に置かれているタオルと枕カバーに気がついた。
 換えのタオルだろうか。何で枕カバーまであるのだろう。
 タオルは病院が使っている物とは違い柄が入っている。手にしてみると、ふわりと良い匂いがした。枕カバーからはもっと良い匂いがしている。
「……んだ、この匂い……」
 無意識に顔を埋めてしまう。フラフラとベッドに戻ると、タオルと枕カバーから香る匂いを吸い込んだ。どうしてだろう、この匂いを嗅いでいると落ち着く。懐かしい匂いだ。
「気持ち……いい……」
 タオルと枕カバーに顔を埋めたまま、再び訪れた熱の波に飲み込まれていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,219pt お気に入り:93

発禁状態異常と親友と

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:206

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,307pt お気に入り:1,552

素直になれない平凡はイケメン同僚にメスイキ調教される

BL / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:1,664

反省するまで(完結)

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:32

それでもいいのか、それだからいいのか

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:52

きもちいいあな

BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:755

溶かしてくずして味わって

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:162

[完]ノア

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:14

処理中です...