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第二節「知る心 少女の翼 指し示す道筋は」
~その戦い、行く末は~
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赤茶く染まりきった身からは白い煙が巻き上がり。
焼けて炭化した肉の臭いは鼻を突き、嫌悪感をもたらせさせる。
そんなダッゾ王の巨体は地に伏せたまま、ピクリとも動かなくなっていた。
「フッ、フッフフ。 だから言ったのだ、私は【閃光陣】なのだと」
先程の技はまさに異名の通りである。
外したと思われる矢こそが本命であり、これがヴェイリの戦い方だったのだ。
故に、謀略の果ての勝利で笑いが止まらない。
「思ったより命力を消耗してしまったな。 だがこれで私は……フハハッ!!」
ヴェイリがこれ程かというまでに猛り笑う。
これだけの戦いを制する事が出来たからか。
それともダッゾ王という存在がそれ程までに強大だったからか。
こう喜んでも仕方ない程に、ダッゾ王という存在は脅威的だったのだろう。
「しかしどうやって証明するか。 そうだな、首でも切って持っていくとするか」
ヴェイリが恐る恐るダッゾ王の体へと近づいていく。
すると何を思ったのか、突然二度、三度と強く蹴り飛ばしていて。
「フフッ、死んだ振りでもしているのかと思ったがそうではなさそうだ」
これもヴェイリだからこその身を守る行為なのだろう。
とはいえ死体蹴りも厭わぬ非道さに、遠くで見つめていた勇の顔が歪む。
それは魔者に対する怨み故か、それともヴェイリがそれすら憚らない性格なのか。
当初に見せたものと真逆とも言える姿が不信感を激しく募らせてならない。
「ようやく長い怨恨に一つの終止符が打たれる。 さらばだ悪鬼よ」
その時ヴェイリの目に浮かぶのは哀愁漂う細い眼で。
加えて今の一言には積み重ねて来た意思が籠っているかのよう。
その怨恨の意思を以って、ヴェイリが左手に掴んだ魔剣を掲げる。
するとたちまち弓本体に命力の光が集まる事に。
それはまるで刃の様に、魔剣の先一面を淡い光が包み込んでいて。
握った拳に願いと力を篭め、ダッゾ王へと狙いを付ける。
人の肩回りにも足る程の巨大な首元へ。
間も無く、その首目掛けて光の刃が空を裂く。
その動きに何一つ躊躇いは無かった。
だがその瞬間―――
なんと、ダッゾ王の体が勢いよく跳ね上がった。
「ウオオオオオオッッッ!!!」
バッゴォォーーーーンッ!!
瞬時と思える程に凄まじい勢いで右肩ごとその巨体が持ち上がり。
その時生まれた衝撃が、周囲に転がる椅子や破片を巻き上げ弾き飛ばす。
振り下ろされようとしていたヴェイリの魔剣をも弾き上げながら。
そしてあろう事か、巨大な右拳がヴェイリの胴体をがっしりと掴み取ったのである。
「ぐうおおーーーーーーッ!?」
「ブルぉォああぉアア!!!」
ヴェイリの体が叫び声と共に突き上げられる。
余りの衝撃により、首上を前後に激しく揺らしながら。
不運にも右腕までもが掴まれ、自由なのはもはや魔剣を掲げていた左腕のみ。
その左腕もが脇下に太い親指が潜り込み、充分に力を入れられない。
足を暴れさせて抵抗するも、真っ直ぐ伸びた腕には届く事も無く。
「ヒイッ!! あ、 ああッッ!!」
途端にヴェイリの顔に怯え慄いた蒼白の表情が浮かび上がる。
直感してしまったのだ。
この状況は最悪なのだと。
ダッゾ王の巨体が震えながらもかろうじて立ち上がり、ヴェイリを掴む拳を握り締めさせる。
「ぎっ!! があッ!!」
「ガハッ……マ、まさカこの俺がココマでやられ……ぐふぅ、魔剣サえあればこうも……グゥッ!」
ダッゾ王の姿は見紛う事無き満身創痍で。
虫の息とも言える状態である事に変わりはない。
だがそれでも立つ事が出来た。
それは彼の強靭な肉体のお陰であり、同時に命力という力が備わっているから。
胆力溢れる体と意思がある限り、その殺意を消す事は叶わない。
