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ステージ 1 〈高校編〉
17. 甘い約束
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ファン投票の結果発表から数日後、オレの生活は急に慌ただしくなった。
高校生活、受験勉強、ダンスレッスン、新メンバー選考の課題。1日が24時間じゃとても足りない。
変わったことはもうひとつ。
時々、蒼真先輩のマンションを訪れるようになった。
先輩は「集中できる環境で勉強したら?」と、言ってくれたが、正直、緊張しすぎて参考書どころじゃない。
でも、側で新曲の作詞や、ドラマの台本を読んだり、憧れのアイドルのオフショットを見れるのは、ちょっと嬉しい。
オレだけの特権かな。
季節は冬になった。
蒼真先輩の部屋は、白とグレーを基調としたシンプルで洗練された空間だった。でも、部屋の隅には観葉植物が置かれていたり、ソファには柔らかなブランケットが畳んであったりして、少しだけ先輩の生活感がにじみ出ている。
向かい合って座り、参考書を開く。でも、まったく頭に入ってこない。先輩の視線が、時折オレの顔や手元に注がれるのを感じるからだ。そのたびに、心臓が跳ね上がる。
「集中できません」
先輩がふっと笑った。
「ごめん、ツバサがかわいくて」
「もう、やめてください」
「少し休憩するか」
蒼真先輩は、オレのためにマグカップにココアを淹れてくれた。その優しさに、オレの胸は温かくなる。
「ありがとうございます…」
そう言って、先輩はオレの頭を優しく撫でた。その手が、オレの髪をゆっくりととかす。その仕草に、オレは思わず目を閉じてしまった。オレをそっと抱きしめた。
「うーーん、まいったな」
「え?」
耳元で囁くような先輩の声。
「俺の理性も限界だな。春まで待てないかも」
「先輩…?」
「それに、未成年だしな」
ぶつぶつと自問自答している。拗ねたような顔が、少しだけ可愛く見える。何を言いたいかは、流石に理解した。
「合格発表と最終審査。それに、ツバサの誕生日が同じ日、だよな」
「本当ですね。驚いています」
「その日の夜は、外泊できる?」
「え?」
「志望校合格、TOMARIGIの新メンバー決定。18歳の誕生日、全部まとめてお祝いさせて」
そうだ、誕生日だ。
先輩はオレを抱きしめたまま、そのままソファに座った。オレは先輩の膝の上に座るような格好になり、先輩の腕がオレの腰に回された。
「それまで、おあずけだな」
蒼真先輩は、オレを抱きしめる腕に、さらに力を込めた。その強い腕の中にいるだけで、オレの心は満たされていく。
「……オレ、ちゃんと合格します。だから、その日を迎えたいです」
小さな声でそう告げる。
「約束だな」
低い声が、耳の奥に残る。
オレは胸が熱くなるのを感じながら、強くうなずいた。
その瞬間、未来が少しだけ近くなった気がした。
高校生活、受験勉強、ダンスレッスン、新メンバー選考の課題。1日が24時間じゃとても足りない。
変わったことはもうひとつ。
時々、蒼真先輩のマンションを訪れるようになった。
先輩は「集中できる環境で勉強したら?」と、言ってくれたが、正直、緊張しすぎて参考書どころじゃない。
でも、側で新曲の作詞や、ドラマの台本を読んだり、憧れのアイドルのオフショットを見れるのは、ちょっと嬉しい。
オレだけの特権かな。
季節は冬になった。
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向かい合って座り、参考書を開く。でも、まったく頭に入ってこない。先輩の視線が、時折オレの顔や手元に注がれるのを感じるからだ。そのたびに、心臓が跳ね上がる。
「集中できません」
先輩がふっと笑った。
「ごめん、ツバサがかわいくて」
「もう、やめてください」
「少し休憩するか」
蒼真先輩は、オレのためにマグカップにココアを淹れてくれた。その優しさに、オレの胸は温かくなる。
「ありがとうございます…」
そう言って、先輩はオレの頭を優しく撫でた。その手が、オレの髪をゆっくりととかす。その仕草に、オレは思わず目を閉じてしまった。オレをそっと抱きしめた。
「うーーん、まいったな」
「え?」
耳元で囁くような先輩の声。
「俺の理性も限界だな。春まで待てないかも」
「先輩…?」
「それに、未成年だしな」
ぶつぶつと自問自答している。拗ねたような顔が、少しだけ可愛く見える。何を言いたいかは、流石に理解した。
「合格発表と最終審査。それに、ツバサの誕生日が同じ日、だよな」
「本当ですね。驚いています」
「その日の夜は、外泊できる?」
「え?」
「志望校合格、TOMARIGIの新メンバー決定。18歳の誕生日、全部まとめてお祝いさせて」
そうだ、誕生日だ。
先輩はオレを抱きしめたまま、そのままソファに座った。オレは先輩の膝の上に座るような格好になり、先輩の腕がオレの腰に回された。
「それまで、おあずけだな」
蒼真先輩は、オレを抱きしめる腕に、さらに力を込めた。その強い腕の中にいるだけで、オレの心は満たされていく。
「……オレ、ちゃんと合格します。だから、その日を迎えたいです」
小さな声でそう告げる。
「約束だな」
低い声が、耳の奥に残る。
オレは胸が熱くなるのを感じながら、強くうなずいた。
その瞬間、未来が少しだけ近くなった気がした。
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