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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~とはいえ難関は幾重にも~
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まさかの魔剣製造方法が判明した。
これで上手く行けば勇も魔剣使いを辞めずに済みそうだったのだけど。
けれど世の中そう簡単にはいかないもので。
途端に難色を示したバノへ、カプロがギリリと憤りを見せつける。
どうして尻込みしているのかがわからなくて。
せっかくここまでの事実が判明したのに。
「どうしてッスか師匠!! 師匠の腕前ならトンテンカンで終わりそうな話じゃねぇッスか!!」
どうやら見る限り、造るのはそれほど難しい話ではないらしい。
少なくとも今の工作技術と施設があれば。
それでもバノは首を横に振るばかりで。
遂には頭を片手で抱え、深い溜息を付く。
「そのワシがもう出来んのじゃよ。 【大地の楔】をやった時にわかっちまったぁ。この腕が鍛冶細工をするにゃあ向かんくれぇに衰えちまってたって事がぁのォ」
すると空いた片手を勇達の前に差し出していて。
そんな手を眺めてみると、微細な事実に気が付く。
手が、震えているのだ。
その大きく太い肉付きに似付かわしくなく。
「ただ力入れるくらいなら問題ねぇがぁ、細かい作業はもう無理じゃ。それでも今まで何とかやってこれたけどよぅ、魔剣くらいに繊細となるとそうはいかねぇ。ワシゃもう細工槌を持つべきじゃねぇんや」
「師匠……」
「本来はもう引退してていいんじゃが、今までここに来た奴ァどいつもこいつも直ぐ弟子を辞めちまってのぉ。お陰で一番弟子っつうとこの小僧で落ち着いちまってよぅ」
バノもいい歳だ。
それもジヨヨ村長と同い年だというのだから。
だから今まで随分と無理してきたに違いない。
それでも跡取りが今まで居なくて、金物細工は自分でやらざるを得なかった。
カプロという弟子が出来たからまだ何とかなっていたが。
「じゃが、こいつぁ何があっても懲りやしねぇ。お陰でなし崩し的にワシの技術を一番受け継いだ奴になっちまったぁ」
でもそんな手がふと持ち上がり、カプロの頭をポンポンと叩く。
更には優しく毛を撫で上げていて。
「ま、それでも今のこいつなら出来るやろ。教える事はまだあるがぁ、実践してもいい頃合いじゃけぇ」
「え、じゃあそれって……」
そう、カプロはもうバノの技術をしっかりと見てきている。
その上で実践する事だって出来るし、再現する事だって出来るだろう。
バノの間違いにだって気付けるくらいには。
そんなカプロだからこそ、バノは認める事が出来るのだ。
「じゃからおめぇがやるんやカプロォ。 おめぇが勇殿の魔剣を造って〝この時代に我有り〟とその日誌の続きを書くんじゃ」
カプロに全てを託す事を。
自分の代わりに偉業を成す事を。
そして勇の力になる事を。
「師匠……わかったッス、わかりましたッス! ボクがやってみせるッスよ。絶対、造り上げて見せるッス。誰にも誇れる立派な魔剣を!!」
「それでええ。おめぇにこの工房を預けたるけぇな。何でも使ったれや。そんで勇殿に自慢の魔剣を与えてやりぃ」
「ハイッス!!」
師匠に認められるだけの腕前はあるから。
その腕前を支えられる工房があるから。
加えて気迫も気力も充分なら、きっと出来るだろう。
バノはそう願ってカプロに託す。
不肖で決して自慢は出来ないけれど、頼っても良いと思える弟子に。
きっとこんな日を待ち望んでいたのだろう。
いつかこの工房を離れる日を。
それが今、ようやく叶ったのだ。
そのお陰で今、バノはニッカリとした大きな笑みを浮かべられていた。
ようやく重荷が降ろされた事での安堵によって。
それはただただ、晴れやかに。
「んで師匠、日誌の中身ちょっと一緒に読み合わせてくれねッスかね?」
「おめぇ、今自分でやるて言うたやろがい……」
けれど間も無くその肩に、重荷が再びドシリと飛び込む事に。
