【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話

凍星

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第5章 ◇怒涛の 1st WEEK

◆1 イベントの始まり

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――『7/1 勝負の始まり。今日から、毎日がイベントになる』



遠く、近く……

何かを告げる断続的な振動音が、眠っていた意識を揺り動かす。

俺はベッドの中で目を覚ました。
この時期ならではの気怠さも手伝って、もっと眠っていたい欲求が押し寄せてくる。
夏用の掛け布団を巻き込むように手繰ると、人肌の温もりに触れた。
隣りでは泉水さんが小さな寝息を立てていた。
寝顔をよく見ようと思って、起こさないように注意しながらベッド上をもぞもぞと移動する。

泉水さんの手に、そっと自分の手を重ねてみる。
眠っている今はさすがに指先も温かい。けれど、その体温はいつも少し低くて、冬場は俺の身体が湯たんぽ代わりになっていた。一緒に夏を過ごすのは初めてだが、今の時期は寒がりの泉水さんの方がラクそうだよなと……小さく笑う。

今日は、月曜日の朝。

泉水さんが店長代理を勤めるカフェ『セレスタイト』はお休みだ。
早起きしなくていい月曜日の朝を、俺の家で2人で迎えるようになって半年以上が過ぎた。

閉じられた長い睫毛。
少しクセのある柔らかい髪。
相変わらず愛しくて、ずっと見ていられる自分ってどうなんだろう……と自問自答したりしつつ。

泉水さんのトラウマは大分薄れたと思っていいのかな、と。昨夜の甘い密やかな時間を思い出していた。
かなり大胆な姿も見せてくれるようになって……今の俺は、思い切って自分の腕の中に飛び込んでくれた泉水さんに、付き合う前よりも夢中で。むしろ自分の方が溺れる日々なんじゃないかと、昨夜は本当にそう思った。

どうしようもなく、この人が欲しいという激情を呼び起こされて、自分がまだまだ飢えていると――改めて気付かされたりもした。

愛情に飢えた俺。
好きな人をどこまでも独占して、自分の好きにしたい欲。何処にも行かないでと縋る、子供のように純粋で利己的な願望。

(俺の中に隠してる、まだ泉水さんに曝け出せていない欲望が……秘密の扉から溢れ出た感じ)

リミッターが全解除されたら、自分の身が危険だって分かってないの?……なんて。
少年ぽさが未だに残るあどけない寝顔を見詰め、その頬をツンと指で突いた。

困った人だよね、本当……

柔らかな髪を、指の背でそっと撫でる。
慈しむように触れても、泉水さんは目を覚まさない。
すっかり安心しきっている姿に、悪戯心いたずらごころが湧いてしまう。

(……どこまでやったら起きるんだろ?)

そうっとにじり寄って、唇にサッと触れるだけのキスを落としてみた。
すぐに離れる。

……まだ目覚めない。

もう一度――
温かくて柔らかくて、心地良い。
薄い敏感な皮膚を通して感じる人肌は、どうしてこんなに艶めかしいんだろう。
今度は唇を舌で割って、中に入り込んでみる。試すだけのつもりが、いつの間にか本気のキスになっていくのは……当然といえば当然の流れだ。
音の出る口付けを繰り返し、眠り姫の唇を思いのまま好きにする。

「ん……っつ」

流石に目を覚ました泉水さんが身体を強張らせるのも構わず、そのまま舌を絡めて感触を味わっていたら。
背中に腕が回されトントン、と肩を軽く2回叩かれた。抗議しているのだと分かったが、俺はキスを止めなかった。


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