夫が愛する妾との子供を認めない私は酷い悪女ですか?それならどうぞ、お好きになさって旦那様 〈ルイディアとマートルの日常〉

はなたろう

文字の大きさ
10 / 29
〈番外編〉カリーヌの帰省

〈後編〉マルス子爵夫人という女

しおりを挟む
屋敷を出ると、門から1人の女性が入って来ました。

ふっくらとしたお腹、手には街で買ったらしい荷物を持ってしました。


「お、奥様!」


私に気がつくと、驚いて荷物を落とした。ガラガランッと、キレイな音色が響く。


「どうして、急にこちらへ?」

「あら、私が家に帰ると何か不都合があるの?それとも、ただのメイドのあなたの許可必要かしら」
   
「そのようなことは、ございません」


両手でお腹を抱えるようにした。私が危害を加えるとでも思うのでしょうか。

これでも、子供が欲しいと何度も思い、期待と落胆を繰り返す日々を長く過ごしました。だからこそ、妊婦を見ると羨ましくもあり、尊敬もあり、慈しむ気持ちもあるのです。


主人の愛する妾のお腹の子供には、何の恨みもないのです。


「会えたのは丁度よかったわ。マルス子爵には伝えましたが、屋敷の人事整理をいたします。簡単に言えば解雇です。あなたと、あなたの母親も、早々に荷物をまとめてください」

「奥様!」

「2度は言いません。僅ですが退職金はお渡しします。半年は暮らせるでしょう。田舎でのんびり過ごされてはどうですか?」


半年あれば十分ですね。


「あなたのお腹の子供は、養子として、私と主人の子供とします」

「そんな!たとえ旦那様とお会いできなくとも、子供は私が育てます!これまでの不貞はお詫びいたします。私にできることなら償います。退職金もいりません。ですから、お願いいたします、この子は、子供は奪わないでください……」


女性とは誰でも、母親になると強くなるのだろうか。

子供を抱えた庶民が、どう生きてくというのか。貧民街で身体を売るのが目に見えているのに。


「子爵家の大事な子供のために、乳母が必要です」

「え?」

「半年後、子供を連れてここへ戻りなさい。ただし、子供に自分が母であることを、伝えることは許しません。ただの乳母と主の子供として接するのです。期間は死ぬまで。あなたに選択肢はありません。それが、私の主人とメイドのあなたが犯した不貞行為の代償です」


それでも、子供の側にいて、成長を間近で見守ることができるのです。


「これ以上の話は不要です。早急に出ていきなさい。この屋敷には、妊婦はいませんからね」


この後は王都に行き、養子縁組の手続きをしなければなりません。子爵家から王都は馬車で2日かかります。急がなければ、侯爵家に戻る日が遅くなってしまいます。


お嬢様とマートル様が仲良くされていればいいのですが、少しばかり心配です。


「無事に出産されることを望みます」


私の居場所はここにはありません。


ルイディア様の側こそ、私のいるべき場所なのです。


「さぁ、帰りましよう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。 結婚だってそうだった。 良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。 夫の9番目の妻だと知るまでは―― 「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」 嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。 ※最後はさくっと終わっております。 ※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

完結 私は何を見せられているのでしょう?

音爽(ネソウ)
恋愛
「あり得ない」最初に出た言葉がそれだった

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

処理中です...