どうやら不肖の弟子は未だおんぶと抱っこを所望らしい。
にしても話を台無しにするのは相変わらず得意なままで。
そんなカプロの頭を掴んだ手がミシリと音を立てていたのは言うまでもない。
その後、バノは全てを託して一旦は昼食を作りに。
更にはちゃなが合流したので事情の説明を。
新しい魔剣が造れるかもしれないという話には彼女も興味津々な様だ。
ただ、もちろんそう簡単に行く訳ではないが。
「それで、どんな魔剣を造るつもりなんですか?」
「そこが問題ッス。肝心の形がまだ全く見えてこないんスよねぇ……」
確かに製造方法は記されてはいるだろう。
だけどどうしたら強い魔剣が造れるのか、までは書かれていなくて。
せいぜい性能を上げるコツが書かれているくらいで具体的とは言えない。
つまり自分で魔剣を造りまくって学ぶしかないのだ。
あるいは物理的に強くするアイディアを盛り込むかなどで。
例えば西洋剣と日本刀の違いと同様に。
その武器は同じ用途でも、全く別の進化を果たした。
鋼の重さで潰し斬る西洋剣と、鋼そのものの切れ味に特化した日本刀。
その他、戦術や美観といった様々な要素を取り入れて技術が進んだのだ。
そういった形状に関しては特に拘りが無いのだとか。
だからその技術を取り入れれば今までに無い魔剣が出来るかもしれない。
なので造る上ではそういった専門知識も必要となってくるだろう。
「じゃあ日本人らしく日本刀とか」
「え、俺日本刀使った事無いんだけど……ていうか片刃は今更きついかな」
それに、勇が奮うのなら身の丈に合った物を造らなければならない。
当人がもっとも扱い易いと思える得物でなければ戦い難いだけだから。
一例としてまず【大地の楔】を挙げるとしよう。
これは一般で言う所のショート~ミドルソード級である。
でもあの魔剣は実の所、勇にはちょっと小柄に感じさせていて。
それというのも、刀身が愛用していた竹刀よりも少し短かかったから。
となると【エブレ】級は論外だ。
あれは短剣級で、とても剣とは言えないサイズだから。
「じゃあ、どんな魔剣が造りたいッスかね?」
「うーん、具体的には竹刀くらいの剣がいいって感じかなぁ。片手でも両手でも使えそうな奴がべストだな」
なら愛用の竹刀サイズではどうだろうか。
恐らくこれがサイズ感的にはベスト。
一般的なロングソード級と言った所だ。
あとは重量・強度問題さえクリアすれば申し分無いだろう。
という訳でスマートフォンの画像を見せて感じを伝えたのだけれども。
その感想はと言えばこんな感じ。
「こんな感じの武器だよ」
「これすっごくカッコ悪くないッスか? それに凄く弱そうッス」
「そりゃこれ只打つだけの物だもん。スポーツ用だし。後で実物持ってくるわ」
用途も知らないとこんな答えが返ってくるのは至極当然な訳で。
ただ、これそのものを指標とされる訳にはいかない。
長さと軽さだけはどうにか目指して欲しい所だろうけど。
「じゃあ勇さんが欲しいのはロングソード級、と。使用感は使い始めてから調整するって感じでいいッスよね」
「うん。にしても、なんか自分の為ってなると形も弄れるからなんかいいよな」
「そうですね。私も魔剣にハンドルと足場が欲しいなぁ」
「え、なに、魔剣を乗り回しちゃうつもりなの?」
こんな感じで基礎的な形は簡単に出来上がるけども。
詳細詰めはまだまだこれからだ。
きっと【大地の楔】の様な特殊能力の付与はまだ厳しいだろう。
そもそも造った事が無いから形がきちんと仕上がるかどうかも怪しい。
その中で答えを詰めて行かなければならないのだ。
つまり、こればかりは造るカプロのセンスがモノを言う事になる。
「でもまーったく形が思い付かねッスね」
「なんだったら【大地の楔】のコピーとかでもいいよ」
「それじゃ製造士としてのメンツが立たねッス。なんとしてもオリジナルで行きたいッスねぇ」
「変な拘りだなぁ」
だがしかし、そのカプロもまだまだ駆け出しでセンスは磨いている最中。
デザインなんかに拘っている場合じゃないのだけれども。
なのでどうやら完成は当分先になりそう。
