時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」

~かなりの危険度と緊急性を伴った依頼です~

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 遂に三学期が始まる。
 勇にとっての二年生最後のシーズンだ。

 となるとそろそろ将来について本気で考えなくてはならなくなる。
 例えば、学校を卒業したらどうするのか、と。

 だから今、勇は悩んでいた。
 教師からもそんな話題が実際に出て来たから。

 なら大学へ進学するべきか。
 あるいは普通に就職か。
 それとも魔剣使い専業か。

 進学するにしろ、お金は心配いらないだろう。
 学費を一括キャッシュで払えるくらいには溜まっているから。

 でも進学も就職も、相応に勉強を頑張らなければならない。
 そもそもが卒業出来るかも怪しい成績になってきたもので。
 今のままでは内定一つ取るのも一苦労だ。

 では魔剣使い専業はどうか。

 確かに、命を賭けているからこそ報酬バックは多い。
 貢献度も大きいし、讃えられるという精神的な見返りもある。

 しかし将来性はといえばとても不透明だ。
 なので実はこれ、正直なところ最終手段だと言える。

 今はいい。
 世界でも混乱が起き続けているから。
 引く手数多で、きっと今でも求められているに違いない。

 けれどもし、その諸問題が解決しきったならば。

 その時を迎えた時、きっと魔剣使いは廃業となるだろう。
 しかも余りにも特殊な仕事過ぎて経歴には残せない。
 すると再就職先にも不安が残る事となる。



 だからこそ勇はこうも考えていた。
 悩んだ末の結論次第では、魔剣を手放す事も考慮すべきなのだと。
 
 

 いつかフェノーダラ王に教えられた事がある。
 民を守る為に、国を守る為には己の身を退かせる事も重要と。
 故に彼の者も魔剣を置き、己を棄て、今も王として悩み続けていて。
 その辛さを何度も言葉で受け取ってきた。

 そんな前例があるから、魔剣を置くのは決して悪い事では無い。
 ただ志を引き継ぐ者に渡せばいいだけなのだ。

 フェノーダラ王が【大地の楔】を勇へと託したのと同じ様に。

 もしそうしたとしても、きっと王もエウリィも許してくれるだろう。
 アージやマヴォだって同様に。
 福留も元より最初から望んでいない事はもう知っている。
 
 でも、今の勇には戦いから退く覚悟も足りていない。
 〝今のままでもいいかもしれない〟なんて想いがあって。
 そうも思うと、将来への選択を先延ばしにする事だって考えてしまう。

