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6話 元公爵令嬢の冒険者面接
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とは言えだ。
もうすぐ夜になりそうなので、ひとまず今日の宿を確保しなければ。
冒険者ギルドへの冒険者登録は明日に、アイリスと一緒でいいか。
アンドリューさんと別れると、アイリスを連れて宿屋へ。
幸い、シングル二部屋が空いていたのですぐに借りさせてもらう。
今日の宿についての心配が無くなり、先に入浴を済ませたところで、宿屋の食堂で夕食ついでにアイリスと今後のことについて話し合う。
「さて、アイリス」
「はい」
食事の所作とか立ち振舞いが、まさに貴族のそれだよなぁ、アイリス。ついこの間まで公爵令嬢だったんだから、当然と言えば当然か。
俺みたいな、ルールもマナーもあったもんじゃない、暴力と狡猾さ、意地汚さで明日が決まるスラム上がりの冒険者とは、生まれてきた場所から違う。
そんな俺が、元とは言え公爵令嬢様を、冒険者として指南か……
「君は冒険者希望と言っていたが……そもそも、冒険者がどういう職業か、分かるか?」
「ギルドから発注された依頼を受けて、遂行・達成する職業です」
図らずも面接みたいな形になってはいるが。
「その通りだ」
実際のところは、ギルドから発注された依頼だけでなく、俺がアンドリューさんの『アイリスを冒険者として鍛えてほしい』と言う依頼を請け負ったように、個人間取引もある。
「冒険者は、文字の読み書きが出来ない子どもでも、申請さえすれば誰でもなれるくらいには門戸は広いが、その中でやっていくには魔物との戦闘もこなす必要が当然あるし、討伐した魔物を解体して、魔石を始めとする素材を剥ぎ取ることも必要だ」
君が考えているほど冒険者は楽な職業じゃないぞ、それでも冒険者になりたいのか?と暗に問い掛けるように、俺は冒険者になることの危険性を、自分自身での体験として語る。
「当たり前だが、魔物だってただ狩られるのを座しているわけじゃない。向こうだって生きるのに必死だからな、自分の命のためならなんだってしてくる。怪我や病気、死とは常に隣り合わせだ」
アイリスは姿勢を正しながら、黙って俺の話を聞いている。
その顔は真剣で、ただその場の思い付きで冒険者になろうと思ったのではないことが伝わってくる。
「こう言うのもなんだが、道楽で鳥や兎を狩るのとは大違いだ。……それでも、冒険者になりたいか?」
「はい」
即答だった。
まぁ、どれだけ危険であることを口頭で伝えても、実感は無いだろう。
何がどうであれ、本人のやる気が一番重要だからな。
「よし、分かった。なら、明日はまずギルドの出張機関で、冒険者登録。それから、必要な物資を買って、可能であればその日の内に簡単な依頼を受けてみようか」
「分かりました、頑張ります!」
やる気は十分そうだ。
俺としても、何か簡単な依頼を受けて、この都市周辺の生態系や植生物を知っておきたいところだ。
冒険者に必要なのは腕っぷしもそうだが、それよりも事前の準備と情報の方が大切だ。
知ることに損はない。知らないまま後悔するくらいなら、知ってから後悔する方がいい。
冒険者を目指してルイン達とスラム街を出て、陽の目を見るようになってから思い知ったのは、『自分達は何も知らない』ことだった。
文字の読み書きが出来ないと契約内容が分からないし、植物や魔物の図鑑が読めないと何もかも手探りになってしまう。
知らない・分からないばかりでは、悪意のある誰かに知らない内に騙されたり、責任を擦り付けられたりもする。
何も知らない意地汚いだけのガキは、なんとも無力なものだ。
だから、冒険者活動をする傍らで、知ること、学ぶことは貪欲に取り組んだ。
「んじゃ、明日に備えて今日はゆっくり休むとするか。明日は朝早くから動くぞ」
アイリスも慣れない旅をしていて疲れているだろうから、今晩の内にゆっくり眠ってほしい。
「では、おやすみなさい、リオさん」
「あぁ、おやすみ」
食事を終えたあとは、それぞれ借りた部屋へ戻る。
ぼふんとベッドの上に転がり込む。
「ふー……」
ここ二日は、不寝番だったり馬車の中で大勢と雑魚寝したりと、あまりゆっくり休める夜じゃ無かったから、今日はぐっすり眠れそうだ。
それにしても、この四日近くは色々とあった。
ルイン達【紺碧の刃剣】から追い出されて、アンドリューさんの商隊を護衛して、アイリスを助けて、そのアイリスとは明日から一週間ほど行動を共にすることになる。
しばしぼんやりと天井を見上げていると――思い出すのは、ルイン、スコット、ヒルダの三人と一緒にスラム街で肩を寄せあって生きてきた、過去。
あの頃は無力なガキで、なんにも持って無かったが、少ない残飯を分け合ったり、一枚しかないボロボロの毛布でくるまって暖めあったり、……時には盗みや殺人を働いたこともあったな。
四日前のあの追放に関しては、今でも納得していない。
叶うことならルインの顔をぶん殴ってやりたいところだが、そんな怒りはすぐに霧散した。
なんだかんだと言っても、俺にとってあの三人は"仲間“だったんだ。あいつら三人が俺をどう思っていたのかは知らないが。
俺が【紺碧の刃剣】から抜けた後は、恐らく俺よりも上の、銀級以上の冒険者を新たに引き入れているのかもしれない。
その新しい仲間と上手くやっていればいいんだが、三人は今、どうしてるんだろうなぁ……