ともあれ仕様が決まらなければ先には進めないので。
そんな訳でまたしても三人で考え込む事に。
いきなり立ち塞がった第一の関門はそれなりに難関だった様だ。
これで上手く行けば勇も魔剣使いを辞めずに済みそうだったのだけど。
けれど世の中そう簡単にはいかないもので。
途端に難色を示したバノへ、カプロがギリリと憤りを見せつける。
どうして尻込みしているのかがわからなくて。
せっかくここまでの事実が判明したのに。
「どうしてッスか師匠!! 師匠の腕前ならトンテンカンで終わりそうな話じゃねぇッスか!!」
どうやら見る限り、造るのはそれほど難しい話ではないらしい。
少なくとも今の工作技術と施設があれば。
それでもバノは首を横に振るばかりで。
遂には頭を片手で抱え、深い溜息を付く。
「そのワシがもう出来んのじゃよ。 【大地の楔】をやった時にわかっちまったぁ。この腕が鍛冶細工をするにゃあ向かんくれぇに衰えちまってたって事がぁのォ」
すると空いた片手を勇達の前に差し出していて。
そんな手を眺めてみると、微細な事実に気が付く。
手が、震えているのだ。
その大きく太い肉付きに似付かわしくなく。
「ただ力入れるくらいなら問題ねぇがぁ、細かい作業はもう無理じゃ。それでも今まで何とかやってこれたけどよぅ、魔剣くらいに繊細となるとそうはいかねぇ。ワシゃもう細工槌を持つべきじゃねぇんや」
「師匠……」
「本来はもう引退してていいんじゃが、今までここに来た奴ァどいつもこいつも直ぐ弟子を辞めちまってのぉ。お陰で一番弟子っつうとこの小僧で落ち着いちまってよぅ」
バノもいい歳だ。
それもジヨヨ村長と同い年だというのだから。
だから今まで随分と無理してきたに違いない。
それでも跡取りが今まで居なくて、金物細工は自分でやらざるを得なかった。
カプロという弟子が出来たからまだ何とかなっていたが。
「じゃが、こいつぁ何があっても懲りやしねぇ。お陰でなし崩し的にワシの技術を一番受け継いだ奴になっちまったぁ」
でもそんな手がふと持ち上がり、カプロの頭をポンポンと叩く。
更には優しく毛を撫で上げていて。
「ま、それでも今のこいつなら出来るやろ。教える事はまだあるがぁ、実践してもいい頃合いじゃけぇ」
「え、じゃあそれって……」
そう、カプロはもうバノの技術をしっかりと見てきている。
その上で実践する事だって出来るし、再現する事だって出来るだろう。
バノの間違いにだって気付けるくらいには。
そんなカプロだからこそ、バノは認める事が出来るのだ。
「じゃからおめぇがやるんやカプロォ。 おめぇが勇殿の魔剣を造って〝この時代に我有り〟とその日誌の続きを書くんじゃ」
カプロに全てを託す事を。
自分の代わりに偉業を成す事を。
そして勇の力になる事を。
「師匠……わかったッス、わかりましたッス! ボクがやってみせるッスよ。絶対、造り上げて見せるッス。誰にも誇れる立派な魔剣を!!」
「それでええ。おめぇにこの工房を預けたるけぇな。何でも使ったれや。そんで勇殿に自慢の魔剣を与えてやりぃ」
「ハイッス!!」
師匠に認められるだけの腕前はあるから。
その腕前を支えられる工房があるから。
加えて気迫も気力も充分なら、きっと出来るだろう。
バノはそう願ってカプロに託す。
不肖で決して自慢は出来ないけれど、頼っても良いと思える弟子に。
きっとこんな日を待ち望んでいたのだろう。
いつかこの工房を離れる日を。
それが今、ようやく叶ったのだ。
そのお陰で今、バノはニッカリとした大きな笑みを浮かべられていた。
ようやく重荷が降ろされた事での安堵によって。
それはただただ、晴れやかに。
「んで師匠、日誌の中身ちょっと一緒に読み合わせてくれねッスかね?」
「おめぇ、今自分でやるて言うたやろがい……」
けれど間も無くその肩に、重荷が再びドシリと飛び込む事に。
どうやら不肖の弟子は未だおんぶと抱っこを所望らしい。
にしても話を台無しにするのは相変わらず得意なままで。
そんなカプロの頭を掴んだ手がミシリと音を立てていたのは言うまでもない。
その後、バノは全てを託して一旦は昼食を作りに。
