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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~今日はとっておきの場所に連れてってやるよ~
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約一〇キロの超人ロードワークを終え、勇とエウリィが帰宅を果たす。
しかもこの距離を僅か半時間ほどでこなして。
常人では困難を伴う驚異的な速度である。
それでもエウリィは最後までしっかり付いてきていた。
勇のやり方に学び、己なりの最適解を考えて。
最後の方はもうボロボロだったが、それでも少しだけ原理を理解出来たらしい。
さすがは才女と言った所か。
とはいえまだまだキッカケを得ただけに過ぎない。
実力を身に付けるにはこの鍛錬を日々こなす必要があるのだから。
今回はその一歩手前、肉体の回復手段をざっくり履行しただけなので。
そんな疲れた身体を、勇が腰から支えて屋内へ。
すると間も無く、玄関に倒れた別のボロボロな少女の姿が。
「ただいまー……あれ、田中さん。大丈夫?」
「だいっ、じょうっ、ぶっ、はあッ、はあッ!」
どう見ても大丈夫じゃない。
汗だくで、でろんでろんで、へろへろで、目も回していて。
今にも気を失ってしまいそうなくらいに息が荒いという。
ちゃななりに頑張った成果なのだろう。
ただ、それでも今は他人に見せられないくらい酷い有様で。
最近著しい成長を見せる胸部についつい目が行ってしまうくらいだ。
間も無くエウリィの両手がそんな邪な勇の目を遮る事になったけれども。
「あっ勇さんッ!! ひどいッスよ、ボクを置いていくなんてぇ……」
そんな中でリビングからもう一人の声が。
カプロが半泣きで現れたのだ。
どうやらロードワークへ行ってる間に目を覚ましていたらしい。
それに気付き、エウリィの指の隙間からリビングを覗けば。
当然先には母親の気配は無い。
恐らく仕事に行ったのだろう。
となると、ちゃなが帰って来るまで一人だった訳だ。
この様子だと彼女が帰ったのもつい先ほど。
タオルを持ってる辺りは、カプロが介抱中といった所か。
なら寂しがるのも当然の事だろう。
なにせカプロにとっては、この家でさえまだ何も知らない場所なのだから。
「ごめんカプロ、気持ち良く寝てたっぽくてつい」
本当は父親も有給休暇で家に居るのだけれど。
最近はなんか許されたのか、休みに起こされる事がめっきり減った。
なのできっと今も寝ているに違いない。
つまり勇の配慮不足という訳だ。
これにはさすがに反省せざるを得ない。
「ホントごめんな。お詫びに、今日はとっておきの場所に連れてってやるよ。それで許してくれよな」
「本当ッスか!?」
「まぁ!! わたくしもお供してもよろしいでしょうか?」
「うん、せっかくだから皆で行こう。お昼過ぎくらいに」
カプロをここに連れて来た以上、保護者は勇な訳で。
ならこうして機嫌を取るのもまた勇の義務となる。
少なくとも、大きな責任は伴うだろう。
だから勇もその責任を果たす為にカプロを街へ連れて行く。
エウリィに対してもそうだ。
これは元々やる予定だったから、決して懺悔の為ではないけれど。
それでも楽しんでくれればいい。
東京まで来て良かった、そう言ってもらえればそれだけで。
決して雪なんて縁の無い、普通な晴れの日のクリスマス。
でもきっと、カプロ達にはそんな雪よりずっと楽しい思い出を飾れる事だろう。
人の街。
たったそれだけの、好奇心そそられる場所へと訪れるだけで。
◇◇◇
そんな訳でお昼過ぎ。
勇の父親が作ったワイルド焼きそばを平らげて、そのあと勇達は心輝達と合流する。
目的地はあのショッピングモール。
勇達がいつも利用している近場のあそこである。
しかしどこにでもあるだろうと侮る事無かれ。
初めて訪れた者にとってこれ以上の衝撃があろうか。
なにせ、凄まじく広い空間全てに商品が並んでいるのだから。
