いつか世界を救う、仔猫転生

行当遭遇(いきあたりばったり)

文字の大きさ
10 / 12

猫、初めての戦い。

しおりを挟む


「にっ!(えっ!?うそ、はやっ!)」

 まだ心の準備も何もできていないのにもう見つけたらしい。
こんなに簡単に見つかるほどにそこら辺にいるのだろうか?
フェン君が目の前の草むらに進み、その後ろについていく。
そして、聞こえた鳴き声。

「キュウ?(ん?)」

 そしてフェン君の股の間から覗き見えたそれは・・・、白いモフモフ。
相手はワラビーに似たウサギ。
白くて耳の長い二足歩行のネズミのような尻尾を持った小型の生物だ。
だが、僕の倍以上の大きさがある。
それに、やたら喧嘩腰に地面を強めに片足でタップしている。
かなり好戦的な生き物だ、もしかしたら逃げることを知らないのかもしれない。

「キュキュキュー。(おいおいおい、いくらなんでもこんなチビのくせに俺様に喧嘩売る気か!ナメてんのか、あぁ!)」

 いや、どうやら違ったらしい。
これ完全に僕が相手なのに怒っていらしゃる。
と、いうか・・・、こいつの言葉もわかるのか。

「いけ~、シャドウ!かみちゅけ~!」

「にぃー。(えっ?噛むの?)」

 いきなり噛めと言われても、どうやって?
近付くのも難しそうなんだけど・・・、それにあいつのタップしてる地面さっきから抉れてるんだけど。

「キュッ!(隙あり!)」

 そんなフェン君の命令に躊躇していた僕は、目の前のララットが急に地面を蹴って動いたのに反応することができなかった。
しかし、ララットの軌道はなぜかフェン君の5倍近い高さを弧を描くように山なりに僕の方に向かって来た。
いや、落ちてきた。
咄嗟の反応はできなかったが、上から落ちてくるものを横に避けるだけなので、然程難しくはなかった。
どうやら、力はあるが馬鹿なので使い方がわかっていないようだ。

「ギュェ!(ぐぇ!)」

 しかも、頭から地面に突っ込んだ。

「ああぁーーー。ばっちくなったーー。」

 フェン君が泥付きのララットを見て嫌そうにしている。
どうやら、ララットは汚れる前に倒すのが普通なようだ。

「キュ~~。(う~~。)」

「に、にぃー。(だ、大丈夫か?)」

 ララットは地面にぶつかった衝撃でダウンしている。
どうも足だけ強くて他はダメダメなようだ。
最初の獲物に選ばれるだけはある。
誰一人フェン君を心配しない理由がよくわかる。

「ばっちーけどいいか、シャドウとどめだ~!かみちゅけ~!!」

「に!にぃー。(えっ!やっぱり、噛まなきゃダメなの。)」

 息はしているが完全に気を失っているララットに噛んでとどめを刺す。
正直、日本人的には結構きつい行為だ。
寝ているウサギを殺せと言われてそんなにあっさりできる日本人は多くないと思う。
噛み殺せる奴はいないかも・・・いや、いてほしくない。
躊躇していると、フェン君が何を勘違いしたのか知らないが、ララットのほうに歩いていき首を掴んで持ってきた。

「もぉ~、シャドウはしょ~がないな~。」

 そういいながらララットについた泥を手で掘ろっている。
僕はありがたいけど全力でそうじゃないと叫びたかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...