王道ですが、何か?

樹々

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第二王道『ラブ☆アタック』

番外編6

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***


 床に跪き、頭を垂れたミルフィーは、俺に何度も謝った。

 ベッドの上から動けない俺は、何度も何度も、大丈夫だと言ったのに。

 跪いたまま、離れている。

「もう、良いって。こっち来いよ~」

「……本当に、本当に……! 私の勘違いで一国の王子になんということを……!」

 逞しい体を精一杯縮めたミルフィーは、顔を見せてくれなかった。

 いきなり押し倒され、貫かれ、何がなんだか分からなかった俺は、それでも少し幸せだった。抱かれた経験が無かったせいで、強引にされた後ろは大変なことになったけれど。

 俯せにベッドに沈んでいる俺は、嫉妬に狂ったミルフィーを思い出すと口元が緩んで仕方がない。彼があれほど、俺を独占したかったとは。

 ティラミスと呼ばれる度に腰が震えたものだ。痛くてたまらなかったけれど、二度とこんな事は無いだろうと嫉妬のミルフィーに抱かれた。

 まあ、誤解が解けなければ、俺は男として生きていられたか分からない状態までいったけれど。何度したのか、覚えていないほどいかされた。

 竜騎士の体力は異常だ。

 あの世話焼き不思議な青年が、怒り狂っていたミルフィーの心を静めてくれたから、こうして話しができる状態まで戻ったと言っても良い。さすがに意識が朦朧とし、もう駄目かもしれないと思っていた頭上から、香水の様な物を吹きかけていたのはぼんやり覚えている。

 その香水を嗅いだミルフィーは、俺を抱いたまま力を失い、眠ってしまった。最後の力を振り絞って体を起こした俺の側に飛び降りてきた青年は、持っていた毛布を掛けてくれた。眠ってしまったミルフィーを確認し、笑って言った。


『竜騎士の男は一度火が点くと、三日三晩、やり続ける者も居るそうです』


 その話を聞いて、さすがにやばかったと思った。そのためにこういった香水があるのだと教え、俺にくれた。竜騎士について詳しい青年のおかげで助かった。

 助け出されながら、くれぐれもミルフィーを丁寧に運べと命令し、俺も気を失った。次に目が覚めた時には治療がされ、側にミルフィーが跪いていた。

「なあ、もう大丈夫だって」

「……しかし!」

「誤解されるような事をしていた俺も悪いんだし。よし、腰を揉んでくれ、腰を!」

「……ぼっちゃま」

「ほら、早く」

 促せば、恐る恐る近付いてくる。シーツをめくり、俯せになっていた俺の腰を揉もうと伸ばされた腕を引っ張った。ベッドの上に押し倒す。

「ぼっちゃま……!」

「やっと捕まえた」

 逞しい体に乗って甘える。

 どうしようかと迷っていた両腕が、数秒後、ようやく俺の背中を抱き締めた。

「本当に申し訳ありません……」

「大丈夫だって。鍛え方が違うんだから」

 怒っていないと知らせるため、薄い唇にキスを落としてやる。泣き出しそうなミルフィーの硬い頬にもキスをしてやった。

 彼が誤解するのも無理はない。俺とチョコ姫が何をしていたのか、分からなかったのだから。

 彼女は人物画も得意としている。そのため、俺の体をモデルに模写したいと頼まれた。さすがに姫君の前ですっぱはまずいので、上半身だけなら、と承諾した。たとえ剣を離したとしても、その辺の賊に遅れを取ることはないと思って。

 先日、チョコ姫を胸に抱いて戻ってきたミルフィーへの不満を少しだけ聞いてもらいながら、モデルをしていたのだが。途中から見ていたミルフィーには、俺とチョコ姫が良いことをしているように映ったのだろう。怒りに任せて物に当たる彼を初めて見た。

 いやもう、鼻血が出そうだった。そんな場合ではないと思っても、彼があれほど俺を求めているなんて。

 逞しい肩に甘えてすり寄る俺に、ゆっくりと背中を撫でながらまた、懺悔をしている。

「皆の前で王子を押し倒し、抱くなど……」

「あいつの話では、すぐに父上が命令して離れさせたって。だから誰も見てないから大丈夫」

「しかし……」

「なあ、俺が良いって言ってるんだ。旦那の言葉は信じるものだぞ?」

「……はい」

 小さく返事をしたミルフィーの頬を一撫でした俺は、滑らかなおでこにキスをした。

「腰が治ったら、今度は俺の番だからな?」

「はい……覚悟はできています」

「おっし。恥ずかし~い格好、いっぱいしてもらおうっと! あ、それと決めたぞ!」

 何をされるのか、ちょっとだけ不安そうに見上げながらも、嫌だとは言わなかった。騎士としての心がそうさせるのか。何を言われても受け入れようとする意志を感じる。

「エッチの時は、ティラミスって言うこと! 約束しないなら今後いっさい、俺は抱かせないぞ?」

「……え?」

「エッチの時だけ特別に呼ばれるってのも、良いな~って思って。俺だけが知ってるみたいでさ。な! 約束だぞ?」

「あの……!」

 硬い頬を撫で続ける俺を見上げながら、綺麗な眉をキュッと内に寄せている。小首を傾げて話を促せば、俺の頬に手を添えてきた。
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