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シャル、がんばる
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村長の話を聞くところ、今日の夜に若い娘を祭壇に捧げなくてはならず、そしてその娘は帰ってこなくなるという。
それで、今回は村長の娘さんが生贄になる。
……なんとも物騒な村だなおい。
そりゃ地図にも載らないわな。
すると、ふとシャルが口を開いた。
「あの……っ」
シャルの小さな声が、村人達の視線を集める。
「それは……神様ではなく、魔物ではありませんか?」
いやいやシャル、それはみんな知ってると思うよ。
知ってて敢えて見て見ぬふりをしてるだけだろうさ。
「だとしたら、その魔物を退治すればいいのでは?」
「シャル、お前まさか……」
うん、他ならぬ義兄が言ってたもんな。
善人には優しく、悪人には容赦しないと。(相手は人じゃなくて魔物だけど)
「その生贄、わたしが引き受けます……!」
それを聞いてか、村長は一も二も無く「本当ですか!?」と飛びついた。
「もしや……あなた方は勇者様なのでしょうか?」
何を言うとるんだあんたは。
俺は咳払いをひとつ挟んでから、シャルから会話を引き継ぐ。
「ぬか喜びさせるようで申し訳無いですが、俺と義妹は勇者ではなく、ただの旅人ですよ」
「そ、それは、失礼しました……」
低頭になる村長だが、それには目をくれてやらず、シャルに向き直る。
「シャル、本気か?」
「もちろんです」
うん、その徳心は素晴らしいと思う。
「……正直、俺は反対だな」
だけど、俺からすればそれはただの蛮勇だ。
「相手がどんな奴かも分からないのにか?剣は効くのか?魔法は?そもそも俺達に御せる相手なのか?……最悪、それで死ぬのはお前だぞ」
「ッ……」
シャルは今になって自分の発言の意味に気づいたのか、言葉を詰まらせた。
「それは理解るな?その上でお前はどうしたい?」
反対っちゃぁ反対だ。
だが、俺はシャルの意見を尊重したい。
自分がどうしたいのかを考え、決めさせる。
「……それでも、わたしは引き受けます」
「ほう?」
「お兄様は絶望していたわたしを見て、手を差し伸べてくれました。だったら、お兄様がそうしてくれたように、今度はわたしが別の誰かに手を差し伸べる番です」
「俺が、お前を利用するために懐柔させようとしているだけかもしれないぞ?」
「だとしても、です。困っている人を助けることが、間違っているとは思えませんから」
「ふ……そうか」
そこまで答えたのなら、これ以上俺が言うことはあるまい。
俺はその場で一歩引いた。最後にどうするのかは、自分で伝えるんだと。
シャルは頷き、村長に向き直った。
「わたしに、任せてください」
「ありがとうございます……!」
村長は深々と頭を下げてくれた。
それで、今回は村長の娘さんが生贄になる。
……なんとも物騒な村だなおい。
そりゃ地図にも載らないわな。
すると、ふとシャルが口を開いた。
「あの……っ」
シャルの小さな声が、村人達の視線を集める。
「それは……神様ではなく、魔物ではありませんか?」
いやいやシャル、それはみんな知ってると思うよ。
知ってて敢えて見て見ぬふりをしてるだけだろうさ。
「だとしたら、その魔物を退治すればいいのでは?」
「シャル、お前まさか……」
うん、他ならぬ義兄が言ってたもんな。
善人には優しく、悪人には容赦しないと。(相手は人じゃなくて魔物だけど)
「その生贄、わたしが引き受けます……!」
それを聞いてか、村長は一も二も無く「本当ですか!?」と飛びついた。
「もしや……あなた方は勇者様なのでしょうか?」
何を言うとるんだあんたは。
俺は咳払いをひとつ挟んでから、シャルから会話を引き継ぐ。
「ぬか喜びさせるようで申し訳無いですが、俺と義妹は勇者ではなく、ただの旅人ですよ」
「そ、それは、失礼しました……」
低頭になる村長だが、それには目をくれてやらず、シャルに向き直る。
「シャル、本気か?」
「もちろんです」
うん、その徳心は素晴らしいと思う。
「……正直、俺は反対だな」
だけど、俺からすればそれはただの蛮勇だ。
「相手がどんな奴かも分からないのにか?剣は効くのか?魔法は?そもそも俺達に御せる相手なのか?……最悪、それで死ぬのはお前だぞ」
「ッ……」
シャルは今になって自分の発言の意味に気づいたのか、言葉を詰まらせた。
「それは理解るな?その上でお前はどうしたい?」
反対っちゃぁ反対だ。
だが、俺はシャルの意見を尊重したい。
自分がどうしたいのかを考え、決めさせる。
「……それでも、わたしは引き受けます」
「ほう?」
「お兄様は絶望していたわたしを見て、手を差し伸べてくれました。だったら、お兄様がそうしてくれたように、今度はわたしが別の誰かに手を差し伸べる番です」
「俺が、お前を利用するために懐柔させようとしているだけかもしれないぞ?」
「だとしても、です。困っている人を助けることが、間違っているとは思えませんから」
「ふ……そうか」
そこまで答えたのなら、これ以上俺が言うことはあるまい。
俺はその場で一歩引いた。最後にどうするのかは、自分で伝えるんだと。
シャルは頷き、村長に向き直った。
「わたしに、任せてください」
「ありがとうございます……!」
村長は深々と頭を下げてくれた。
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