更にはちゃなが合流したので事情の説明を。
新しい魔剣が造れるかもしれないという話には彼女も興味津々な様だ。
ただ、もちろんそう簡単に行く訳ではないが。
「それで、どんな魔剣を造るつもりなんですか?」
「そこが問題ッス。肝心の形がまだ全く見えてこないんスよねぇ……」
確かに製造方法は記されてはいるだろう。
だけどどうしたら強い魔剣が造れるのか、までは書かれていなくて。
せいぜい性能を上げるコツが書かれているくらいで具体的とは言えない。
つまり自分で魔剣を造りまくって学ぶしかないのだ。
あるいは物理的に強くするアイディアを盛り込むかなどで。
例えば西洋剣と日本刀の違いと同様に。
その武器は同じ用途でも、全く別の進化を果たした。
鋼の重さで潰し斬る西洋剣と、鋼そのものの切れ味に特化した日本刀。
その他、戦術や美観といった様々な要素を取り入れて技術が進んだのだ。
そういった形状に関しては特に拘りが無いのだとか。
だからその技術を取り入れれば今までに無い魔剣が出来るかもしれない。
なので造る上ではそういった専門知識も必要となってくるだろう。
「じゃあ日本人らしく日本刀とか」
「え、俺日本刀使った事無いんだけど……ていうか片刃は今更きついかな」
それに、勇が奮うのなら身の丈に合った物を造らなければならない。
当人がもっとも扱い易いと思える得物でなければ戦い難いだけだから。
一例としてまず【大地の楔】を挙げるとしよう。
これは一般で言う所のショート~ミドルソード級である。
でもあの魔剣は実の所、勇にはちょっと小柄に感じさせていて。
それというのも、刀身が愛用していた竹刀よりも少し短かかったから。
となると【エブレ】級は論外だ。
あれは短剣級で、とても剣とは言えないサイズだから。
「じゃあ、どんな魔剣が造りたいッスかね?」
「うーん、具体的には竹刀くらいの剣がいいって感じかなぁ。片手でも両手でも使えそうな奴がべストだな」
なら愛用の竹刀サイズではどうだろうか。
恐らくこれがサイズ感的にはベスト。
一般的なロングソード級と言った所だ。
あとは重量・強度問題さえクリアすれば申し分無いだろう。
という訳でスマートフォンの画像を見せて感じを伝えたのだけれども。
その感想はと言えばこんな感じ。
「こんな感じの武器だよ」
「これすっごくカッコ悪くないッスか? それに凄く弱そうッス」
「そりゃこれ只打つだけの物だもん。スポーツ用だし。後で実物持ってくるわ」
用途も知らないとこんな答えが返ってくるのは至極当然な訳で。
ただ、これそのものを指標とされる訳にはいかない。
長さと軽さだけはどうにか目指して欲しい所だろうけど。
「じゃあ勇さんが欲しいのはロングソード級、と。使用感は使い始めてから調整するって感じでいいッスよね」
「うん。にしても、なんか自分の為ってなると形も弄れるからなんかいいよな」
「そうですね。私も魔剣にハンドルと足場が欲しいなぁ」
「え、なに、魔剣を乗り回しちゃうつもりなの?」
こんな感じで基礎的な形は簡単に出来上がるけども。
詳細詰めはまだまだこれからだ。
きっと【大地の楔】の様な特殊能力の付与はまだ厳しいだろう。
そもそも造った事が無いから形がきちんと仕上がるかどうかも怪しい。
その中で答えを詰めて行かなければならないのだ。
つまり、こればかりは造るカプロのセンスがモノを言う事になる。
「でもまーったく形が思い付かねッスね」
「なんだったら【大地の楔】のコピーとかでもいいよ」
「それじゃ製造士としてのメンツが立たねッス。なんとしてもオリジナルで行きたいッスねぇ」
「変な拘りだなぁ」
だがしかし、そのカプロもまだまだ駆け出しでセンスは磨いている最中。
デザインなんかに拘っている場合じゃないのだけれども。
なのでどうやら完成は当分先になりそう。
ともあれ仕様が決まらなければ先には進めないので。
そんな訳でまたしても三人で考え込む事に。
いきなり立ち塞がった第一の関門はそれなりに難関だった様だ。
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