詩「窓の開いた夜」

有原野分

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窓の開いた夜

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カーテンが揺れるとき
それは誰かが窓を開けたときだった
明け方の月の消え入るような美しさを
悲しみで眠れないあなたに届けたくて
風船に繋げた手紙に
そっと私のフルネームを置いていく
口中に溜まっていく
やり場のない怒りと
日に日に膨らんでいく恐怖を
もう一度貧相な生活の中であたためたあなたと共に過ごした部屋の中で
お酒の肴にできたらと

後悔はないはず

部屋から見える病室の
朝食の光景に朝を感じるなんて
私の感受性はいつも冬に凍りつく
ペン型の細い光に照らされた
私の喉の奥の奥に
きっと今でも幸せは眠っている
眠ることでしか幸福を感じられない
そんなときがくるなんて
だから私は科学を信じずに
再現性のない非科学を信じてきたのだ

切り花が胃痛を和らげて
久しぶりの顔にあなたを思い出す
風の音に故郷の海を感じる
あの人の声が聞こえてくる
みそ汁の香りが漂ってくる
耳が遠のいていく
また夜がやってくる
今夜は月が見えるだろうか
逃げられない過去の不安より
空白の未来が私を恐怖に誘う
やりきれない思いは喉を傷つけて
絡まる痰の中に青春が凍っていく
いっそのこと後悔すらも凍るように
今夜もそっと窓を開けようかしら
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