「将来、か……俺は、何がしたいんだろうな」

 だからかそんな悩みが口からうっかり漏れて、溜息と共に消えていく。
 授業中であろうと、その悩みはずっとぐるぐると頭の中で駆け巡っていたから。

「――で、この答えは……そこで上の空の藤咲、答えられるか?」

「えっ!? あ、えーっと……六ですかね?」

「む、正解だ。ちゃんと授業聞いておけよ。これ以上成績落としたら不味いんだから」

「す、すいません」

 どうやらその悩みは様子にも表れていたらしい。
 教師に怒られた事でようやく気付いた様だ。
 この調子ではますます進学や就職の可能性が薄くなりかねない。

 だからと、頭をポカポカ叩いて授業へ集中する事に。
 「悩みは一旦、宿題と共に自宅へお持ち帰りしよう」と。



 だが、そんな勇達に間も無く凶報が届く事となる。
 そんな将来の悩みなど打ち払わんばかりに。
 


 それは昼休みに突入した時だった。

 他の生徒達が一斉に昼食を摂ろうと席を立ち、あるいは弁当を広げていて。
 心輝達も勇を食事に誘おうと近づいてくる。

「おーう勇、飯食いに行こうぜ~」

「あぁ」

 勇は基本弁当だけど、普段はこうして心輝と食堂に行く事が多い。
 だからいつも通りに弁当袋を鞄から取り出そうとしたのだけど。

 その途端、抑え込まれた上着からスマートフォンの振動が伝わって来ていて。

 何かと思い、懐から取り出してみれば。
 ――画面にはなんと『福留さん』の文字が。

 それを目の当たりにした瞬間、勇の顔に緊張が走る。

 福留は基本、学業中には電話を掛けて来ない。
 掛けて来る事があるとすれば、問題が発生した時だけだ。

 ならこの電話はもしかしたら。

「なんだ、福留さんから?」

「うん。ちょっと待っててくれ」

 嫌な予感が過ってならない。
 まさか早くも不運な出来事が巡って来たのかと。
 神社で祈ってまだ二週間も経っていないのに。

 故に、恐る恐る通話ボタンを押して電話を取る。
 すると案の定、落ち着きながらも緊張を悟らせるあの声が聴こえて来て。

『勇君、申し訳ありませんが緊急依頼です。授業の途中でしょうが、早退して校門まで来てください』

「えっ、わ、わかりました!」

 しかもたったそれだけを伝えて切れてしまった。
 つまり、よほど切羽詰まった状況だという事だ。

 そう察し、伸びた手が弁当袋では無く鞄そのものを取る。
 魔剣を仕舞った長鞄と共に。
 決意の眼を心輝へと向けたまま。

「もしかして、い、行くのかよ?」

「ああ。悪い、先生には適当に言い訳しておいてくれ。腹が痛くて帰ったって」

「お、おう……!」

 そしてこう言い残し、勇が走り去っていく。
 心輝や瀬玲が心配を向ける中で。
 あずーと擦れ違おうがお構いなしに。

 一方で残された心輝達はと言えば。

「シン、勇はどうしたの?」

「福留さんに呼ばれたっぽいぜ。って事は多分、だろ」

「将来の事もあるのに、勇はどうするんだろ。このままコレ続けるのかな……」

 やはり二人も勇同様に将来を悩んでいたらしい。
 それも、勇へのこれからの心配も重ねて。

 戦いか、平穏か。

 重い責任を背負う勇とちゃな、そんな友達へ懸ける想いは複雑だ。
 今の自分達では助ける事も叶わないから。

 何とかして助けにならないかと、常々思い悩む程に。





 勇が急いで階下へ駆け下りる。
 すると視線の先に見慣れた少女の走る姿もが。

 ちゃなだ。
 どうやら一足先に呼ばれていたらしい。
 そんな彼女も勇に気付き、無言で頷いて応えていて。

 勇もまた頷きで返し、共に下駄箱へと駆け込んでいく。

 そしてそのまま校門へと向けて並走。
 すると走る先には当然、福留の姿が。

「福留さん、一体何があったんですか!?」

「まずは二人とも車の中へ」

 しかしやはり悠長に話をしている暇は無い様だ。
 福留はすぐさま運転席へと乗り込んでいて。
 勇達も自分達で後部座席へと乗り込み、すぐさま発進を促す。

 こうなればもう後は早かった。
 扉が閉められたと同時に発進し始め、鋭いハンドル捌きで公道へ。
 とても老人とは思えないドライブテクニックで、あっという間に自宅だ。

 それから戦闘服とちゃなの魔剣を回収し、即座に再発進。
 すぐさま本部への道程へと突入する。

「いきなりで大変申し訳ありませんが、お二人にはこれからアメリカに飛んで貰いたい」
「えっ……ア、アメリカァ!?」

 それでいていきなりこんな話が飛び出したのだから、二人とも驚きを隠せない。
 運転が荒々しいのもあるが、相応に切羽詰まっている風でもあったから。

 あの福留が今までに無い焦燥感を見せている。
 それだけで相応のリスクを感じてならなかったのだ。

「まだ海外遠征は―――」
「今回はその件ではありません。私からのかなりの危険度と緊急性を伴った依頼です」
「――かなりの、危険度と緊急性……!?」

 そう、これはかつてない程の緊急な話なのだ。
 それこそ、勇達の将来の話を後送りに出来るくらいの。

「まずは本部で概要を説明し、そのまま飛んでもらいます。フライト後は即戦闘の可能性もあり得ますので、飛行機内での食事と睡眠をとってもらう事になるでしょう」

「レンネィさんは?」

「あいにく彼女は今、国外に居ます。恐らく、今呼んでも間に合うかどうか」

 しかもまた運の悪い事にレンネィが捉まらない。
 だからこそ二人が選ばれたのだろう。

 いや、もしかしたらレンネィが居ても呼ばれたかもしれない。

 そう思わざるを得なかったのだ。
 この時勇の感じた不安は、今までに無いほど大きかったから。

 胸騒ぎがどんどん大きくなって。
 嫌な予感が膨らんでいって。

 まるで、心を押し潰してしまわんばかりに。





 そんな不安が心を蹂躙する中、勇達がとうとう本部へ辿り着く。

 果たして、その不安の正体とは。
 福留の焦燥感の原因とは一体……?


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