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第1章 恋するホストは苦悩する
◆7 舞い降りた救い主
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いつの間にか、誰もいなくなった静かなフロア……
2人きりで。
挑戦的な視線に囚われて動けない。
「どうなんだ?」
高城さんの顔が、答えを急き立てるようにまた近付く。
「う……」
ごくりと喉が鳴る。
本気の高城さんと、本気の勝負。
今までそれを躱し続けてきた俺は、情けないことに、すぐに「受けて立ちます」と言えずにいた。
高城さんが求めているのは、泉水さんに出逢う前の……がむしゃらで孤独な俺。
この人に勝って№1になるために必要なのは、あの頃の俺に戻ることなんだろうか――と。
そんな恐れと躊躇いが、俺の心の中にはあって。
――迷っていた時。
コツリ、と誰かの靴音が響く。
「……前々から思っていたんですけど」
「!」
レースの天幕が、ゆっくりと開かれる。
てっきり、俺と高城さんしか、この場にはいないと思っていたのに。
たった一人、誰も近寄りたがらないこの不可侵の個室スペースに、自ら乗り込んで来た人間がいた。
フロアの照明を背負うその姿は、輪郭が光に縁どられ、まるで地上に降り立った天使のように。美しく輝いて見えた。
高城さんの手がゆっくりと俺から離れていく。
「貴方と売上を競うにしても――少しアンフェアなんじゃないですか?」
「……それはどういう意味だ?」
高城さんが、そんな風に棘を含んだ声で――男らしく端正な眉を跳ね上げるのを見ただけで。普通なら脱兎のごとく眼前から逃げ出す。
それが、彼を知る人間の当たり前の反応だ。
だが。
この店で、ただ一人。
そんな彼を見ても平然と意見をぶつける人間がいる。
「俺に何か言いたいことがありそうだな――ユキ」
「はい、あります。聞いていただけますか?」
ニコリともせず、真顔で俺達の前に現れたのは、俺の後輩――俺が面倒を見ている未成年のホスト。
「ユキ」だった。
19歳でお酒も飲めない見習いホストだが、人形のような美少年ぶりと、お世辞抜きの率直な物言いで人気になっている。今や古参から新規まで色々な客に注目される『オブリビオン』の新星だ。
華奢な身体にブルーグレーのスーツ。
透ける素材のオーガンジーを重ねたふわりとしたリボンタイのブラウスが、ユキの繊細な美貌を際立たせている。
今日も相変わらず綺麗で、そして、恐れ知らずで。
いつも淡々としているのが常なのだが、何故か今日は――
(怒ってる……?)
高城に喰ってかかろうとする静かな殺気を感じて……俺は、顔から血の気が引いた。
「ユ、ユユ、ユキ?お前、何を――?」
「高城さんの、ヘルプの件ですが」
ユキは慌てて止めようとする俺を無視すると決めたらしく、高城さんだけに向かって話しをしようとする。
こいつめ……!本当に怖いモノ知らずだな。
2人きりで。
挑戦的な視線に囚われて動けない。
「どうなんだ?」
高城さんの顔が、答えを急き立てるようにまた近付く。
「う……」
ごくりと喉が鳴る。
本気の高城さんと、本気の勝負。
今までそれを躱し続けてきた俺は、情けないことに、すぐに「受けて立ちます」と言えずにいた。
高城さんが求めているのは、泉水さんに出逢う前の……がむしゃらで孤独な俺。
この人に勝って№1になるために必要なのは、あの頃の俺に戻ることなんだろうか――と。
そんな恐れと躊躇いが、俺の心の中にはあって。
――迷っていた時。
コツリ、と誰かの靴音が響く。
「……前々から思っていたんですけど」
「!」
レースの天幕が、ゆっくりと開かれる。
てっきり、俺と高城さんしか、この場にはいないと思っていたのに。
たった一人、誰も近寄りたがらないこの不可侵の個室スペースに、自ら乗り込んで来た人間がいた。
フロアの照明を背負うその姿は、輪郭が光に縁どられ、まるで地上に降り立った天使のように。美しく輝いて見えた。
高城さんの手がゆっくりと俺から離れていく。
「貴方と売上を競うにしても――少しアンフェアなんじゃないですか?」
「……それはどういう意味だ?」
高城さんが、そんな風に棘を含んだ声で――男らしく端正な眉を跳ね上げるのを見ただけで。普通なら脱兎のごとく眼前から逃げ出す。
それが、彼を知る人間の当たり前の反応だ。
だが。
この店で、ただ一人。
そんな彼を見ても平然と意見をぶつける人間がいる。
「俺に何か言いたいことがありそうだな――ユキ」
「はい、あります。聞いていただけますか?」
ニコリともせず、真顔で俺達の前に現れたのは、俺の後輩――俺が面倒を見ている未成年のホスト。
「ユキ」だった。
19歳でお酒も飲めない見習いホストだが、人形のような美少年ぶりと、お世辞抜きの率直な物言いで人気になっている。今や古参から新規まで色々な客に注目される『オブリビオン』の新星だ。
華奢な身体にブルーグレーのスーツ。
透ける素材のオーガンジーを重ねたふわりとしたリボンタイのブラウスが、ユキの繊細な美貌を際立たせている。
今日も相変わらず綺麗で、そして、恐れ知らずで。
いつも淡々としているのが常なのだが、何故か今日は――
(怒ってる……?)
高城に喰ってかかろうとする静かな殺気を感じて……俺は、顔から血の気が引いた。
「ユ、ユユ、ユキ?お前、何を――?」
「高城さんの、ヘルプの件ですが」
ユキは慌てて止めようとする俺を無視すると決めたらしく、高城さんだけに向かって話しをしようとする。
こいつめ……!本当に怖いモノ知らずだな。
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