【完結】カフェ店長の困惑~彼を拾った夜から甘く攻められ溺れていくまで~

はなたろう

文字の大きさ
19 / 25

18. 梨夏とのデート

しおりを挟む
何事もなかったようなソラとの日常。それなら、忘れたふりをしよう。それで、いいじゃないか。

そう思いながら、数週間が過ぎた。


5月の晴れた昼下がり。
俺は梨夏に引きずられるようにして、都心の高級デパートに来ていた。

落ち着いた雰囲気のフロアで、梨夏は煌びやかなフォーマルドレスを次々に手に取る。時折スタッフに話しかけ、試着室に入ったり出たりを繰り返す。


「なんで、そんな嬉しそうなんだよ」


俺は小声で不満をこぼす。


「あら、圭人とデートなんて久しぶりじゃない」

「何がデートだよ」


まるで聞こえないふりをして、胸元が大胆に開いた黒いワンピースを当ててみせる。


「これは?」

「エロすぎだろ」

「そうかしら? じゃあ、こっちは?」

「……あのさ、元婚約者の結婚式にワクワクするなよ。それに、さっきから派手過ぎる。夜の蝶になる気か?」

「あら、これも仕事よ?取引先の偉い方々のお酌係、つまりホステス代わりだもの」

「だったら、なおさら露出は控えろよ。どこぞのオヤジたちに色気を振りまくな」


俺も参加する以上、そんな梨夏を見たくはない。


「あら、ヤキモチ?」


核心を突かれた。
そうだ、ソラと梨夏の関係に、俺はソラだけではなく、梨夏にもまた、微かに嫉妬していた。


「まさか」

「なんだ違うの?残念ね。じゃあ、これはどう?」


そう言って梨夏は、モスグリーンのシンプルなドレスを身に纏い、試着室から現れた。

透き通るような肌とすらりと伸びた背筋を引き立てるそれは、まるで梨夏のために仕立てられた一着のようだった。


「どうかしら?」

「……うん、きれいだよ。似合っている」


俺の正直な言葉に、梨夏はふっと微笑んだ。


「次は圭人よ」

「え、俺はいいよ」


昨年、友人の結婚式で着たスーツがある。3点セットで29.800円の格安スーツだ。


「あなたね、新郎の弟で、社長の次男なのよ? 相応のスーツで参加しないとダメじゃない。それに、隼人からも『いいスーツを見立ててくるように』って業務命令が出てるのよ」

「な、なんだよ、それ」


デートとか言っておいて、隼人の差し金かよ。


「いいから、ついて来なさい」


梨夏に腕を引かれ、メンズフロアへ。


「ね、これなんてどう?」


梨夏は俺の体に合わせてジャケットを持ってくる。ネクタイの質感やシャツの襟の形まで、真剣に悩んでいる。


自分のドレスを選んでいたときより、ずっと楽しそうな横顔だ。



――よかった。笑ってて。


つまらない嫉妬を少し忘れ、楽しそうな横顔に、俺の心はじんわりと温かくなる。



あの夜は、泣いていから……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

彼の想いはちょっと重い

なかあたま
BL
幼少期、心矢に「結婚してほしい」と告げられた優希は「お前が高校生になっても好きな人がいなかったら、考えてやらなくもない」と返事をした。 数年後、高校生になった心矢は優希へ結婚してほしいと申し出る。しかし、約束をすっかり忘れていた優希は二ヶ月だけ猶予をくれ、と告げる。 健全BL 年下×年上 表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/140379292様からお借りしました。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...