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羽ばたきの時
132話 波乱の幕開け
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一方その頃オーディンは、ようやく取れるようになったカインと連絡を取り合っていた。
『定時連絡をするようにと言ったはずだが、何かあったのか?』
定時になってもオーディンからの連絡は来ず、こちらからかけても通じもしなかったことを、カインは訝しみながら問い質す。
「すまんカイン。俺も、定時に連絡を取ろうとしたんだが、何故か通話が出来なくてな」
それでだ、とオーディンはまずは結論から報告する。
「彼らのストーリーイベントは無事にクリア、件のNPCは、今度は緑色に変色した。……ちょうど今、お別れ会をしているところだな」
『問題点は?』
「順を追って説明する。まず、イグニート火山の遺跡のボスのバスターガーダーにもデータの破損が起きていた。これはすぐに撃破出来たから、特に大きな問題は無かった」
『……祭壇の間はどうだ?』
「彼らの言う通り、バスターガーダーを倒したその後に、分かりやすいくらいに別の道が出来ていた。恐らくNPCが同行している時のみ開かれるゲートだろうな。そのゲートを通ったところで、定時連絡をしようとして失敗した」
慌てずに聞いてくれ、とオーディンは再度間をおいてから。
「祭壇の間と、そこと通じるエリアは、マップに表示されていなかった。ついでに言えば、そのマップ自体からも俺達の反応が消えていた」
『反応が消えていた、とは?』
どういうことだ、とカインの声が固くなる。
「言葉通りだ。存在しないエリアに移動させられたと見ていい」
『存在しないエリアか……』
オーディンのその言葉にカインは考え込むが、すぐに切り替える。
『祭壇のガーディアンはどうだった?』
「ダークホークが出てきた。以前に何度かやり合ったことはあるが、相変わらず面倒な奴だったよ」
まぁ倒すことは出来たが、と付け足すオーディン。
「それで、そっちはどうだった?」
今度はカインの調査結果はどうだったかを訊き返す。
『…………そうだな、うむ……』
彼らしくない、端切れの悪い反応だった。
報告すべきかどうか……そんな雰囲気だ。
『オーディン、周囲に他のプレイヤーはいるか?』
「いないな。……メッセージでのやり取りにするか?」
他人に聞かれたくない報告をするようだ。
盗聴を危惧してメッセージでのやり取りにすべきかとオーディンは進言するが、カインはそれを制止させる。
『つい15分ほど前、ターミナルエリアの中心部に『謎の大穴』が発生した』
「謎の大穴?なんだそれは?」
『画像を送信する』
そう言ってカインが送信してきたのは、MAFのターミナルエリア、その中心部にごく近い場所に、ぽっかりと巨大な"穴"が口を開けていた。
「おいおい本当になんだこれは……これも非公開のストーリーイベントとか言うなよ?」
オーディンは冗談めかしたように言うが、対するカインは至極真剣な顔で。
『この大穴を中心に、少しずつ、ほんの少しずつだが、データの破損が拡がっている』
「…………なんだと?」
『今は運営がデータの損壊を抑えていてくれているが、後手に回っている。対応が間に合わなくなるのも、時間の問題だ』
画像データを拡大すると、確かにデータ破損のテクスチャが蠢くように見え隠れしている。
「15分ほど前というと、フェルテ……件のNPCがちょうど、最後の儀式を終えた頃だな」
『フェルテ君が、あの大穴のトリガーになっていたと見るべきか?』
「確証は無いし、出来ん。だが、この事はいずれ一般プレイヤーにも知れ渡るぞ」
『分かっている。故に騒がれる前に、対応を急がねばならん。疲れているところ悪いが、君にも手伝ってもらうぞ』
「了解した……ターミナルの中心部だな、すぐに行く」
通話を終えて、オーディンは溜息をついた。
「(件のNPCが実は電子の生命体だった説……どうやらその線が濃くなってきたな)」
『定時連絡をするようにと言ったはずだが、何かあったのか?』
定時になってもオーディンからの連絡は来ず、こちらからかけても通じもしなかったことを、カインは訝しみながら問い質す。
「すまんカイン。俺も、定時に連絡を取ろうとしたんだが、何故か通話が出来なくてな」
それでだ、とオーディンはまずは結論から報告する。
「彼らのストーリーイベントは無事にクリア、件のNPCは、今度は緑色に変色した。……ちょうど今、お別れ会をしているところだな」
『問題点は?』
「順を追って説明する。まず、イグニート火山の遺跡のボスのバスターガーダーにもデータの破損が起きていた。これはすぐに撃破出来たから、特に大きな問題は無かった」
『……祭壇の間はどうだ?』
「彼らの言う通り、バスターガーダーを倒したその後に、分かりやすいくらいに別の道が出来ていた。恐らくNPCが同行している時のみ開かれるゲートだろうな。そのゲートを通ったところで、定時連絡をしようとして失敗した」
慌てずに聞いてくれ、とオーディンは再度間をおいてから。
「祭壇の間と、そこと通じるエリアは、マップに表示されていなかった。ついでに言えば、そのマップ自体からも俺達の反応が消えていた」
『反応が消えていた、とは?』
どういうことだ、とカインの声が固くなる。
「言葉通りだ。存在しないエリアに移動させられたと見ていい」
『存在しないエリアか……』
オーディンのその言葉にカインは考え込むが、すぐに切り替える。
『祭壇のガーディアンはどうだった?』
「ダークホークが出てきた。以前に何度かやり合ったことはあるが、相変わらず面倒な奴だったよ」
まぁ倒すことは出来たが、と付け足すオーディン。
「それで、そっちはどうだった?」
今度はカインの調査結果はどうだったかを訊き返す。
『…………そうだな、うむ……』
彼らしくない、端切れの悪い反応だった。
報告すべきかどうか……そんな雰囲気だ。
『オーディン、周囲に他のプレイヤーはいるか?』
「いないな。……メッセージでのやり取りにするか?」
他人に聞かれたくない報告をするようだ。
盗聴を危惧してメッセージでのやり取りにすべきかとオーディンは進言するが、カインはそれを制止させる。
『つい15分ほど前、ターミナルエリアの中心部に『謎の大穴』が発生した』
「謎の大穴?なんだそれは?」
『画像を送信する』
そう言ってカインが送信してきたのは、MAFのターミナルエリア、その中心部にごく近い場所に、ぽっかりと巨大な"穴"が口を開けていた。
「おいおい本当になんだこれは……これも非公開のストーリーイベントとか言うなよ?」
オーディンは冗談めかしたように言うが、対するカインは至極真剣な顔で。
『この大穴を中心に、少しずつ、ほんの少しずつだが、データの破損が拡がっている』
「…………なんだと?」
『今は運営がデータの損壊を抑えていてくれているが、後手に回っている。対応が間に合わなくなるのも、時間の問題だ』
画像データを拡大すると、確かにデータ破損のテクスチャが蠢くように見え隠れしている。
「15分ほど前というと、フェルテ……件のNPCがちょうど、最後の儀式を終えた頃だな」
『フェルテ君が、あの大穴のトリガーになっていたと見るべきか?』
「確証は無いし、出来ん。だが、この事はいずれ一般プレイヤーにも知れ渡るぞ」
『分かっている。故に騒がれる前に、対応を急がねばならん。疲れているところ悪いが、君にも手伝ってもらうぞ』
「了解した……ターミナルの中心部だな、すぐに行く」
通話を終えて、オーディンは溜息をついた。
「(件のNPCが実は電子の生命体だった説……どうやらその線が濃くなってきたな)」
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