11 / 15
過去ログ
東の初仕事
しおりを挟む
はじめての仕事は、うさぎがたくさんいる森で、白い蝶を捕まえることだった。
夜に舞う月光蝶たちは、白く輝きながら鱗粉を撒いていた。
手を伸ばすとそっと翅を閉じ、おとなしく紙につつまれてくれるから、捕まえるのはたやすいことだった。
ただ、私たちのイロと呼ばれる力に引き寄せられた結果なので、どうしても翅に色がつく。
「蝶に付着するイロは、移動している間に吸収されて白くなるわ。気にせずどんどん捕まえましょう」
南さんはそういって、辞書に似た四角く白い本にどんどん蝶を挟んでいく。
「あ、蜘蛛蝶もいるじゃない。しかも赤の。おめでたいわ」
南さんは、虫かごに八本足の蝶を閉じ込めた。
★
白い蝶をたくさん捕まえ、僕たちは軽自動車に乗っていた。
僕は休憩も兼ねて、席のリクライニングを思いっきり倒し、ぐだぐだしていた。
「この蝶はどんなことに使うんですか?」
僕が尋ねると、南さんは微笑んで説明してくれた。
「この蝶は「冥府の犬(パピヨン・デ・ラ・モート)」よ。なんらかの死に近づくと黒くなって、死者の魂を載せてあの世(冥府)まで行くの。でも、世の中には、自分の力ではあの世まで行けない霊もいるから、そんな霊たちを救うのが私たちの仕事よ。優しく包み込んで、しばらく世の果て<ハンカ国ハテノ街>で遊んで納得してもらえたら、それぞれのあの世に電車で旅立ってもらうの。」
南さんはそういうと、蝶の翅のようなキラキラした破片が浮かぶソーダ水を僕に差し出した。
「大丈夫、本物じゃないよ。悪食パライソっていうお店で売ってる鱗粉ソーダ水。それに飴でできた蝶の翅を砕いて乗せると、飴の成分のおかげで、さわやかなペパーミントのジュレップが桃やリンゴのような甘くて濃厚な味になるの。」
僕はおそるおそる飲んでみた。おいしい。
よく冷えてて、甘くて、それにフルーツポンチのような複雑な甘みがある。
「南さん、ありがとうございます。」
「いえいえ。あと、もうご存知でしょうけど、私たちは“霊を慰めて”供養する存在なのよね。」
「はい。」
「今日は寮に帰ったら、私を死者だと思って抱いてくれない?」
「え、」
僕は声を詰まらせた。確かに南さんとのキスは気持ちいいし、じゃれあうのも好きだ。
でも、彼女には北という恋人がいる。
恋人がいる女性に手を出すのはいかがなものなのか?
ぐるぐると考えている間に、車は寮に着いた。
「さ、とっておきの素敵なことをしましょう。」
部屋に入ると、白いベッドに赤い布がかけられ、枕元にはシャンパンが置いてあった。
さらには浴室を覗くと、薔薇とクチナシの紅白の花弁が浮かんでいた。
誰が準備をしたのだろう、と一瞬考えたが、どう考えてもこれは南の相方のセンスだった。北め…。
「ねえ、もしかして北さん公認なの?」
「そうよ」
おどおどと訊く僕にさらりと答える南。お、大人の女性って怖い……!自分も成人女性だけど!
夜に舞う月光蝶たちは、白く輝きながら鱗粉を撒いていた。
手を伸ばすとそっと翅を閉じ、おとなしく紙につつまれてくれるから、捕まえるのはたやすいことだった。
ただ、私たちのイロと呼ばれる力に引き寄せられた結果なので、どうしても翅に色がつく。
「蝶に付着するイロは、移動している間に吸収されて白くなるわ。気にせずどんどん捕まえましょう」
南さんはそういって、辞書に似た四角く白い本にどんどん蝶を挟んでいく。
「あ、蜘蛛蝶もいるじゃない。しかも赤の。おめでたいわ」
南さんは、虫かごに八本足の蝶を閉じ込めた。
★
白い蝶をたくさん捕まえ、僕たちは軽自動車に乗っていた。
僕は休憩も兼ねて、席のリクライニングを思いっきり倒し、ぐだぐだしていた。
「この蝶はどんなことに使うんですか?」
僕が尋ねると、南さんは微笑んで説明してくれた。
「この蝶は「冥府の犬(パピヨン・デ・ラ・モート)」よ。なんらかの死に近づくと黒くなって、死者の魂を載せてあの世(冥府)まで行くの。でも、世の中には、自分の力ではあの世まで行けない霊もいるから、そんな霊たちを救うのが私たちの仕事よ。優しく包み込んで、しばらく世の果て<ハンカ国ハテノ街>で遊んで納得してもらえたら、それぞれのあの世に電車で旅立ってもらうの。」
南さんはそういうと、蝶の翅のようなキラキラした破片が浮かぶソーダ水を僕に差し出した。
「大丈夫、本物じゃないよ。悪食パライソっていうお店で売ってる鱗粉ソーダ水。それに飴でできた蝶の翅を砕いて乗せると、飴の成分のおかげで、さわやかなペパーミントのジュレップが桃やリンゴのような甘くて濃厚な味になるの。」
僕はおそるおそる飲んでみた。おいしい。
よく冷えてて、甘くて、それにフルーツポンチのような複雑な甘みがある。
「南さん、ありがとうございます。」
「いえいえ。あと、もうご存知でしょうけど、私たちは“霊を慰めて”供養する存在なのよね。」
「はい。」
「今日は寮に帰ったら、私を死者だと思って抱いてくれない?」
「え、」
僕は声を詰まらせた。確かに南さんとのキスは気持ちいいし、じゃれあうのも好きだ。
でも、彼女には北という恋人がいる。
恋人がいる女性に手を出すのはいかがなものなのか?
ぐるぐると考えている間に、車は寮に着いた。
「さ、とっておきの素敵なことをしましょう。」
部屋に入ると、白いベッドに赤い布がかけられ、枕元にはシャンパンが置いてあった。
さらには浴室を覗くと、薔薇とクチナシの紅白の花弁が浮かんでいた。
誰が準備をしたのだろう、と一瞬考えたが、どう考えてもこれは南の相方のセンスだった。北め…。
「ねえ、もしかして北さん公認なの?」
「そうよ」
おどおどと訊く僕にさらりと答える南。お、大人の女性って怖い……!自分も成人女性だけど!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる