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謎の少女

55話 ヘビー級のベヒーモス

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「アロウさん、頭部に攻撃を集中させましょう!」

 ルナはアロウの反対サイドからエナジーライフルを放ち、ベヒーモスの頭部を狙う。
 MAFに限らず、ハンティングアクションのゲームにおいて、頭部が弱点のモンスターは多い。

「頭部……了解!」

 アロウもルナの意図を理解し、エナジーライフルの銃口をベヒーモスの頭部へ向ける。

「アロウとルナは頭を抑えるか、ならば我は懐に!」

 フェルテはベヒーモスの足元に張り付くと、宝剣でその巨重を支える後ろ脚を斬りつけていく。
 しかし、フェルテの宝剣であってもベヒーモスの外皮は容易く斬り裂けず、表面に浅い傷を創るのみ。
 ベヒーモスは、足元に張り付くメイプルとフェルテか、中距離から光弾を撃ってくるアロウとルナ、どちらから攻撃を仕掛けようと視線を左右させ、翼を羽ばたかせて一度その場から飛び下がる。
 鈍重そうな見た目とは思えない跳躍。
 ベヒーモスが着地したその中心は浅いクレーターを穿ち、ベヒーモスはその場で右前脚を石床に打ち付けて砕くと、打ち砕いて生み出された岩を持ち上げると、それを軽々と放り投げる。
 バウンドしながら転がってくる大岩は、フェルテを押し潰さんと迫る。

「ちぃっ」

 これだけの質量はさすがに押し返せないだろう、フェルテは舌打ちして大岩から逃れ、その先にいたルナもスラスターで大きく跳躍して大岩を躱す。
 前脚を床に打ち付けて岩を放り投げる、という一連の動作時間は長く、その間にもアロウとメイプルの再接近を許す。

「――猛き意志よ、我らに力を――『ハードストライク』!」

 メイプルにガードハーデンの効果を与えたカノラは、次に攻撃力強化の魔術を唱え、紅色の魔力光がアロウへ纏われる。

「攻撃力の強化か。ありがとうカノラさん!」

 ベヒーモスに注意を切らずにアロウはカノラに礼を言うと、エナジーライフルを撃ちながら、自身も近接攻撃を仕掛けようと、ラプターサーベルを抜き放つ。

「とぉりゃりゃりゃりゃりゃァッ!!」

 メイプルは先程と同じ部位に取り付くと、一撃よりも手数を重視した連撃でラプタスクロウズを振るい、ベヒーモスの脇腹を斬り刻んでいく。
 与えられるダメージは低い。
 だが、その低いダメージとて何度も叩き込まれれば、いずれその守りは瓦解するだろう。

 ベヒーモスは脇腹に取り付いているメイプルを体当たりで弾き飛ばし、エナジーライフルを撃ちながら迫るアロウに注意を向ける。

「だあぁッ!」

 スラスターを使ったジャンプでベヒーモスの頭部の高さまで飛び上がり、ラプターサーベルをその長い鼻に叩き込もうとするアロウだが、
 不意にベヒーモスは上体を反らした。
 それはラプターサーベルを空振りさせ、直後に反らした上体を振り下ろし、歪な象牙をアロウに叩きつけた。

「がっ……!?」

 丸太のような牙を勢いよくぶつけられ、アロウは墜落して石畳に叩き落とされる。
 さらにベヒーモスは、アロウを踏み潰そうと右前脚を振り上げる。

「(や、ばい!でもっ、身体が……ッ)」

 避けなければと意識はするものの、骨を砕かれたような鈍痛がアロウの感覚を曖昧にする。

「アロウさんっ!」

 ルナはその場から急加速してアロウの元へ駆け付けると、減速せずにすれ違い様にアロウの腕を掴んで引っ張り、ベヒーモスのストンプを辛うじて躱すが、その衝撃波が二人を吹き飛ばす。

「つっ……大丈夫ですかっ?」

「だい、丈夫っ、助かった」

 縺れ合う二人だが、アロウはすぐに立ち上がってルナを助け起こす。

 それなりにダメージは与えているはずだが、ベヒーモスが弱る気配はない。
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