故にその時、ヴェイリはダッゾ王という存在を心底から畏れた。
目の前に居る怪物は自分一人で倒す事など到底叶わぬ相手だったのだと。
「―――ダ、ダガあッ!!」
ダッゾ王が右腕へ更に力を込め、拳を強く握り締める。
すると途端に、挟まれたヴェイリから「メキメキ」と音が響き始めて。
右腕があっという間にあらぬ方向へとひしゃげていく。
果てには応力に耐え切れず、「ゴギンッ!」という音と共に潰れ折れる事に。
「がっ、ぎゃああーーー!!」
殺意が、復讐心が、ダッゾ王の意思を保たせ続ける限り、止まる事は無い。
極太の親指がヴェイリの左胸部を側面からきつく締め上げ、内臓を圧迫していく。
ヴェイリの胸部をも押し潰していき、強制的な閉塞感に陥れていく。
呼吸が、血流が、強引に塞き止められ、痛みと苦しみに蝕んでいく。
ヴェイリが必死に抵抗を見せるが、もはや手遅れだった。
左手に持った魔剣で斬ろうとしても、力も入らず腕も降りきらない。
攻撃が、届かない。
「ヒッ、ヒイッ!! やめろっ、やめでぐれっ!! おごおおぉおぉ!!」
「ヴァアアア……!!」
慈悲さえ無い。
故に、幾ら泣き叫ぼうがダッゾ王が力を弱める事は無いだろう。
もはや怒りだけが原動力であったからこそ。
遂にはその指がヴェイリの身体に食い込み、押し潰し始める。
内臓ごと、骨も筋肉も何もかもをも強引に。
「ブボッ、ガボォ!!」
それがきっかけとなり、全身から赤黒い体液が溢れ出していく。
口から、目から耳から。
ありとあらゆる場所から噴き出さんばかりにと。
抵抗していた左腕もとうとうだらりと落ちて。
魔剣をも落とし、ピクリとも動かなくなっていた。
そして、あの野心に塗れた眼もまた同様に。
輝きを失い、頭と共にだらりと堕ちる事となる。
この時のヴェイリはもう、その心を既に手離していたのである。
焼けて炭化した肉の臭いは鼻を突き、嫌悪感をもたらせさせる。
そんなダッゾ王の巨体は地に伏せたまま、ピクリとも動かなくなっていた。
「フッ、フッフフ。 だから言ったのだ、私は【閃光陣】なのだと」
先程の技はまさに異名の通りである。
外したと思われる矢こそが本命であり、これがヴェイリの戦い方だったのだ。
故に、謀略の果ての勝利で笑いが止まらない。
「思ったより命力を消耗してしまったな。 だがこれで私は……フハハッ!!」
ヴェイリがこれ程かというまでに猛り笑う。
これだけの戦いを制する事が出来たからか。
それともダッゾ王という存在がそれ程までに強大だったからか。
こう喜んでも仕方ない程に、ダッゾ王という存在は脅威的だったのだろう。
「しかしどうやって証明するか。 そうだな、首でも切って持っていくとするか」
ヴェイリが恐る恐るダッゾ王の体へと近づいていく。
すると何を思ったのか、突然二度、三度と強く蹴り飛ばしていて。
「フフッ、死んだ振りでもしているのかと思ったがそうではなさそうだ」
これもヴェイリだからこその身を守る行為なのだろう。
とはいえ死体蹴りも厭わぬ非道さに、遠くで見つめていた勇の顔が歪む。
それは魔者に対する怨み故か、それともヴェイリがそれすら憚らない性格なのか。
当初に見せたものと真逆とも言える姿が不信感を激しく募らせてならない。
「ようやく長い怨恨に一つの終止符が打たれる。 さらばだ悪鬼よ」
その時ヴェイリの目に浮かぶのは哀愁漂う細い眼で。
加えて今の一言には積み重ねて来た意思が籠っているかのよう。
その怨恨の意思を以って、ヴェイリが左手に掴んだ魔剣を掲げる。
するとたちまち弓本体に命力の光が集まる事に。
それはまるで刃の様に、魔剣の先一面を淡い光が包み込んでいて。
握った拳に願いと力を篭め、ダッゾ王へと狙いを付ける。
人の肩回りにも足る程の巨大な首元へ。
間も無く、その首目掛けて光の刃が空を裂く。
その動きに何一つ躊躇いは無かった。
だがその瞬間―――
なんと、ダッゾ王の体が勢いよく跳ね上がった。
「ウオオオオオオッッッ!!!」
バッゴォォーーーーンッ!!
