【完結】最強魔力を隠したら、国外追放されて、隣国の王太子に求婚されたのですが、隠居生活を望むのでお断りします!

砂月かの

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第54話「水も滴るイイ男の再三の求婚」

「目が覚めたのかッ」
「アシュレイ王太子殿下?!」

そう、びしょ濡れ男の正体はアシュレイ。どうやら風呂に入っていたようなのだが、私の目が覚めたと報告をうけ、髪も乾かさず、適当に服を纏って全速力で戻ってきたとのことだった。
頬を濡らす水が、髪を覆う水が、滴り落ちる水滴が、やけにストレートな髪形も、纏うだけの服からチラッとみえる火照った肌が……、全部の色気が凄まじくて、とても直視できない。

(何なのこの人、女性を悩殺するつもりなの?! 水も滴るイイ男ってコレを指すのね)

男性なのに凄艶すぎるでしょうって、くらくらと眩暈がしそう。
というか、王太子殿下ともあろうお方が、そんな姿を平民に晒していけないと、私は机に見えた布を差し出す。

「髪を拭いて、きちんと着替えてからお越しください」
「俺がどれほど心配したか分かっているのか?」
「ご心配をおかけしたことについては、きちんと謝罪いたしますので」

とにかく目のやり場に困るので、早く身支度をと言えば、アシュレイはびしょ濡れのまま抱きしめてきた。

(おまけに、なんていい香りなの)

漂う清潔感溢れる香りに包まれる。

「無事でよかった」

力強く抱きしめてくるアシュレイは、心からそう言葉を吐きだし、

「アシュは、ずっとアリアの傍についていたからな」

と、ヴォルフガングが三日三晩傍に居たと言う。

(それって、ずっと寝顔を見られていたってこと?!)

信じられない、羞恥で死にそう。と、私は真っ青になる。ヴォルフガングから寝てるだけだって聞いてないの?! 瀕死の状態とかじゃないんだから、放って置いていただいて結構なんですけどぉ。
なぜか大ごとになっていることに、私はつい額を押さえてしまう。
そして、とっても大事なことを思い出す。

「ところで、結界は?」
「アラステア国に属したことにより、きちんと発動している」
「良かったわ」

もしもちゃんと張られていなければ、大勢の民が犠牲になるところだったと、ひとまず肩の荷が下りる。
ヴォルフガングが言うのだから、正常に発動したことは確信が取れる。
それから、ランデリックたちは此度の魔物襲撃に対する説明および、アラステア国に統合した経緯を国民に話すこと、各国への応援要請に対する謝礼、全てをアラステア国に受け渡す準備に追われているとも説明を受け、落ち着くまで元ライアール城でその対応をすると言われた。その後は、アラステア城に入り、配下として力を貸してくれるらしい。
レイリーンについては、意識を取り戻し次第、何らかの罰を与えると話していたが、現在目が覚める予兆は一切ないと聞いた。
あれだけの魔法増強アイテムを使用したのだから、命があるだけ奇跡だと、ひとまず親元に戻されたとも言われた。

(全部終わったのね)

全身から力が抜けるように、私はこれで全て収まったと、変な緊張感から解放された。
後は両国が解決すべきことだし、アラステア国には聖女の王妃様もいる。緊急処置として私が結界魔法をかけたけど、今後は王妃様が祈りを捧げることで結界が持続していくことも分かる。私の役目は無事終わったと、抱きつくアシュレイを引き離し、ベッドの上で正座して手をつく。

「私の役目は終わりましたので、お約束をお願いします」
「……ん? なんのことか?」
「まさかお忘れになったのではありませんよね!」

アシュレイが何のことか分からないと首を傾げれば、私は「信じられない」と叫んだ。
婚約者役を引き受ければ、お金と山奥に領土を譲ってくれると言ったのに! と、大声をあげれば、

