獣王の花嫁─ときは縁を結ぶ

しろがね はな

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 ギィン、ギィン!!!
 
 ガギッ!!
 
 ドスッ!!

 岩山に囲まれた道に金属が乱暴に打ち合う音と砂埃が何度も響き渡っては舞う。
 その度に倒れてゆくものの数々。
近道だ、と言われ他の馬車とは違う道にいつの間にか先導されたようだ。他の馬車はいない。
─明らかに狙われていた。精鋭部隊の護衛たちも応戦するが、相手は獣人。苦戦を強いられている。
 その中で2人の細身の少年─にみえる─たちは屈強な獣人達に対峙し、護衛の騎士すら守るように軽々と倒してゆく。
 さらに1人、少女─と成人の狭間くらいの娘が混ざっていた。
「あーあ、もう、せっかくの衣装が」
 1人の少年が言うが娘は全く気にしていない様子。自ら動きやすくしたドレスの裾の残骸が血に染まっている。
「それより、怪我は」
 もう1人が声をかける。容姿は先のひとりとそっくりだ。
「大丈夫よ─それより、守らなきゃ」
 浅い傷や擦り傷だけ。少女は微笑した。彼女の言葉にそれでは困るが、と少年はため息をついた。しかし少女は一向に気にしていない。後ろには数人の侍女と数名の護衛騎士がいる。3人とも臨戦態勢は崩していなかった。

「馬鹿な……!こんなはずでは……!」
 少し遠くにいた老いた獣人─おそらく人で言う貴族のお偉方であろう─は、目の前の光景にたじろぎ、自分の護衛を集め己だけ退却しようとする。

 ───が。

 振り向き、全身をこわばらせたようだ。
 強烈な威圧感で3人も残りの獣人も一斉にそちらを見た。

 老いた獣人とその部下達がブルブルと震え出し、武器を取り落としたり立っていられなくなり膝をつくものまでいた。
「ぉ……王……!?」
 王と呼ばれた人物の眼光は重く鋭く老人を射抜く。ひぃぃぃ!と老人も膝をついて頭を抱えた。
 辛うじて立っていた3人は姿勢を崩さなかった。
 (─王?)
 娘はチリチリとした空気の中で、その元となる人物を見る。
 視線に気づいたのかやや長めの黒髪を緩く縛った青年─獣人ではある─はチラと黄金きんの瞳をそちらにやり、再び視線を戻す。娘─姫はドキリとしたが、恐怖は感じなかった。

 王は側近や恐らく精鋭部隊に目配せし、指示をした。
「こ、こんな……こんなはずでは……!!」
 老獣人が絞り出すような呻きを上げた。
「なんでたかだか3人のニンゲンに……ニンゲンなんかにっ!!」
 シュッと冷たい何かが首元に当てられる。2人の少年たちはそれを白い目で見ていた。いつでも動けるよう、王の配下が来て3人を保護しようとするがひめを先に、と無惨に倒れた馬車の方へと頼んだ。

「わ……ワタシはッ!反対しておるのだ!脆弱で愚かなニンゲンが来るのを!」
 老獣人は叫びに近い大声で話し出した。
「大陸を無駄な争いに晒さぬ為にも……」
 チャッ
 つ、と一筋血液が流れる。今にも昏倒しそうな老獣人に王は氷のように問う。
「─では。お前のしたことは。正しいとでも言いたいのか」
 倒れた豪奢な馬車、散らばった荷物、犠牲になったニンゲン。王はチラとみながら言い放つ。
「これこそが争いの種になると思わんのか?国同士で取り決めた契約を破ることになると」
「わ……ワタクシめの他にも反対しておる者がいることはご存知のはず!それを無視してニンゲンなんかと政略結婚などとふざけた事をされる王が悪いのです!!ニンゲンなど我々の足下にも及ばぬ下等な生き物です!!その血を、我々誇り高き獣人の国に入れるなどもってのほか!!」
 王は何も答えない。
 ただ冷ややかに老獣人をみつめ─一瞬にしてその刻を摘んだ。
 重い音と嫌な音が混じりながらその骸は地面に墜ちた。
 王は血を払い剣をおさめる。

 2人の少年はじっとそれを見ていた。
声は恐らく姫にも届いていただろう。
 王は2人を見ると何かに気づいたようだった。だが、何も言わず部下に後処理を任せひめのところへ向かった。残りの護衛達や侍女長もハッとして彼女を守ろうとするが、ひめは優しく微笑み大丈夫、と落ち着かせた。
 王の救護隊が数名少年たちにも怪我がないか来て軽く様子を見、手当を施す。
 (厄介な国にきたもんだ)
 片割れのひとりがため息をつくともう1人が察したように苦笑する。それから
、決めたんだから仕方ない、とでもいうようにそっと笑いあった。

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