先輩アイドルに溺愛されて、恋もステージもプロデュースされる件 <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

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ステージ 1 〈高校編〉

13. 終演後の憂い

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ライブの最後、花火が夜空に盛大に打ち上げられ、会場全体が歓声に包まれた。


終演後、ステージから降りても、胸の高鳴りが収まらなかった。照明、歓声、五感全てに余韻が残っている気がして、足もとがふわふわする。


何より、さっきのサプライズが衝撃すぎた。

TOMARIGIに新メンバーが追加される?しかも、今日のステージにいた候補生から?
そんな話、聞いたこともない。夢みたいで信じられない。


「蒼真先輩!」


人混みをかき分けて声をかける。すぐそこに彼がいた。汗を拭いながらスタッフに囲まれている。


「悪いな、急いでるんだ」


手を伸ばしかけた瞬間、マネージャーにさえぎられる。

ほんの数メートル先にいるのに、ガラス越しみたいに遠い。

言葉を探すあいだに、TOMARIGIのメンバーは車に乗り込み、次の現場へと送り出されていった。深夜の生放送に出演するらしい。ライブが終わってすぐなのに。

さっきまで。あんなに近くで光を放っていたのに。手を伸ばせば届きそうだったのに。その背中はあっという間に遠ざかっていった。


楽屋に戻ると、候補生みんなが集まっていた。


「みなさん、驚かれたでしょう。メンバー選考の詳細は、あらためて連絡します。今日はお疲れさまでした!」


スタッフの声が響く。これでは肝心なことは何ひとつ分からない。


仕方なく、帰り支度をしているときだ。背中に、ドンという衝撃があった。


「調子乗んなよ」


振り向けば、同じ候補生のひとり。ダンスの世界大会にも出たことがある、実力者のひとりだ。

その隣には、彼に同調する候補生たちが数人、俺を刺すような視線で囲んでいた。


「蒼真さんに気に入られてるから、メンバーに選ばれる思ってるんだろう」


そのとき、隣からカイリが助けに入ってくれた。


「ツバサ、帰ろうぜ」


候補生たちは舌打ちをして去っていった。


「大丈夫か、ツバサ?」

「うん、ありがとう」


カイリは何も聞かずに、ただ静かに俺のそばにいてくれた。その優しさに甘えて、俺は何も言えなかった。


帰りの電車の中、俺はスマホを握りしめていた。

あのステージで向けられた視線が、自分の思い違いじゃないと確かめたい。

しかし、蒼真先輩から連絡は届かない。


ライブ前夜。胸を焦がすように近くに感じていた距離が、ひどく遠く思えた。

あの瞬間を忘れたくない。


「蒼真先輩……」


ポツリと呟く声は、誰にも届かない。

会いたい。話したい。
もう一度、あの光が、本物だったと確かめたい。
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