「凄いッス。人、人、人だらけじゃねッスか……」
「こ、これは……なんて素晴らしい。この間のお城以上です!」
もちろんそれ以外にもカルチャーショックは沢山ある。
周囲は見た事の無い人だらけなもので。
カプロにとってはこれ以上ない衝撃だった事だろう。
エウリィもこの物だらけの空間を前に、入っただけでウットリだ。
色々と目移りして、目が顔がもう止まらない。
「二人ともあんまし目立つ様な事するんじゃねーぞ。バレっから」
「まぁアンタが今みたいに下手打たなきゃ平気でしょ」
にしても、こんな場所に二人を連れて来ても平気なのだろうか。
エウリィはまだしも、カプロは明らかに人間ではないのに。
だが実は何の問題も無い。
勇達にはとっておきの秘策があるのだから。
何故ならば。
今の勇達は全員、アルライ族なのだ。
それというのも【アルライ族なりきりセット】を身に付けているからこそ。
【アルライ族なりきりセット】。
それは最近発売されたばかりのコスプレアイテムだ。
アルライ族が公表された後、某企業より販売開始したものである。
しかもこれ、たちまち世間に大ヒット。
バカ売れもバカ売れ、今では類似品から模造品さえ販売される程に。
予約・入荷も見通し無し、仕入れてもすぐさまSOLD OUT。
関連商品でさえ売れまくるという今注目の逸品となっている。
これがまた本物に忠実なのだ。
突き出た被せ鼻にはしっかり被毛までが付いていて。
ビョーンと伸びた耳までしっかり再現している。
おまけに付け尻尾まで付属し、気分はタヌキそのもの。
勇達がそのアイテムを身に着けたお陰で、カプロがもうコスプレにしか見えない。
後は目立ちにくい様に普通の服装と帽子、サングラスを掛ければ完璧で。
ついでにエウリィの青髪も染めただけにしか見えないので合わせ技で一本。
もはや只のコスプレ集団と化しているという。
もちろん変装しているのは勇達だけではない。
他の普通の人も所々に身に付けているのだから。
ファッションの延長の様なものと認識されているが故に。
そんな事もあって、バレる心配は非常に少ない。
実に完璧な作戦と言えるだろう。
後は心輝の様にボロを出さない事を祈るばかりだ。
しかもこの距離を僅か半時間ほどでこなして。
常人では困難を伴う驚異的な速度である。
それでもエウリィは最後までしっかり付いてきていた。
勇のやり方に学び、己なりの最適解を考えて。
最後の方はもうボロボロだったが、それでも少しだけ原理を理解出来たらしい。
さすがは才女と言った所か。
とはいえまだまだキッカケを得ただけに過ぎない。
実力を身に付けるにはこの鍛錬を日々こなす必要があるのだから。
今回はその一歩手前、肉体の回復手段をざっくり履行しただけなので。
そんな疲れた身体を、勇が腰から支えて屋内へ。
すると間も無く、玄関に倒れた別のボロボロな少女の姿が。
「ただいまー……あれ、田中さん。大丈夫?」
「だいっ、じょうっ、ぶっ、はあッ、はあッ!」
どう見ても大丈夫じゃない。
汗だくで、でろんでろんで、へろへろで、目も回していて。
今にも気を失ってしまいそうなくらいに息が荒いという。
ちゃななりに頑張った成果なのだろう。
ただ、それでも今は他人に見せられないくらい酷い有様で。
最近著しい成長を見せる胸部についつい目が行ってしまうくらいだ。
間も無くエウリィの両手がそんな邪な勇の目を遮る事になったけれども。
「あっ勇さんッ!! ひどいッスよ、ボクを置いていくなんてぇ……」
そんな中でリビングからもう一人の声が。
カプロが半泣きで現れたのだ。
どうやらロードワークへ行ってる間に目を覚ましていたらしい。
それに気付き、エウリィの指の隙間からリビングを覗けば。
当然先には母親の気配は無い。
恐らく仕事に行ったのだろう。
となると、ちゃなが帰って来るまで一人だった訳だ。
この様子だと彼女が帰ったのもつい先ほど。
タオルを持ってる辺りは、カプロが介抱中といった所か。
なら寂しがるのも当然の事だろう。
