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第五十八話
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ボロニルでの生活は2ヶ月目。
しかし、今日でもうこの街ともお別れになるだろう。
残る二人の鍛冶師から魔剣を買えて、ボロニルでの用事もすべて終わったから。
残りの鍛冶師からもらった魔剣は以下の通り
『破壊不可能』絶対に折れないし刃こぼれもしない。切れ味は良くならないが悪くならない魔剣。
『炎剣』火属性と剣術が主体ということでセナの扱いやすそうな剣。火属性の魔法と剣術の効果を引き上げる魔剣。
どちらも非常にありがたい性能をしていて、セナはとても満足していた。
スキルやステータスも豊富にあって、この街でセナのステータスは8万を超えたが、増えた分のほとんどはラングに分け、スキルも得た分のほぼすべてが錬金鍛冶系だったのでラングに割り当てた。
また、魔法系もベルに、セナの扱わない武術系はユゥリに渡したため、全体的な底上げはあったがそう強くはなっていない。
とはいえ、戦力としてUSM・ゴーレムとイマジナリ・ゴーストを加え、着実に強くはなっていっている。
「忘れ物は無いか?」
「うんっ!名残惜しいけど、仕方ないよね!」
「ラング、シャキッとしなさいな。」
「ぅん、まだ眠い。」
朝早くに支度を終えたセナ達は、ギルドマスターらにあいさつをしてボロニルの街を出た。
前日までには世話になった鍛冶師たちや冒険者らにも挨拶をしていたため、残るはギルドマスターたちだけだった。
どのギルドマスターにもかなり強めに引き止められ、商業ギルドのマスターからは号泣されたわけだが、それでも目的のある旅ということをどのマスターも理解してくれて、それ以上は何も言わなかった。
「ぅ、だいぶ目が覚めてきたかも」
「お、じゃあ荷引き頼めるか?」
「それはちょっと、まだ眠いかも」
セナ達の荷物は荷車に乗せ、セナが引いている。
基本的にセナが引き続けるつもりではあるが、ベルやユゥリが引くこともあるし、ラングも頼めば引いてくれる。
もちろん、かなり重いのでセナ以外はあまり引きたがらないし、セナも引かせたがらない。
「次は聖法国の中の街になるだろうから、ゴーレム達は出せなくなるし、俺は長袖長ズボン強制か。」
「これから暑くなるのに、いやだね。」
「ですが、聖法国の中で魔物の使役は禁則。見つかってしまえば手足の切断は免れません。」
「セナなら手足くらい生やせそうだけどな。」
「生やせるけど痛いからいやだな。」
「……」
まじかよという顔のラングを横目に、対策を立てていく。
もちろん、対策そのものはボロニルでの生活の中でいろいろと考案していた。
魔物の使役もそうだが、基本的に人とそれ以外を差別しているといっていいのが聖アルマ法国。
一番上が神であり、その下に使徒がいて、人間で、下に亜人と魔物。
人間の中でも使徒に最も近いのが、セナが何人か殺している神聖騎士。
聖法国の中でも南の都に集まっているという使徒は、その全貌が明らかではなく、人間との間には次元の違う力の差があるという噂だ。
「……ん?【固有】スキルで召喚できる魔物はどうなるんだ?」
「え……っと、そういうものはあまり例がありませんが、あまり快く思われないものかと。スライムとメタドラの元の持ち主は、そのスキルを申告していなかったのかと思います。」
ベルは今や聖法国での知識に一番長けている。
この二か月、行商やらから買った聖法国の聖典や法典を読み込んで、聖法国での活動に支障が無いよう頑張って勉強してくれていた。
「ステータスの確認は罪人か亜人だけの義務ですので、兵卒程度であれば疑問すら持たれないでしょう。」
セナもベルもユゥリもラングも全員人間だ。
腕が生え治った直後とかなら、変色した手で疑われたかもしれないが、今はもうただの人の腕にしか見えないくらいに綺麗に生え治っている。
だから、魔物を入れていると一目でわかる禍々しい刺青を隠しさえすれば、きっと誰にも気づかれないはず。
「ま、バレたらそん時はそん時ってことで」
あまりに用心深く、臆病なほど慎重なセナとは対照的に、ユゥリの謎な楽観視は適度な中和剤として機能してくれる。
「ぅぅぅ、重いいぃいい」
そして、ラングは鍛冶で鍛えた筋肉を駆使して、荷車を引いてくれている。
四人のパーティはついに、聖法国に潜入することに……!
