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第二王道『ラブ☆アタック』
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しおりを挟む「しまった! 俺、自分の事しか考えてなかった!」
「ミルフィー様が安心して身を任せられるよう、お部屋を掃除されては?」
「そうだな! なあ、お前、男同士に詳しいのか?」
「残念ながらあまり。あ、でも、女に使う物ですが、たぶん男にも使える物は持っています」
そう言って、ポケットから小瓶を取り出した。俺の手に握らせてくる。
「何だ、これ」
「媚薬です」
「…………びっ!?」
声が詰まる俺に、涼しげな顔で笑っている。
「そんなに強くはないんですよ~。ちょ~っとだけ、エッチになっちゃう薬です。痛みも和らぐらしいです」
「……し、しかし……こ、こんな薬は……!」
「ミルフィー様がエッチに乱れていく様……私としては非常に想像しにくいですが……。まあ、ティラミス様にかかれば容易に想像ができましょう?」
彼がクスクス笑いながら何か言っている間、すでに俺の脳内はエッチなミルフィーで満たされていた。
俺の腕の中で、顔を真っ赤に染めるミルフィー。
潤んだ瞳で俺を見上げるミルフィー。
俺を受け入れ、ハラハラと泣きながら身悶える、最高にエッチなミルフィー。
「……やばい!! 鼻血が出そう!!」
「……ぶふっ!! ……コホン。それ、どうぞ」
「い、良いのか!?」
「はい。その代わりと言っては何ですが」
青年はスッと背筋を伸ばしている。何か礼が欲しいのか。良いことを教えてくれた彼の望み、ある程度なら叶えてやろう。
「何でも言ってくれ」
「では。一つだけ。何があっても、ミルフィー様を受け入れて下さい」
「……何?」
「たぶん、ちょっと衝撃的な事実が待っているかもしれませんので」
「…………お前、俺のミルフィーの何を知っている」
「たぶん、知らないのはティラミス様だけかと」
剣を拾い、彼の首元に当てても動じていない。ピタリと止めた俺の腕を信用しているからか、度胸が良いのか。にこりと笑っている。
「この程度の事で、ティラミス様が引くとは思いませんが……。念のため。ミルフィー様の体には、秘密があります」
「…………見たのか?」
「いいえ。恐らく誰も。でも、皆が知っている事です」
「一緒に風呂に入ったことあるけど、何もなかったぞ」
剣を収め、そう言う俺に、またにこりと笑っている。良く笑う青年だ。
「脱がせてひっくり返してみたらわかると思います」
「お、お前……そんな大胆なこと、いきなりできるか!」
「……ぶふっ!! ……あはは!」
「笑ってる場合じゃないぞ! 秘密って何だ?」
腹を抱えて笑っている彼の肩を揺さぶった。けれど彼は涙目になったまま、これ以上教えてくれなかった。見ればわかる、と。
確かめるのは俺の仕事だとも言った。目元を拭った彼は、俺の背中を押した。
「さ、早くお部屋の準備を! あま~い雰囲気を作って誘って下さいね!」
「……わかった」
何か腑に落ちないけれど。もらった薬はしっかりポケットに入れた。
彼の笑い声に見送られた俺は、急いで自室へ戻る。メイドを呼び、部屋の掃除をさせている間、シャワーを浴びて身を清めた。
「…………ふ、ふふふ。やっと……やっとミルフィーと……!! 待ってろミルフィー!! 最高に愛してやるからな~~!!」
風呂場で叫んだ俺の声に、メイドが必死に笑い声を堪えているとは知らずに、入念に体を洗った。
ミルフィーが部屋に来た時、めいっぱい抱き締めてやるために。
胸元は特に擦って綺麗にした。
***
「お前、いつもながら度胸があるな~」
「だって気になるだろう?」
「確かに」
「最強の剣士と、最強の剣士だもんな~」
末端兵士仲間でわいわいと話し込んだ。
ミルフィーはガトーに連れられていき、ティラミスは今頃熱心に、部屋を片付けている事だろう。
最強の剣士が二人。
その実力はほぼ互角。
「二人の間の子供は、まさに剣士の中の剣士ってことになるじゃない。それを見届けたいしさ」
「でもまさかミルフィー様がね~」
「負けるなんて思わなかったよ」
「人間が竜騎士を超えるなんてな!」
会場の後片づけをしながら、これから先、どうなるかを色々と想像した。
未来の国の跡取りは、いったいどんな子供なのだろうか。
子供が産まれるにはまず、二人が乗り越えなければならない壁がある。
「最強の女剣士、でも良いと思うけど」
「……良いな、それ」
「素足であって欲しい!」
わいわい、がやがや、噂話に花を咲かせた兵士達は、明日の朝が楽しみだ、と語らった。
果たしてティラミスはどんな選択肢を取るのだろう。
そしてミルフィーは。
早く明日になれ、と願わずにはいられない兵士達であった。
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