【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

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♯1

3. サウナでは流せない煩悩

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音楽番組の収録を終えたあと、伊勢と湊さんはそのまま雑誌のインタビューへ向かった。

ぽっかりと空いた時間をどうしようか。考えていると、蒼真から声をかけられた。


「プライベートサウナでいい店あるけど、一緒にどう?」

「サウナか、いいな」

「今日は車で来たから、片倉が助手席に座ってよ。運転の練習になるからさ」


最近、運転免許を取得したばかりの蒼真は、車に乗るのが楽しいらしい。


「そういえば、車は買ったのか?」

「いや、まだ親の車を借りてる。でも、20歳の誕生日には、奮発していい車を買うよ」


そうか。コイツまだ10代だった。オレより身長も高く落ち着きがあるから、つい年下というのを忘れてしまう。


「悶々と悩むことがあるなら、汗でも流したら、スッキリするかもよ」


蒼真の意味深な言葉に、オレは少し戸惑った。


「早く行こうぜ」

「え、ああ」


他意はない。だよな?
まったく、末っ子のくせに、見透かしたような顔しやがる。




都心のビルの一角にある個室サウナは、ラグジュアリーな空間が売りらしい。

木の香りが程よく漂う。熱い空気が肌にまとわりつき、じわじわと汗が噴き出す。


「はぁ、久しぶりだけど、いいなぁ。サウナ」


蒸気に包まれた小さな空間で、心地よい暑さに気分よくしていると、蒼真が低くつぶやいた。


「伊勢と湊さんは、ベッタリだな」


楽屋でのやり取りの話だろう。


「湊さんは、TOMARIGIの現場マネージャーだけど、実際は伊勢の専属マネージャーみたいだよな」

「まぁ、個人の仕事も多いからな」


昨年のBLドラマが当たり、すぐに続編の映画が制作された。このあとも、主演ドラマのオファーは絶えない。


「伊勢が湊さんを、独占したいだけだろうね」


口にしてから、自分で苦笑する。言葉にすると、余計に重くて辛い。


「ずっと一緒にいるよな。呆れるより感心する」


オレも蒼真も、誰かと四六時中一緒にいるのは苦手なタイプだ。でも、あの2人にとっては、ごく自然な距離感なんだろう。


「片倉ってさ、裏表がなくて、明るいイイヤツだな」

「え、急に褒めるなよ。気持ち悪いな」

「でも実際は、物分かりがいいフリしてるだけ」


ぐっと息が詰まる。思わず返事が遅れた。


「……っ、なんだよ急に」

「いかにも、3人兄弟の、真ん中って感じ」

「な、うるせえな。一人っ子には分からない気苦労が、色々あるんだよ」


蒼真はタオルで汗を吹きながら、サウナの中でも涼しげな表情だ。


「無理して笑ってるの、しんどそうだなって、思ってるだけ」


言葉が出てこない。代わりに、汗が頬を伝う。

やっぱり、バレてる。


「俺は、TOMARIGIを大事にしたい。ファンもスタッフも、俺たち自分自身もね」

「蒼真……」

「伊勢と片倉、どっちが欠けてもいやだ」


その一言で会話は終わった。けれど、心の奥にひりつくものが残ったまま。


「さて、水風呂にいこうか」

「あ、ああ。そうだな」

 
バルコニーに置かれた水風呂に移動する。


サウナを出て、冷たい水風呂に身を沈める。数秒後、水しぶきをあげて、蒼真が立ち上がった。


「はぁーー、気持ちいい!」


蒼真の細くしなやかな身体は、年上の女性に大人気で、今年の抱かれたいランキングに3位に入っていた。この調子でいけば、来年は1位かな。


タオルで身体を拭く蒼真の後ろ姿。
ほどよく筋肉の付いた健康的な肢体。鎖骨のラインを水が伝う。


伊勢は、もっとしなやで色が白くてーー


ふと、伊勢の身体と蒼真の後ろ姿が、脳内でリンクする


水風呂で火照った体を冷やしたはずなのに、また熱と悶々が同時に襲ってくる。


ああ、重傷だな。思春期の男子中学生かよ。


「もう1セット、入って来る!」

「え、大丈夫か?」


蒼真を直視しないよう、オレは再びサウナ室に戻った。

汗をかいて、煩悩も流しきってしまえたらいいのに。でも、結局それは叶わなくて、オレはグッタリしたまま、次のラジオ収録へ向かった。
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