少しだけ感傷的になったところで、いい具合に眠くなって来たので、灯りを消して眠ることにした。
もうすぐ夜になりそうなので、ひとまず今日の宿を確保しなければ。
冒険者ギルドへの冒険者登録は明日に、アイリスと一緒でいいか。
アンドリューさんと別れると、アイリスを連れて宿屋へ。
幸い、シングル二部屋が空いていたのですぐに借りさせてもらう。
今日の宿についての心配が無くなり、先に入浴を済ませたところで、宿屋の食堂で夕食ついでにアイリスと今後のことについて話し合う。
「さて、アイリス」
「はい」
食事の所作とか立ち振舞いが、まさに貴族のそれだよなぁ、アイリス。ついこの間まで公爵令嬢だったんだから、当然と言えば当然か。
俺みたいな、ルールもマナーもあったもんじゃない、暴力と狡猾さ、意地汚さで明日が決まるスラム上がりの冒険者とは、生まれてきた場所から違う。
そんな俺が、元とは言え公爵令嬢様を、冒険者として指南か……
「君は冒険者希望と言っていたが……そもそも、冒険者がどういう職業か、分かるか?」
「ギルドから発注された依頼を受けて、遂行・達成する職業です」
図らずも面接みたいな形になってはいるが。
「その通りだ」
実際のところは、ギルドから発注された依頼だけでなく、俺がアンドリューさんの『アイリスを冒険者として鍛えてほしい』と言う依頼を請け負ったように、個人間取引もある。
「冒険者は、文字の読み書きが出来ない子どもでも、申請さえすれば誰でもなれるくらいには門戸は広いが、その中でやっていくには魔物との戦闘もこなす必要が当然あるし、討伐した魔物を解体して、魔石を始めとする素材を剥ぎ取ることも必要だ」
君が考えているほど冒険者は楽な職業じゃないぞ、それでも冒険者になりたいのか?と暗に問い掛けるように、俺は冒険者になることの危険性を、自分自身での体験として語る。
「当たり前だが、魔物だってただ狩られるのを座しているわけじゃない。向こうだって生きるのに必死だからな、自分の命のためならなんだってしてくる。怪我や病気、死とは常に隣り合わせだ」
アイリスは姿勢を正しながら、黙って俺の話を聞いている。
その顔は真剣で、ただその場の思い付きで冒険者になろうと思ったのではないことが伝わってくる。
「こう言うのもなんだが、道楽で鳥や兎を狩るのとは大違いだ。……それでも、冒険者になりたいか?」
「はい」
即答だった。
まぁ、どれだけ危険であることを口頭で伝えても、実感は無いだろう。
何がどうであれ、本人のやる気が一番重要だからな。
「よし、分かった。なら、明日はまずギルドの出張機関で、冒険者登録。それから、必要な物資を買って、可能であればその日の内に簡単な依頼を受けてみようか」
「分かりました、頑張ります!」
やる気は十分そうだ。
俺としても、何か簡単な依頼を受けて、この都市周辺の生態系や植生物を知っておきたいところだ。
冒険者に必要なのは腕っぷしもそうだが、それよりも事前の準備と情報の方が大切だ。
知ることに損はない。知らないまま後悔するくらいなら、知ってから後悔する方がいい。
冒険者を目指してルイン達とスラム街を出て、陽の目を見るようになってから思い知ったのは、『自分達は何も知らない』ことだった。
文字の読み書きが出来ないと契約内容が分からないし、植物や魔物の図鑑が読めないと何もかも手探りになってしまう。
知らない・分からないばかりでは、悪意のある誰かに知らない内に騙されたり、責任を擦り付けられたりもする。
何も知らない意地汚いだけのガキは、なんとも無力なものだ。
だから、冒険者活動をする傍らで、知ること、学ぶことは貪欲に取り組んだ。
「んじゃ、明日に備えて今日はゆっくり休むとするか。明日は朝早くから動くぞ」
アイリスも慣れない旅をしていて疲れているだろうから、今晩の内にゆっくり眠ってほしい。
「では、おやすみなさい、リオさん」
「あぁ、おやすみ」
食事を終えたあとは、それぞれ借りた部屋へ戻る。
ぼふんとベッドの上に転がり込む。
「ふー……」
ここ二日は、不寝番だったり馬車の中で大勢と雑魚寝したりと、あまりゆっくり休める夜じゃ無かったから、今日はぐっすり眠れそうだ。
それにしても、この四日近くは色々とあった。
ルイン達【紺碧の刃剣】から追い出されて、アンドリューさんの商隊を護衛して、アイリスを助けて、そのアイリスとは明日から一週間ほど行動を共にすることになる。
しばしぼんやりと天井を見上げていると――思い出すのは、ルイン、スコット、ヒルダの三人と一緒にスラム街で肩を寄せあって生きてきた、過去。
あの頃は無力なガキで、なんにも持って無かったが、少ない残飯を分け合ったり、一枚しかないボロボロの毛布でくるまって暖めあったり、……時には盗みや殺人を働いたこともあったな。
四日前のあの追放に関しては、今でも納得していない。
叶うことならルインの顔をぶん殴ってやりたいところだが、そんな怒りはすぐに霧散した。
なんだかんだと言っても、俺にとってあの三人は"仲間“だったんだ。あいつら三人が俺をどう思っていたのかは知らないが。
俺が【紺碧の刃剣】から抜けた後は、恐らく俺よりも上の、銀級以上の冒険者を新たに引き入れているのかもしれない。
その新しい仲間と上手くやっていればいいんだが、三人は今、どうしてるんだろうなぁ……
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