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第46話 絆ライディング!

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 俺とコンの友情の証、絆ライディング。
 その能力によって魔法の銃火器と化したコンが今、魔力を解き放つ!

 途端にとどろく激音と炎。
 砲塔から放たれる無数の魔法弾。
 すべてが放物線を描き、部屋を瞬時に突きぬけ木々を貫く。

 この威力を前には、木の幹なんて障害物にすらなりはしないぞ!
 当たれば爆散、一瞬にして灰だ!

 貫けば奥まで届き、先でもまた爆破、獄炎を撒き散らす。
 そうして次々に掃射し、木も壁もオークさえも瞬時にして吹き飛ばしていく!

 逃げようとしてももう無駄だ!
 コンがあらかじめ索敵魔法で配置を割り出し済みだからな!
 人質も他にいない事を確認したから躊躇いは無いぞ!

 やはり奥に部屋があるらしい、オークがそこへと逃げていく。
 だがそこに向けて砲塔を向け、弾を何発十発も撃ち込みまくってやる。
 一発一発が上級爆裂魔法と同等レベルだ、お前達では耐えられはしまい!

 逃げ遅れた奴はそこからしらみつぶしに焼き尽くせばいい。
 障害物も何もかも、この爆裂銃弾の嵐によって。

 たしかにこの武器は一分で千発の弾が発射可能だ。
 でも悪いな、俺達のマナ総量ならそれを一〇分間は続けられる!

 だが、お前ら如きには一分さえかけるつもりは無いッ!!!

 ゆえに掃討完了まで――たったの三八秒!
 たったそれだけで森広場のすべてが焼き尽くされた。
 当然ながらレッドオークは一匹たりとも逃していない。

 ……ただちょっと暴れすぎた、かな。
 周囲がずいぶんと黒煙に包まれてしまったが、みんなは平気だろうか?

 そこで俺達は絆ライディングを解除。
 即座にコンが空間清浄化魔法〝泡滑浄化術バブリッシャー〟を発動させてくれた。

「お、おお!? 黒煙が一瞬で晴れよったぁ!?」
「ヒ、ヒエ……広場がまっさらになってるー! すっごやば!」
「じょ、冗談だろ……!? な、なんだよこれ、夢なのか!?」
「あ、安心せェ夢ならワシがここにおらんやろ」
「なんでいんだよテメェ……ああクソ、信じられねぇモン見ちまったぁ~!」

 どうやらみんなは無事だったらしい。
 つくしが通路で魔防壁を張ってくれていたようだ。

 もちろん盾にされていた子もコンのバリアの中にいたから無事だ。
 今も足元で気絶したまま倒れている。

 お、すかさずコンが回復魔法をかけてくれたか。
 巨乳相手だと相変わらず対応が早いよなお前。
 治した子の胸に座って隠してるように見えるけど、それ絶対に私欲のためだろ?

「あーっ! あたしが回復してあげようかと思ったのにぃ~!」
「つくしが回復したら大変な事になっから人質にはやめとこぉ?」
「そう、あの悲劇を今起こせば逆にポイントマイナスになってしまうからね……」

 殲滅し終えたのがわかったからか、つくし達もこっちにやってきた。
 状況が状況なだけに恐る恐ると。

 匠美さん達や五位のチームも仲良く一緒だ。
 ただし半数が頭を抱えながらだけども。
 今の光景がよほど衝撃的だったらしい。

「よし、これであとは奥の通路を通って中央と右ルートへ救援に行くだけだな」
「せやな。けどそこで少し提案がある」
「ん? なんでしょうか?」

 そんな中で匠美さんが真面目そうな顔を俺に向けてくる。
 その後はみんなに振り向くように顔を回していて。

「みんな、今の見たやろ? なら間宮彼方ら宝春の実力は疑いようもない。それなら宝春に中央に行ってもらうのがええと思う。そんでワイら他のチームがあえてルートを戻って、足止めのために右部屋を援護しに行く。それがベストやと思うがどうやろか?」

 そうか、わざわざ奥の通路を全員で進む必要も無いか。
 通路の先の状態もわからないし、何が待っているかもわからない以上、まとめて動くのは危険だし。
 それなら右ルートをみんなに支えてもらった方がずっと安心だ。

「……ああ、異論はない」

 五位のチームも潔く頷いて応えてくれた。
 さすがトップスを名乗るだけあって、意地で断るほど浅はかではないんだな。

「ただ、頼みがある」
「え?」
「司条遥のチームに俺達の元メンバーだった女がいる。あいつはいい奴なんだ。今でも俺達に気を掛けてくれる、掛け替えのない仲間なんだよ……! だから頼む、どうかあいつを助けてやってくれ……!」
「……わかった、全力を尽くすよ」
「あ、ありがとう!」
「ありがとうな宝春!」「私達の分まで頼むわ!」

 でも続く話でなんとなく彼等と司条遥の関係性が理解できた。
 きっと彼等も悩んでいたんだろうな。
 信頼する仲間を引き抜かれて、しかも互いに人質にされたみたいなもんだから。

 だったら五位のチームの人達の願いも叶えてやろう。
 俺達ならそれができるはずだ。

「なら私も彼等と行く事にするわ……人質を連れ帰るついでにね」
「え、モモ先輩どうして?」
「今回ばかりは彼方についていけば何もできなさそうですもの……フフフ」
「ま、まぁたしかに」
「だったら一番レベルの低い私が人質を連れて行くのが適切ね」
「じゃーあーしも戻るとするわ~! モモっちの護衛も兼ねてねぇ~!」
「澪奈部長も!?」
「だから彼方っち、今の要領でボスもソッコーで頼むわー。期待してっからぁ!」

 どうやら澪奈部長とモモ先輩も自分の役割がわかっているらしい。
 一緒にいるよりも、より適切に役目を果たす事を優先したんだ。

 だから二人も人質を背負って匠美さん達と共に道を戻っていった。
 俺とつくしに中央ボス部屋の処理を託して。

「あたしは彼方と一緒だから大船に乗った気でいなさーい!」
「あはは、じゃあそうさせてもらうとするよ。ケガ人の回復は任せた」
「おっけー!」

 なら一刻も早く向かうとしよう。
 
 司条遥も助けるのは正直虫が好かない。
 だけど今はそう悠長にも言っていられないから。

 必要以上に狡猾で残忍なレッドオーク。
 奴らの進歩はトップオブトップスさえ翻弄するほどに著しいのだ。
 このまま放っておけば手遅れになってしまうのでは、と思えるほどに。

 嫌な予感が、頭から未だ離れない……!
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