◇◆◇
聖アルマ法国最北端の街、他国との国境としての役目を持つ街。
それが、セナ達のたどり着いた『ハルメニ』という街。
そこは、国境であるために聖法国らしさは薄れているものの、間違いなく神聖教の本拠地である聖法国であり、日夜最南端の魔神国と戦争を行っている絶賛戦時中の国の辺境である。
名物は布教用の神聖教の聖典。神装版とは違い、読みやすいように簡易化された軽量版の聖典が、この街の名物。
というのが建前であり、他国との交易が盛んな街であるため、交流こそが街の目玉という見方をする者の方が多い。
神聖教徒の数が国内で最低の街で、都から見れば辺境のド田舎。
そんな街である。
そのハルメニの街に入ったセナ達は、入って早々衛兵たちに取り囲まれていた
しかし、今日でもうこの街ともお別れになるだろう。
残る二人の鍛冶師から魔剣を買えて、ボロニルでの用事もすべて終わったから。
残りの鍛冶師からもらった魔剣は以下の通り
『破壊不可能』絶対に折れないし刃こぼれもしない。切れ味は良くならないが悪くならない魔剣。
『炎剣』火属性と剣術が主体ということでセナの扱いやすそうな剣。火属性の魔法と剣術の効果を引き上げる魔剣。
どちらも非常にありがたい性能をしていて、セナはとても満足していた。
スキルやステータスも豊富にあって、この街でセナのステータスは8万を超えたが、増えた分のほとんどはラングに分け、スキルも得た分のほぼすべてが錬金鍛冶系だったのでラングに割り当てた。
また、魔法系もベルに、セナの扱わない武術系はユゥリに渡したため、全体的な底上げはあったがそう強くはなっていない。
とはいえ、戦力としてUSM・ゴーレムとイマジナリ・ゴーストを加え、着実に強くはなっていっている。
「忘れ物は無いか?」
「うんっ!名残惜しいけど、仕方ないよね!」
「ラング、シャキッとしなさいな。」
「ぅん、まだ眠い。」
朝早くに支度を終えたセナ達は、ギルドマスターらにあいさつをしてボロニルの街を出た。
前日までには世話になった鍛冶師たちや冒険者らにも挨拶をしていたため、残るはギルドマスターたちだけだった。
どのギルドマスターにもかなり強めに引き止められ、商業ギルドのマスターからは号泣されたわけだが、それでも目的のある旅ということをどのマスターも理解してくれて、それ以上は何も言わなかった。
「ぅ、だいぶ目が覚めてきたかも」
「お、じゃあ荷引き頼めるか?」
「それはちょっと、まだ眠いかも」
セナ達の荷物は荷車に乗せ、セナが引いている。
基本的にセナが引き続けるつもりではあるが、ベルやユゥリが引くこともあるし、ラングも頼めば引いてくれる。
もちろん、かなり重いのでセナ以外はあまり引きたがらないし、セナも引かせたがらない。
「次は聖法国の中の街になるだろうから、ゴーレム達は出せなくなるし、俺は長袖長ズボン強制か。」
「これから暑くなるのに、いやだね。」
「ですが、聖法国の中で魔物の使役は禁則。見つかってしまえば手足の切断は免れません。」
「セナなら手足くらい生やせそうだけどな。」
「生やせるけど痛いからいやだな。」
「……」
まじかよという顔のラングを横目に、対策を立てていく。
もちろん、対策そのものはボロニルでの生活の中でいろいろと考案していた。
魔物の使役もそうだが、基本的に人とそれ以外を差別しているといっていいのが聖アルマ法国。
一番上が神であり、その下に使徒がいて、人間で、下に亜人と魔物。
人間の中でも使徒に最も近いのが、セナが何人か殺している神聖騎士。
聖法国の中でも南の都に集まっているという使徒は、その全貌が明らかではなく、人間との間には次元の違う力の差があるという噂だ。
「……ん?【固有】スキルで召喚できる魔物はどうなるんだ?」
「え……っと、そういうものはあまり例がありませんが、あまり快く思われないものかと。スライムとメタドラの元の持ち主は、そのスキルを申告していなかったのかと思います。」
ベルは今や聖法国での知識に一番長けている。
この二か月、行商やらから買った聖法国の聖典や法典を読み込んで、聖法国での活動に支障が無いよう頑張って勉強してくれていた。
「ステータスの確認は罪人か亜人だけの義務ですので、兵卒程度であれば疑問すら持たれないでしょう。」
セナもベルもユゥリもラングも全員人間だ。
腕が生え治った直後とかなら、変色した手で疑われたかもしれないが、今はもうただの人の腕にしか見えないくらいに綺麗に生え治っている。
だから、魔物を入れていると一目でわかる禍々しい刺青を隠しさえすれば、きっと誰にも気づかれないはず。
「ま、バレたらそん時はそん時ってことで」
あまりに用心深く、臆病なほど慎重なセナとは対照的に、ユゥリの謎な楽観視は適度な中和剤として機能してくれる。
「ぅぅぅ、重いいぃいい」
そして、ラングは鍛冶で鍛えた筋肉を駆使して、荷車を引いてくれている。
四人のパーティはついに、聖法国に潜入することに……!
◇◆◇
聖アルマ法国最北端の街、他国との国境としての役目を持つ街。
それが、セナ達のたどり着いた『ハルメニ』という街。
そこは、国境であるために聖法国らしさは薄れているものの、間違いなく神聖教の本拠地である聖法国であり、日夜最南端の魔神国と戦争を行っている絶賛戦時中の国の辺境である。
名物は布教用の神聖教の聖典。神装版とは違い、読みやすいように簡易化された軽量版の聖典が、この街の名物。
というのが建前であり、他国との交易が盛んな街であるため、交流こそが街の目玉という見方をする者の方が多い。
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