夫が愛する妾との子供を認めない私は酷い悪女ですか?それならどうぞ、お好きになさって旦那様 〈ルイディアとマートルの日常〉

はなたろう

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結婚生活 2年4ヵ月 ~愛すべきは雑草? ~

枯れた庭園と詐欺師

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数日が過ぎました。


使用人を密かに街の様子を探らせた、その翌日です。


「ルイディア様!大変ですわ!」


朝食後のお茶を飲んでいた所へ、マルス子爵婦人の悲鳴が響きました。私はカップを置くと、眉をひそめて彼女を見た。


「どうしたの?そんなに慌てて」


こんなに慌てているのは、大変めずらしいことです。


「て、庭園が、ルイディア様のバラ園が……、なんと、見るも無残な姿に…!」


その言葉に、私の血の気が引きました。

私は返事をするより早く席を立ち、庭園へと走りました。淑女たるもの、はしたなくスカートの裾をひるがえすなんてーー、いえ。今は緊急事態です。


「な、なんてこと!」


私の愛する庭園は、まるで焦土と化していました。


ここには、秋に咲くバラが植えてありました。夏のうちに、不要な蕾を剪定をしなければ。そう、庭師が話していました。

深い緑は消え、土色の不毛な大地が広がっています。夏の終わりに訪れる、干ばつで焼かれたかのよう。


「あ、ああ、そんな」


私の愛する庭園が…私の愛するバラたちが…!


その時、庭園の真ん中から、泥だらけになった旦那様が、満面の笑みでこちらに手を振った。


「ルイディア!見てくれよ!僕が『奇跡の魔法液』を撒いたら、雑草が全部消えて、庭がびっくりするくらいキレイになったんだ!」


旦那様が指差す先には、確かに雑草一本ない、完璧に手入れされた庭園(の残骸)が広がっていた。


「どうしたの?ルイディア、顔色が悪いね」


旦那様がどれだけ無知で愚かなのか、そんなことを忘れていた自分が情けない。自分への怒りで、震えてきました。


「え、トイレかい?我慢しないでよ」

「違います!」

「な、なんで怒るの?」

「旦那様。あなたは…一体何をなさいましたの?」


私は冷たい声で尋ねた。旦那様は、私のただならぬ雰囲気に気づき、顔を青ざめさせた。


「え、あ、いや、僕はルイディアを喜ばせたくて…」

「喜ばせる?この焦土と化した庭園を見て、私が喜ぶとでもお思いですか?私の愛するバラが、一本残らず枯れてしまったというのに!」

私の声が、庭園に響き渡る。旦那様は、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。

「バラ?え、雑草じゃないの?」


そのときです、


「お嬢様!ご報告があります」


私が銅貨を握らせて、街に送り出した使用人だ。


「ローズという者は、すでに街から姿を消しております。それに、最近街では、あの女に高額な商品を買わされた者、そして、その美しい容姿に惑わされた男たちが、金目のものを巻き上げられたと、嘆き悲しんでいるそうです」

「え、ローズが?」

「どうやら、街を股にかける詐欺集団の一員だったとのこと!」

「なんですって…!」


私の怒りは頂点に達した。


「素朴で地味な女の子、でした?あの発言は、何だったのです?」

「ええ、ローズは妖艶なんかじゃないよ。僕がはじめての相手だって言ってたもん」 


旦那様はそう言い放った。その言葉に、私の全身の血管が沸騰するような怒りが込み上げた。 


「なんですって?」 

「あ、しまった!」 


旦那様は口を両手で覆い、必死に後悔の念を表情に滲ませる。遅すぎるわ!


「高額商品を買わされ、その下半身まで、もてあそばれたなんて。侯爵家の恥をどこまで晒せば気が済むのですか!その女は、今頃、旦那様のことを笑いものにしていることでしょうね!」

「そんなぁ」

旦那様は、地面にめり込むほど深く頭を下げた。その姿は、まるで夏の暑さにやられたかたつむりのようだ。


そのとき、私は庭園の真ん中に咲く、一輪の小さな白い花に気づいた。旦那様が「奇跡の魔法液」を撒いても、唯一生き残った、その花。


「旦那様。この花は、あなたの愚かさに耐え、生き残ったようですわね。しかし、残念ながら、この花はただの雑草です、不要なんです」


私はそう言うと、その白い雑草を、ブチッと音を立てて引き抜いた。


「ひぃぃぃぃぃ!」


旦那様の悲鳴が、夏の空にこだまする。


「旦那様。あなたは、私が愛するバラを全て枯らし、私の心を傷つけましたわ。その上、詐欺師の女に騙され、侯爵家の名誉まで傷つけた」


私の言葉に、旦那様は顔を真っ青にして、震えながら小さく頷いた。


「その代償として、屋敷中にあるすべての雑草を、一本残らず抜いてくださいな。あら、もう「奇跡の魔法液」はないようですから、その両手でしっかり抜いてくださいね」

「ええ!やだよぅ」

「お黙りなさい!」

「はい!」

「庭園が元の美しい姿に戻るまで、寝室に入ることを許しません」

「そんなぁ!僕、どこで寝ればいいのさ」

「納屋で寝たらどうでしょう」

「え!」

「あら、納屋はお好きではないですか?」


ふふ、メイドのマリエが引きっていますね。いいのです、あなたが、気にする必要はありませんよ。


旦那様は、恐怖に顔を引きつらせながら、震える手で小さく頷いた。
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