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約束の未来へ
153話 ありがとう
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『ふふ……何にせよ、あなた達のおかげで我が神子は邪悪を討ち祓う力を得たのです。これで、我が本懐は成し遂げられます』
アプロディテの言う"本懐"。
それを聞いてアロウはハッとなった。
「崩壊した異世界を巡る戦いの旅……」
「その通りだ、アロウ」
フェルテは頷いて彼に視線を向ける。
「我と創造主は、これより崩壊した異世界に跋扈する数多の転生者を討ち、その力を創造主に返還する旅に出る」
アロウだけではない、ルナ、凍結から抜け出したカノラ、アトラスを支えるメイプルとジルダにも目を向け、
「おぉ、カインとオーディン。汝らも来てくれたのか」
アロウ達が入ってきた通路から、ひどく消耗したカインとオーディンが駆け寄ってきた。
「ふむ、どうやら我々の出る幕は無いか」
「だな」
状況を見て、戦いは既に終わったのだろうとカインとオーディンは判断した。
「……今度こそ、本当にお別れなんだな」
お別れ会は済ませ、いい思い出だったと心に残すことは出来たはずだが、心のどこかではまた会えるのではないかと思っていた。
けれど、フェルテはNPCなどではない一個の"生命"だった。
そして、創造神アプロディテの姿をこの目で確かめ、これから悠久の戦いの旅へ赴く――もう二度と会えないのだと思い知る。
「そんな顔をするな、アロウ」
困ったように、フェルテは苦笑する。
――いつの間に、そんな表情が出せるようになっていた――
次にルナに目を向ける。
「ルナ。最初に出会ったあの時、敵だと誤解してすまなかったな」
「い、いえ、私もフェルテさんが敵だと思っていましたし」
ルナはノヴィス平原の山頂部で、フェルテと、そしてアロウとカノラとも出会ったことを思い出す。
次に、カノラ。
「カノラ。汝の暖かさと優しさに、我も随分と救われたものだ。礼を言わせてくれ」
「わわっ、わたしは何もしてないよ。フェルテちゃんのために何が出来るかって必死だったから」
出会った当初、ルナはフェルテに少なからず懐疑的な感情を抱いていたが、カノラは戸惑いながらも歩み寄ろうとしたのだ。
次に、メイプル。
「メイプル。何者も怯まずに立ち向かうその姿に、我は何度も勇気付けられた。これからもその強さを見習わせてくれ」
「えぇ?そりゃちょっと褒め過ぎだって、ボク照れちゃうよ」
モンスターやガーディアンとの戦いでも常に先陣を切るメイプルを見てきたからこそ、フェルテもその姿勢に充てられた。
次に、ジルダ。
「ジルダ。最初は"あぁ"だったが、今ではその力は無くてはならないものだった。感謝する」
「まぁ、麻痺された上に拉致されたような、最悪な出会いだったものねぇ」
マリーネ孤島でのいざこざがジルダとのファーストコンタクトだったが、徐々にフェルテもジルダの実力と落ち着きを信頼していった。
最後に、アロウ。
「アロウ。……うむ、上手く言葉に出来ぬな」
フェルテは目を閉じて、そっと自分の手を胸に当てる。
「汝の、"力"、"智"、"勇"……いいや、これだけでは足りぬ。もっと大事な、暖かな何かを、汝から感じていた。だが、我にはそれが何か分からぬ」
「……フェルテ」
「だがこれだけは言える。汝と出会えなければ、今の我はいなかった。それほど、我にとって汝は大切な存在だ」
目を開き、毅然として向き直る。
「だからアロウ――ありがとう」
いつも「感謝する」や「礼を言う」としか言わなかったフェルテから、初めてその五文字が出た。
アプロディテの言う"本懐"。
それを聞いてアロウはハッとなった。
「崩壊した異世界を巡る戦いの旅……」
「その通りだ、アロウ」
フェルテは頷いて彼に視線を向ける。
「我と創造主は、これより崩壊した異世界に跋扈する数多の転生者を討ち、その力を創造主に返還する旅に出る」
アロウだけではない、ルナ、凍結から抜け出したカノラ、アトラスを支えるメイプルとジルダにも目を向け、
「おぉ、カインとオーディン。汝らも来てくれたのか」
アロウ達が入ってきた通路から、ひどく消耗したカインとオーディンが駆け寄ってきた。
「ふむ、どうやら我々の出る幕は無いか」
「だな」
状況を見て、戦いは既に終わったのだろうとカインとオーディンは判断した。
「……今度こそ、本当にお別れなんだな」
お別れ会は済ませ、いい思い出だったと心に残すことは出来たはずだが、心のどこかではまた会えるのではないかと思っていた。
けれど、フェルテはNPCなどではない一個の"生命"だった。
そして、創造神アプロディテの姿をこの目で確かめ、これから悠久の戦いの旅へ赴く――もう二度と会えないのだと思い知る。
「そんな顔をするな、アロウ」
困ったように、フェルテは苦笑する。
――いつの間に、そんな表情が出せるようになっていた――
次にルナに目を向ける。
「ルナ。最初に出会ったあの時、敵だと誤解してすまなかったな」
「い、いえ、私もフェルテさんが敵だと思っていましたし」
ルナはノヴィス平原の山頂部で、フェルテと、そしてアロウとカノラとも出会ったことを思い出す。
次に、カノラ。
「カノラ。汝の暖かさと優しさに、我も随分と救われたものだ。礼を言わせてくれ」
「わわっ、わたしは何もしてないよ。フェルテちゃんのために何が出来るかって必死だったから」
出会った当初、ルナはフェルテに少なからず懐疑的な感情を抱いていたが、カノラは戸惑いながらも歩み寄ろうとしたのだ。
次に、メイプル。
「メイプル。何者も怯まずに立ち向かうその姿に、我は何度も勇気付けられた。これからもその強さを見習わせてくれ」
「えぇ?そりゃちょっと褒め過ぎだって、ボク照れちゃうよ」
モンスターやガーディアンとの戦いでも常に先陣を切るメイプルを見てきたからこそ、フェルテもその姿勢に充てられた。
次に、ジルダ。
「ジルダ。最初は"あぁ"だったが、今ではその力は無くてはならないものだった。感謝する」
「まぁ、麻痺された上に拉致されたような、最悪な出会いだったものねぇ」
マリーネ孤島でのいざこざがジルダとのファーストコンタクトだったが、徐々にフェルテもジルダの実力と落ち着きを信頼していった。
最後に、アロウ。
「アロウ。……うむ、上手く言葉に出来ぬな」
フェルテは目を閉じて、そっと自分の手を胸に当てる。
「汝の、"力"、"智"、"勇"……いいや、これだけでは足りぬ。もっと大事な、暖かな何かを、汝から感じていた。だが、我にはそれが何か分からぬ」
「……フェルテ」
「だがこれだけは言える。汝と出会えなければ、今の我はいなかった。それほど、我にとって汝は大切な存在だ」
目を開き、毅然として向き直る。
「だからアロウ――ありがとう」
いつも「感謝する」や「礼を言う」としか言わなかったフェルテから、初めてその五文字が出た。
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