「あっ……」

と、アシュレイはようやく思い出した。

「約束は守っていただきます」

これでやっと念願の隠居生活を満喫できる! 聖女様も健在だし、結界魔法は定期的に張るし、国が平和であれば、アシュレイだって好きな方とご結婚できるわけだし、私の役目はこれで終了。
問題はヴォルフガングだけだけど、きっと私と一緒に山奥で暮らすと言い出すと思うし、正体はドラゴンなんだから、むしろ一緒に連れて行く方が安全な気がする。一人より二人の方がなんだか楽しくなりそうだし、私の魔力を知っているというは暮らしやすい。
ここまでの道のりは長かったけど、ようやく私の願いが叶うのね。自由に誰にも迷惑かけずに、化け物扱いもされず、のんびり生活ができる。私の第二の人生は、きっとここから始まると感動していたら、ガシッと腕を掴まれる。

(この王太子殿下は、どうしてすぐに私を掴むのよっ)

出会った時からそうだけど、アシュレイはなぜかすぐに掴みたがる癖がある。女性に触れるときは許可を取りなさいよ、と、声を大にして言いたい。その掴み癖、治した方がいいんじゃないかしらと、逆に心配になる。

「アリア、俺は君を愛している。どうか俺と結婚してほしい」

デジャヴ? この台詞、どこかで聞いたことがあるわと、私はきょとんとアシュレイを見る。
聖女様も復活したし、代役を務めたことで、しつこい婚約者とも婚約破棄もできたでしょうに、なぜ、またこんな台詞を言われたのか分からない。

「婚約者役は終わったのですよね」
「役ではなく、本心から結婚して欲しい。君を心から愛してしまったんだ」
「……へ?」

掴まれた手に口づけをされて、私は何が起こったのか理解できず、口元を震わせる。
アシュレイ王太子殿下が私に本気で求婚してる、の? まさか、そんなことあり得ないわ。きっと魔法の力とドラゴンの力が欲しいだけ。
私の魔力も、ドラゴンも脅威になる。傍に置き、監視でもするつもりなのかもしれないと、私の目は徐々に細くなる。

「心配なさらなくとも、アラステア国に危機が迫ったときは、お力を貸します」

決して敵にはならないと断言する。ライアール国はもう存在しない、アラステア国に住まわせてもらうのだから、それは当然でしょうと、ヴォルフガングに視線を向ければ、なぜか深いため息を返される。

「我が娘ながら、困ったものだ」
「もしかして力を貸してくれないの?!」
「そうではない。アシュの気持ちを踏みにじるな」

そう言いながら、ヴォルフガングはそっと近づいてきて、私の頭に手を置く。

「だって、役を引き受けただけよ」

交換条件だってもらっているしと、ヴォルフガングを見上げれば、ヤレヤレとさらにため息を吐かれた。
我が娘はかなりの鈍感で困ったものだ。マリア、これはどちらに似たのだろうな? と、ヴォルフガングは、そっと微笑んでしまう。
アシュレイからは誠意が感じられた、だが、娘からは恋の気配はない。どうやら婚約者役からどうしても離れられないように見えた。

「アシュよ、娘は聖女ではないぞ」
「構わない」
「他に婚約者がいるのではないのか?」

婚約者役を引き受けるときに、しつこい令嬢がいると説明されたはずなのに、アシュレイは「アリアを騙した」と、白状した。

「騙したって……」
「ああでもしなければ、君に逃げられてしまっていただろう」

つまり、私を逃さないために嘘をついたと……。利用するために……。沸々とこみ上げる怒りが声に出そうになったその時、

「アリアには騙されっぱなしだったからな」

と、痛いところを突いてきた。
そう、出会った時から嘘ばかりついていたのは私で、結局逃げられないままズルズルとアシュレイと一緒に。そこまで思い出した私は、むしろ騙した数は自分の方が多いと、思わず口を閉じた。

「アリア、今一度、君に結婚を申し込む」

アシュレイはそう言って、私なんかに手を差し伸べた。私がもし、どこかの令嬢だったのなら、聖女だったら、この申し出を喜んで受けられたけど、ただの村人では、国民に示しがつかない。
名もない村娘と結婚するなんて、アシュレイが笑いものにされてしまう。しかも、ドラゴンと大聖女様との娘だと話したところで、一体誰が信じると言うの。大聖女様が現存していたのはもう何百年も昔の話。作り話にしても、笑える範囲を超えている。

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