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猫、命、奪う。
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僕が躊躇したのを汚いからだと勘違いしているフェン君の差し出したララットを前にして、どうしようか迷う僕にフェン君は何か思いついたのかはっとした顔をした。
「そーか!シャドウ、かみちゅきはこーすうんだよ~。」
そう言いながら、ララットの首辺りに口を近づけて噛む仕草を二度繰り返して見せたフェン君。
違う、それも違うんだよ!僕はいろいろと気を使ってくれるフェン君には、大変申しわけないけど全力でそうじゃないと心の中で叫んだ。
だが、この世界で生きていく以上避けては通れないことだ。
それは、わかっているんだけど剣やナイフで殺すのではなく、噛み殺さなければいけないのは少々難易度が高すぎる。
なので、僕は軽く噛んでまだ噛む力がないことをアピールしてこの場を乗り切ることにした。
「にぃ!(はむっ!)」
このとき、僕は忘れていた。
目の前にいるララットはまだ生きているということを。
突如、ララットは意識を取り戻し首をフェン君の方に180度回して雄たけびを上げた。
「(こんがきゃ!!はなさんかぁー!?がっ!!!)」
フェン君に向かって勢いよく振り返った、ララットではあったが首には少しだけ甘噛みしている僕がいることに気が付いていなかったようで、わずかに食い込んだ歯で自らの首を綺麗に掻き切った。
「んぎゅ!(んぐ!)」
僕の口の中に勢いよく流れ込んでくる生暖かくて鉄臭くて生臭い味が広がっていく。
僕はこの瞬間、目の前の命を奪ったことに気付いた。
頭の中にいろいろと流れ込んできたのだ。
きっと、レベルアップのようなものだろう。
しかし、そのことよりも相手の生命力のようなものが流れ込んでくる感覚が感じられたのだ。
気持ち悪いはずなのに同時に何か満たされるような感覚。それは人生では経験したことがなかった感覚だった。
そして、自分の牙がシャレにならない武器であることを知った。
神器フリースタイル、恐るべし。
僕は口を放し、開いたままの口から血を溢すように吐き出した。
「にぃ・・・(まっず・・・)」
「シャドウ、しゅっごいよ!カッコいい!!」
どうやら、フェン君にはララットの首をカッコ良く掻っ切って口から血を滴らせているように見えるらしい。
実際はただ、だーーーとしているだけなのだけど。
そして、僕はこの日、初めてこの世界で命を奪った。
それは、思っていたよりはつらくなかった。
元から、こんな人間だったのかは微妙なところだが、きっと、人ではなくなったことが影響しているのだと思いたい。
「そーか!シャドウ、かみちゅきはこーすうんだよ~。」
そう言いながら、ララットの首辺りに口を近づけて噛む仕草を二度繰り返して見せたフェン君。
違う、それも違うんだよ!僕はいろいろと気を使ってくれるフェン君には、大変申しわけないけど全力でそうじゃないと心の中で叫んだ。
だが、この世界で生きていく以上避けては通れないことだ。
それは、わかっているんだけど剣やナイフで殺すのではなく、噛み殺さなければいけないのは少々難易度が高すぎる。
なので、僕は軽く噛んでまだ噛む力がないことをアピールしてこの場を乗り切ることにした。
「にぃ!(はむっ!)」
このとき、僕は忘れていた。
目の前にいるララットはまだ生きているということを。
突如、ララットは意識を取り戻し首をフェン君の方に180度回して雄たけびを上げた。
「(こんがきゃ!!はなさんかぁー!?がっ!!!)」
フェン君に向かって勢いよく振り返った、ララットではあったが首には少しだけ甘噛みしている僕がいることに気が付いていなかったようで、わずかに食い込んだ歯で自らの首を綺麗に掻き切った。
「んぎゅ!(んぐ!)」
僕の口の中に勢いよく流れ込んでくる生暖かくて鉄臭くて生臭い味が広がっていく。
僕はこの瞬間、目の前の命を奪ったことに気付いた。
頭の中にいろいろと流れ込んできたのだ。
きっと、レベルアップのようなものだろう。
しかし、そのことよりも相手の生命力のようなものが流れ込んでくる感覚が感じられたのだ。
気持ち悪いはずなのに同時に何か満たされるような感覚。それは人生では経験したことがなかった感覚だった。
そして、自分の牙がシャレにならない武器であることを知った。
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僕は口を放し、開いたままの口から血を溢すように吐き出した。
「にぃ・・・(まっず・・・)」
「シャドウ、しゅっごいよ!カッコいい!!」
どうやら、フェン君にはララットの首をカッコ良く掻っ切って口から血を滴らせているように見えるらしい。
実際はただ、だーーーとしているだけなのだけど。
そして、僕はこの日、初めてこの世界で命を奪った。
それは、思っていたよりはつらくなかった。
元から、こんな人間だったのかは微妙なところだが、きっと、人ではなくなったことが影響しているのだと思いたい。
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