【完結】独占欲の花束

空条かの

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5章『偏愛編』

99「姫以外何も見えぬのだ」(R)

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「……姫」

ふいに天王寺に声をかけられ、俺の心臓は跳ねた。そして天王寺はゆっくりと俺に近づく。

「入り口に車回しておくから、帰りは使って。それとこれは今日のお礼だよ」

そう言った尚希は、煌びやかなお店で買っただろう小さな白い袋を俺の傍に置くと、一人歩き出した。お礼って、あの高価なお店で買ったものなんか貰えないと、俺は慌てて後を追いかけようとしたけど、天王寺に阻まれてできなかった。

「困りますっ……って、天王寺……」
「契約は終了した、行かせるわけには行かぬ」
「でも、こんなの貰えない」
「要らぬのなら、捨ててしまえばよい」

バッサリと切られて、俺は中身がなんであるかもわからないけど、さすがに捨てる訳にはいかないと袋を握った。
行く手を塞ぐように立ち塞がった天王寺は、俺をただ見つめてくる。
静かにただ見つめられることに、俺の心臓はバクバクと激しい音を奏で初め、何か、何か言わないと、そう考えてはいるのに全然声にならない。それに東屋の屋根の影が微かに陰り、天王寺の表情がよく見えない。
心臓が壊れてしまいそうで、俺は尚希の言葉を思い出す。

「迎え用意してくれるって……。もう遅いし帰……ぁっ」

そう言いながら逃げるように天王寺の横を通り抜けようとして、俺は背後から天王寺に捕らえられた。背中から抱きしめられ、俺は足を止めてしまう。

「……胸が引き裂かれた」
「……」
「私ではない者が姫を奪う光景は、あまりにも残酷」

強く強く抱きしめながら、天王寺が声を絞り出す。その声が毒のように俺の動きを封じ、一切の抵抗を奪った。

「……天王寺」
「姫以外何も見えぬのだ。姫以外何も要らぬと、心が求めるのだ」
「なんだよ、……それ」
「そなたなしでは私はもう生きて行けぬほど、全てを囚われ、埋め尽くされ、何も映らぬ」

心臓が止まるかと思った。そんなプロポーズみたいな台詞を、世界が終わりそうな声色で囁かれたら、流されてしまうだろうと、俺は締め付けられた胸に痛みを感じた。
抱きしめられる温度にすごく安心する。
ずっと傍にいてやる、そう言えたらどんなにいいか……。でもそれはきっと天王寺がどんなに望んでも叶わない願いだってわかってる。将来は天王寺グループのトップで活躍する奴が、男の俺と一緒になるなんてありえない。許されないことだと、俺はちゃんとわかってるはずなんだ、それでも割り切れない想いが苦しい。
振り解くことができない天王寺の腕、それが俺に傍にいたいと自覚させる。

「…あっ!」

人が真剣に悩んでいたら、天王寺がパーカーの下から手を侵入させて、胸の小さな尖りを摘まんできた。
その上、腰を強く抱き寄せうなじを唇で撫でられる。

「……っ、んん……、何して……」
「尚希兄さんに触れられた跡など、今この場で消す」
「やめろって、……外……だろ、あっ」

このままじゃ確実にヤバいと思い、俺は天王寺の腕から逃げようとしたけど、天王寺の熱く硬くなったものを押し当てられ、動きが止まってしまった。

(なんてもの押し当ててくるんだぁぁぁ!)

一気に熱が呼び起こされ、俺は視点が合わないほど赤く染まる。
胸の尖りを捏ねるように執拗に責められ、甘い痺れが生まれると、吐息のような声が漏れてしまう。

「はっ……ぁ、ンっ……やぁ……」
「今触れておるのは、私である。この指と熱を忘れるでないぞ」

耳の後ろで囁かれ、俺は嫌でもその感覚を覚えさせられる。しかも下肢に熱が集まってしまい、もどかしい疼きを感じ始めてしまう。

「や、ぁ、あ……っ、もっ、離し……」

しつこく胸を撫で回され、時々耳に吐息を漏らし、首筋に舌を這わせ耳たぶを甘噛みされ、俺の身体は完全に天王寺に支配されていく。
尚希に触られた時とは明らかに違う熱が、自分の意志とは別に天王寺を求めている。

「そこばっか……ぁや…っ……もっと……」
「姫……」
「ばっ、ちが……、今のは……あっン」

なんて台詞を言ったんだ俺。『もっと』なんて、何考えてんだぁ~、と自己嫌悪に陥る中、天王寺が触発されて俺のズボンの中に手を差し込んできた。
下着の隙間から手を侵入させた天王寺は、直に俺のに触れてきた。下着を押し上げていた昂ぶりに指を絡められ、声が抑えられず、俺は必死に自分の指を咥えて声を殺す。

「私に感じておるのか」
「言うなっ……はっ、んんうっ……」
「随分と濡れておるぞ」

卑猥な言葉を掛けながら、天王寺はゆっくりとそれでいて強く上下に手を動かす。このままじゃ汚してしまうと身を捩れば、それを悟った天王寺が俺のズボンを下着ごと引き下ろしてしまった。
外気に触れた肌が、外だという現実を思い出させた。

「バカッ……、ここ外だって!」
「今は、二人だけである」

いくら誰もいないからって、外でこんなこと……。

「ンぅ……ぁあっ……触ん……っな、捲るなぁ……」

先端から溢れる体液を掬うように絡めて、天王寺は長い指で渦巻く熱を外へ外へと導く。それと同時にパーカーをめくり上げて背中を露にすると、なんの悪戯か舌を這わせてきた。
背後から抱きしめられたまま、勃ち上がった芯を強弱をもって擦られ、胸の飾りを刺激され、身体に舌を這わせられ、俺は甘く駆け抜ける衝動に嬌声を止められず、身体を撓らせる。

「あ…いや……やめ……はぁあっ……ぁあッ」

一際強く刺激を与えられ、俺は天王寺の手と東屋の中に熱を弾けさせてしまった。外で、しかも公園内にとんでもないものを爆ぜてしまった罪悪感に、俺は完全に脱力した。
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