瞬時と思える程に凄まじい勢いで右肩ごとその巨体が持ち上がり。
その時生まれた衝撃が、周囲に転がる椅子や破片を巻き上げ弾き飛ばす。
振り下ろされようとしていたヴェイリの魔剣をも弾き上げながら。
そしてあろう事か、巨大な右拳がヴェイリの胴体をがっしりと掴み取ったのである。
「ぐうおおーーーーーーッ!?」
「ブルぉォああぉアア!!!」
ヴェイリの体が叫び声と共に突き上げられる。
余りの衝撃により、首上を前後に激しく揺らしながら。
不運にも右腕までもが掴まれ、自由なのはもはや魔剣を掲げていた左腕のみ。
その左腕もが脇下に太い親指が潜り込み、充分に力を入れられない。
足を暴れさせて抵抗するも、真っ直ぐ伸びた腕には届く事も無く。
「ヒイッ!! あ、 ああッッ!!」
途端にヴェイリの顔に怯え慄いた蒼白の表情が浮かび上がる。
直感してしまったのだ。
この状況は最悪なのだと。
ダッゾ王の巨体が震えながらもかろうじて立ち上がり、ヴェイリを掴む拳を握り締めさせる。
「ぎっ!! があッ!!」
「ガハッ……マ、まさカこの俺がココマでやられ……ぐふぅ、魔剣サえあればこうも……グゥッ!」
ダッゾ王の姿は見紛う事無き満身創痍で。
虫の息とも言える状態である事に変わりはない。
だがそれでも立つ事が出来た。
それは彼の強靭な肉体のお陰であり、同時に命力という力が備わっているから。
胆力溢れる体と意思がある限り、その殺意を消す事は叶わない。
故にその時、ヴェイリはダッゾ王という存在を心底から畏れた。
目の前に居る怪物は自分一人で倒す事など到底叶わぬ相手だったのだと。
「―――ダ、ダガあッ!!」
ダッゾ王が右腕へ更に力を込め、拳を強く握り締める。
すると途端に、挟まれたヴェイリから「メキメキ」と音が響き始めて。
右腕があっという間にあらぬ方向へとひしゃげていく。
果てには応力に耐え切れず、「ゴギンッ!」という音と共に潰れ折れる事に。
「がっ、ぎゃああーーー!!」
殺意が、復讐心が、ダッゾ王の意思を保たせ続ける限り、止まる事は無い。
極太の親指がヴェイリの左胸部を側面からきつく締め上げ、内臓を圧迫していく。
ヴェイリの胸部をも押し潰していき、強制的な閉塞感に陥れていく。
呼吸が、血流が、強引に塞き止められ、痛みと苦しみに蝕んでいく。
ヴェイリが必死に抵抗を見せるが、もはや手遅れだった。
左手に持った魔剣で斬ろうとしても、力も入らず腕も降りきらない。
攻撃が、届かない。
「ヒッ、ヒイッ!! やめろっ、やめでぐれっ!! おごおおぉおぉ!!」
「ヴァアアア……!!」
慈悲さえ無い。
故に、幾ら泣き叫ぼうがダッゾ王が力を弱める事は無いだろう。
もはや怒りだけが原動力であったからこそ。
遂にはその指がヴェイリの身体に食い込み、押し潰し始める。
内臓ごと、骨も筋肉も何もかもをも強引に。
「ブボッ、ガボォ!!」
それがきっかけとなり、全身から赤黒い体液が溢れ出していく。
口から、目から耳から。
ありとあらゆる場所から噴き出さんばかりにと。
抵抗していた左腕もとうとうだらりと落ちて。
魔剣をも落とし、ピクリとも動かなくなっていた。
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この時のヴェイリはもう、その心を既に手離していたのである。
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