なにせカプロにとっては、この家でさえまだ何も知らない場所なのだから。
「ごめんカプロ、気持ち良く寝てたっぽくてつい」
本当は父親も有給休暇で家に居るのだけれど。
最近はなんか許されたのか、休みに起こされる事がめっきり減った。
なのできっと今も寝ているに違いない。
つまり勇の配慮不足という訳だ。
これにはさすがに反省せざるを得ない。
「ホントごめんな。お詫びに、今日はとっておきの場所に連れてってやるよ。それで許してくれよな」
「本当ッスか!?」
「まぁ!! わたくしもお供してもよろしいでしょうか?」
「うん、せっかくだから皆で行こう。お昼過ぎくらいに」
カプロをここに連れて来た以上、保護者は勇な訳で。
ならこうして機嫌を取るのもまた勇の義務となる。
少なくとも、大きな責任は伴うだろう。
だから勇もその責任を果たす為にカプロを街へ連れて行く。
エウリィに対してもそうだ。
これは元々やる予定だったから、決して懺悔の為ではないけれど。
それでも楽しんでくれればいい。
東京まで来て良かった、そう言ってもらえればそれだけで。
決して雪なんて縁の無い、普通な晴れの日のクリスマス。
でもきっと、カプロ達にはそんな雪よりずっと楽しい思い出を飾れる事だろう。
人の街。
たったそれだけの、好奇心そそられる場所へと訪れるだけで。
◇◇◇
そんな訳でお昼過ぎ。
勇の父親が作ったワイルド焼きそばを平らげて、そのあと勇達は心輝達と合流する。
目的地はあのショッピングモール。
勇達がいつも利用している近場のあそこである。
しかしどこにでもあるだろうと侮る事無かれ。
初めて訪れた者にとってこれ以上の衝撃があろうか。
なにせ、凄まじく広い空間全てに商品が並んでいるのだから。
「凄いッス。人、人、人だらけじゃねッスか……」
「こ、これは……なんて素晴らしい。この間のお城以上です!」
もちろんそれ以外にもカルチャーショックは沢山ある。
周囲は見た事の無い人だらけなもので。
カプロにとってはこれ以上ない衝撃だった事だろう。
エウリィもこの物だらけの空間を前に、入っただけでウットリだ。
色々と目移りして、目が顔がもう止まらない。
「二人ともあんまし目立つ様な事するんじゃねーぞ。バレっから」
「まぁアンタが今みたいに下手打たなきゃ平気でしょ」
にしても、こんな場所に二人を連れて来ても平気なのだろうか。
エウリィはまだしも、カプロは明らかに人間ではないのに。
だが実は何の問題も無い。
勇達にはとっておきの秘策があるのだから。
何故ならば。
今の勇達は全員、アルライ族なのだ。
それというのも【アルライ族なりきりセット】を身に付けているからこそ。
【アルライ族なりきりセット】。
それは最近発売されたばかりのコスプレアイテムだ。
アルライ族が公表された後、某企業より販売開始したものである。
しかもこれ、たちまち世間に大ヒット。
バカ売れもバカ売れ、今では類似品から模造品さえ販売される程に。
予約・入荷も見通し無し、仕入れてもすぐさまSOLD OUT。
関連商品でさえ売れまくるという今注目の逸品となっている。
これがまた本物に忠実なのだ。
突き出た被せ鼻にはしっかり被毛までが付いていて。
ビョーンと伸びた耳までしっかり再現している。
おまけに付け尻尾まで付属し、気分はタヌキそのもの。
勇達がそのアイテムを身に着けたお陰で、カプロがもうコスプレにしか見えない。
後は目立ちにくい様に普通の服装と帽子、サングラスを掛ければ完璧で。
ついでにエウリィの青髪も染めただけにしか見えないので合わせ技で一本。
もはや只のコスプレ集団と化しているという。
もちろん変装しているのは勇達だけではない。
他の普通の人も所々に身に付けているのだから。
ファッションの延長の様なものと認識されているが故に。
そんな事もあって、バレる心配は非常に少ない。
実に完璧な作戦と言えるだろう。
後は心輝の様にボロを出さない事を祈るばかりだ。
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